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The Voice  作者: 幸-sachi-
The Voice vol.1.5 ~episode H.I.N.A~
29/59

Episode 6 -現在 2015秋-


2015年10月24日(土)


(拓也の歌声を聴いて、あの時ウチは密かに、こっそりとプロになる事を決めた。拓也と一緒ならプロになれる気がした。けど…あの後バンドを結成する前に拓也が引っ越しする事決まってんなぁ…)

LOVELESSはこの夏から秋に掛けてレコード会社と契約を交わし着々とメジャーデビューの道を歩んでいた。黒崎は12月24日にシングルを発売する為に音楽事務所とレコード会社にはクリスマス・イヴにシングルを発売する事が4人のたっての願いでそれをどうしても叶えてあげたいと頼み込み無事その日に発売日は決まった。

CD発売2ヶ月前と迫って来たこの日。ミュージックビデオ撮影の為に栗山ひな達LOVELESSの4人は都内のスタジオにいた。もちろんシングル曲のレコーディングやジャケ写撮影はもう既に終っている。

撮影スタジオでひな達が出番を待っていると春に会って以来会う事がなかったオアシス代表取締役緒方玉三郎(おがたたまさぶろう)が撮影現場に現れた。

「随分と他事務所で暴れたそうだね。」

その言葉に黒崎が一番に反応して直立不動で答えた。

「い、いえ。その。決して暴れたわけではないんですよ。ほんのちょっと、やんわりと生意気を言ってしまっただけで。」

「結構。結構。黒崎君。謝る必要はない。小さな事務所のデビュー前の子達が生意気を言ったところで大手事務所の日本を代表する国民的バンドが相手をするわけないからね。」

「は、はあ…」

「しかし、例え小さな事務所だとしても大口を叩いた以上はそれなりに結果を出してもらわないと困る。」

「そ、それは…も、もちろん…」

「だろうね。自信がなかったら他事務所に乗り込んで大口叩けるはずがないだろうからね。」

(わっかりにくいけど…この人…めっちゃ怒っとるんとちゃうか…)

「あの、決して私達は他事務所に乗り込んだわけでは…」

黒崎の言葉を無視して緒方は言った。

「曲はいい曲だったよ。歌声も素晴らしかった。」

「え?あ、ありがとうございます。」

「だけど、売れるか売れないかは誰にもわからない。」

「ま、まあ。そうですね…でも、売れる気は…しています。」

「クリスマス・イヴにシングル曲をリリースするのが4人のたっての願いだと私は聞いていたのだが、どうやらそれは表向きな話だったようだね。本当はあのエルヴァンと同じ日にリリースしたかったとは…」

「バレちゃってましたか…でもそれを伝えるとその日に発売は出来なくなると思いまして…」

「当然だ。デビュー以来15年間もオリコン1位を獲り続けるモンスターバンドと同じ日に発売するなんてバカげている。君達は本気であのエルヴァンに勝つ気でいるのかい?」

緒方は急に黒崎ではなくひなの顔を見てひなに質問をしてきた。

「勝つ気でいます。」

ひながそう答えると緒方はそこで初めてにこりと笑みを見せた。

「そうか。それなら宜しい。勝った負けたの世界ではないかもしれないが私は大手事務所に勝てるアーティストがうちから出て来てくれる事をずっと望んでいた。だけど、大口を叩いた以上ダメだったでは済まないよ。」

「……」

ひなも黒崎も何も言えなかった。

「こんな小さな事務所でもプライドはある。そのプライドを君達が汚して傷つけた時は覚悟してもらわないといけない。こんな事言わなくてもわかっていたかな?」

「わかっています。その時は私が責任を取ります。」

「黒崎君。君一人じゃ責任は取れないでしょう?」

「…それはどういう?」

「黒崎君にもLOVELESSの4人にも責任を取ってもらう。」

「そんな!この子達は…」

緒方は黒崎の言葉を手で制した。

「関係ないとは言わせませんよ。大丈夫。結果を出せば責任なんて取らなくて大丈夫なんだから。頑張ってくれたまえ。」

そう言うと緒方は撮影風景を見る事もなくスタジオから出て行った。

「ごめん。沙耶さん。ウチらのせいで…」

「だ、大丈夫よ…い、いざとなったら土下座でもしてあなた達を救ってみせるから…」

「でも…今さらやけどウチ…エラい事してもうた…」

「ひな。謝るのはまだ早いわよ。どんな手を使ってでも曲を宣伝し…あ、それはダメか…うん。ダメダメ。どんな手でも使うってのはよろしくないわ。そうね。いろんな手を使って曲を宣伝してやる!とりあえず動画サイトにチャンネル開設するよ。いいあなた達。死ぬ気でやるわよ!死ぬ気でやるってのも本当に死なれたらマズいわね…そうね。うん。マズいマズい。死なない程度のギリギリのラインでやるわよ、の方がいいか。いや、でもそれじゃあ本気出すの出さないのどっちなのって感じだし…やっぱり死ぬ気でやるしかないと伝えるべきか…でもなぁ…本当に死なれたらやっぱりマズいし……」

ひな達4人は一人で納得しながら話している黒崎の姿を黙って見つめながら4人が4人とも口に出さずに同じ事を思っていた。


(このプロデューサー…ホントに大丈夫か…?)

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