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The Voice  作者: 幸-sachi-
The Voice vol.1.5 ~episode H.I.N.A~
30/59

Episode 7 -過去 2013冬-


2013年12月19日(金)


「なんやて!もういっぺん言ってみぃ!」

相沢ひなが大声で叫んだ。その表情は普段のモデルのような美しさをなくし眉間にはシワを寄せ目を見開いている。

「だ、だから、俺来年の春に神奈川県に引っ越す事が決まってしまって…まだギタリストとベーシストが見つかってないのに…本当にすみません。俺、バンドに加われません…」

「なんやて!もういっぺん言ってみぃ!」

遥がひなと拓也のやり取りを呆れたといった表情を浮かべて見つめていた。

「もう!何回そのやりとりしてるんスかぁ!さっきからその会話ばっかで全然前に話進んでへんやんかぁ。」

「神奈川やったらウチが大学受験する予定やのに山猿のクセにウチより先に神奈川に行くって言うてんのかっ!この乙女声わぁ!」

遥が小さな声でひなに告げた。

「ひな先輩…先に神奈川行くっていうのはどうでもいい事でしょ?」

「ああ…そっか。お前。何髪赤くしとんねんっ!山猿のクセに乙女声が色気付きやがって!」

「そこもどうでもいいでしょう…」

「そ、そうか…とにかく引っ越すなんて絶対許さへんからな!」

「そう言われても…引っ越す事もう決まってしまったし…」

「あぁーんっ!?舐めやがって!もういっぺん言ってみぃ!」

「だからぁ。そう言われても…引っ越す事もう決まってしまったし…」

「白紙に戻して来い!」

「そんなメチャクチャな…」

「それができひんねやったら絶交や!」

「ぜ、絶交って…」

「ひな先輩…そんな事言ったら拓也が可哀想ですよぉ。もうここは腹を決めて拓也をちゃんと送り出してあげましょ!あっ!そうやっ!ええ事考えたっ!来年拓也の送別会ライブやりましょ!」

「そんなんやらん。だって拓也は一人で親と離れて大阪で暮らすもんなぁ?」

「い、いやぁ…神奈川行きます…」

「ここで暮らすやろがいっ!」



ひなは一方的に拓也を罵倒し、先に学校を出て帰宅していると、「ひなせんぱぁ〜いっ!」とひなを追って来た遥の声が聞こえた。ひなはその呼び声を聞いてすぐに振り返った。秋に遥がひなを追って来た時のように拓也も一緒に追いかけて来たと思ったからだ。しかし、今回は遥一人だけだった。

「山猿のクセに乙女声は?」

「拓也は悲しそうに帰りましたよ。もしかして前みたいに拓也も一緒に追いかけて来たと思いました?」

「んな事あるかいっ!」

「またまたぁ〜。ちょっと期待してたくせにぃ〜。」

「ありえへん!シバく!」

「てか、ひな先輩って拓也の事好きやったんですねぇ。」

「は、はあ?」

「だって、あんなに転校する事を嫌がるなんて普通じゃないですもん。」

「好きとかの問題ちゃう。」

「またまたぁ〜。じゃあ、なんであんなに拓也とバンド出来ひんのが嫌なんすぅ?」

「ウチは…」

「ウチは?」

「ウチは拓也の声に惚れたんや。」

「やっぱし!拓也の事好きなんじゃないですかぁ〜。」

「拓也に惚れたんとちゃう!ウチは拓也の歌声に惚れたんや!」

「一緒じゃないですかぁ〜。」

「一緒ちゃうわ。」

「照れちゃってぇ〜。拓也の歌声を好きになって拓也自身を好きになっちゃったんでしょ?」

「ちゃうわ!」

「拓也の歌声に惚れただけで恋じゃないなら、なんであんなに怒るんですぅ?」

「ウチは…」

「ウチは?」

「ウチはプロになりたいねん。」

「……は?」

「プロや。」

遥は首を傾けて「プロ?」と確認した。

「そうや。プロのミュージシャンや。」

「えぇ〜〜!初耳っ!いつからそんな野望持ってたんですか?」

「文化祭の時。拓也の歌声を初めて聴いた時や。あいつの歌声を聴いてあいつのようにウチも人に感動を与えるようになりたいって心から思った。」

「それでプロのミュージシャンを目指そうと?」

「そうや。あいつと一緒ならプロになれるって思った。プロになってたっくさんの人に歌を届けて勇気だったり希望だったりを届けたい。それから…時には歌で悩みを解決したり寄り添ったりしたい。そんなミュージシャンになって歌っていきたいと思った。そう思わせてくれたんが拓也やった。だから、転校するって聞いてショックで…」

「それは…もう………」

遥はその後に続く言葉をなかなか言わなかった。

「それはもう。なんやねん?」

「それは…もう………恋ですね。」

「うっさい!ちゃうわ!」

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