ある1つの事件の終わり
のびろー!
あ、はい一部がこれで終わりになります。
感想とかなんとか宜しかったらお願いします
後のことはほとんど蛇足だけど一応ね。
僕たちは罠に誘い込んだと勘違いしたデブの軍人(ギャレン曰くそれなりの地位だったという)を殺して、そいつが自慢げに持ち出してきた最新型の無人のグガランナを3機ほど鹵獲に成功した。革命軍? テロリスト? としては中々いい出だしを決めることができた。
そして発表された<方舟の担い手>の声明。これにより今まで虐げられていた一部のニホン人の心は掴めたと思う。
僕、"革命の翼"という存在がこの組織にいるということもギャレンによって明らかにされた。
ここ数日で起きた一連の出来事は巷では"宝石の夜"と呼ばれているらしい。又聞き程度だけどね。
こうしてジュラキラス皇国きっての大騒動の目となった<方舟の担い手>だがこれからもやることは決まっている。
『2時の方向から2体!』
通信越しに情報管制官の声が飛んでくる。機体を僅かにそちら側にずらして機体の左手で銃を構えた。
メインモニターに写った機体にターゲットサークルが重なる。僅かなブレは機体側が補正してくれるらしい。
「ッ」
手に持つ銃で撃つと見せかけて肩に付随した大型ランチャーを左側の敵に撃ち込む。それから今度こそ銃で敵グガランナの頭を撃ち抜いた。
「終わったよ」
『次、7時の方向に進行。そこでγ4と挟み撃ち』
「了解」
脚部のタイヤ、スラスターを組み合わせてそちらの方向に向かうとーーあぁこっち側を向いてなくてγ4の方を向いてるね。敵は3機。これを狙い撃てばいいのかな。
こちらに気付いた1人の頭に銃弾を叩き込む。それからもう1人にメガランチャー。挟まれて右往左往した最後をγ4が腕部に収納された刃で突き刺した。
『付近の敵はこれで最後。全滅の必要は無いって』
「じゃあ終わり? あーつっかれたー」
「γ4は気を抜きすぎ。基地に帰るまでが殺しい合いだよ」
「ぐっ別にいいじゃない。そんな家に帰るまでが遠足だーみたいなこと」
僕らは相も変わらずあの日から戦い続けてる。それが僕らにできる反抗だから。デモ行進やヘイトスピーチよりも鮮烈で、人々の記憶に残る反逆を。
どうどうと基地から宥める声を聴きながらふと振り返った。
ーーいるんだよ、1人正体不明がさ。
基本的にグガランナの乗り手は正面以外の光景をレーダーに頼りがちだ。だから気付かないんだろう。
なんたってそいつはレーダーに映ってなんかない亡霊なんだから。
誰もそいつに気付かない。でも確かに幽霊は実在する。
黒い第2世代グガランナ。顔に赤いバイザーがあしらわれてるからカスタム機ではあるんだろうが。
ーーどうする? アンタはさ。
そっちがやるならこっちはやるけど。
辺りに騒ぎ立てられないように少しだけ銃を構えて挑発してみるとその黒い機体は|くるり(、、、)と回れ右をしその場を後にしようとした。
チラつく違和感。今のは一体……?
『帰投命令出てるけど』
情報管制官の声に「うん」と答えてそこを立ち去る。
ーーいいさ、誰が来ようが関係ない。
近づく奴はみんな灰にしてやる。
それが僕にできる唯一のこと。僕が他の人より優れている唯一の点。
だってさーー
「僕は貴方をオウサマにするんだ」
貴方は僕にそれを望んだんだから。僕はそれを叶えるよ。聞き届けた約束は、破ったことがない。そして、これからもそう。待ってて、すぐに叶えてあげるから。僕に光をくれた貴方、その貴女の願いなら僕はーー
× × ×
とある基地のとある格納庫。
一機のグガランナから降りた人間に白衣の男が声を掛けた。
「どうだった? 新型の調子はさ」
「……変な気分だ。これがお前が考えたシステムという訳か」
「まぁね、まだまだ荒削りだけどこれのおかげで君は今本国にいるラウンズにも匹敵するんじゃないか?」
「それは言い過ぎだ。こんなのは……まるっきりオレの実力とは言えん」
奇っ怪な出で立ちの男だった。グガランナのパイロットが着用するスーツ、とも違う。どこかのSFにでも出てきそうな程場違いな近未来的なもの。そしてスーツと同じデザインのフルフェイスのヘルメット。その頭部を撫でながら男は言葉を紡いだ。
「奴と、出会った」
「!! ほう、やはり本物かい?」
「レーダーに映らないのに、死角にいたのに、それでもアイツはオレに気付いた」
その時立った鳥肌は凄まじいものだった。まさに、体に電撃が走る、だ。
「だが今の君なら勝てるだろう?」
「わからんさ。何せアイツはホンモノ、ホンモノのバケモノだ」
「そうかい……やっぱり所詮はただの簡易版か。なまじ機体を動かせる分君は元来の操縦方法に縛られがち、というわけか」
そこで初めて仮面の男に感情が浮かぶ。息を呑み、僅かに呼吸を乱す。
「、それは……どういうーー」
「バケモノ退治にはやはりホンモノが必要ということさ」
ところで、と白衣の男は椅子に座りながら仮面の男に訊ねた。
「ニュースは見たかい?」
「何のだ。ここ最近は色々なことが起こりすぎててわからん。いや……! 待て、まさかお前ーー!」
最悪の可能性が繋がったのか男が僅かに語気を荒らげた。そんなことはお構い無しと白衣はいつも通りの調子を保ち続ける。
「さて、そろそろ来るんじゃないか?」
扉が開き、1人の少女が2人の空間に割って入った。
オシャレ、という概念を一切切り捨てた適当に切りそろえられただけの金髪。小柄で細い体躯は軍人、と言うには些か無理がある。そして|皇族特有の(、、、、、)澄んだ青空みたいな瞳。
あぁ、そこにいたのはーー
「彼が例の新人さんさ。腕前は一流だよ」
「そうですか」
少女が発する言葉に感情の色はない。ただ淡々とありのままを受け止め、思ったことを口にするだけ。少女が男に示したのは興味でも不気味さでもなくただの無関心であった。そう、全ての感情はあの炎に薪のようにくべられたと言わんばかりに。
そして白衣の言葉など仮面の耳には届かない。視線は全て彼女の一挙手一投足に釘付けだ。
少女が仮面の男に敬礼をする。それから小鳥のように澄んだ声で己の名を告げた。
「初めまして。カリス=ローズネル少尉です。……貴方の名前をお聞きしても宜しいでしょうか」
× × ×
とある革命軍のアジトにて。
「ギャレン、何を見ているのですか?」
椅子に座り込み携帯端末を覗き込む若き反乱者にそのブレーンであるシロウゾノが問いかける。
「なんてことはない。ただのニュースだ」
「……当事者である私たちが知ってること以上のものはないと判断しますが?」
「そりゃそうだろ。ただ、マスメディアが報道するに当たってそこにはある意思が捩じ込まれる。報道規制なり情報統制がその例だ」
ぐるり、と回転イスをひと廻し、ギャレンは手持ちの携帯端末をヒラヒラと振ってみせた。
「それにある程度のことは国民にも知らせなきゃいけない。国民は"知る権利"とやらを行使して物事を知ろうとする。そしてそれを受けて皇国側もある程度のシナリオを用意しなきゃいけない。つまり、だ。俺たち以外の観点をアイツらは教えてくれるぞ? 例えば、"宝石の夜"の顛末だとかな」
"宝石の夜"
革命軍<方舟の担い手>が起した皇居別邸襲撃事件の通称。夜の中炎によって照らされた割れた無数のガラスの破片を宝石に見立てそう呼ばれるようになったらしい。
「国側は俺たちを排除するべき敵、と見なしたようだ。もう降りられないな、この方舟からは」
「全員承知のことでしょう。敵になって、誰からも疎まれて、それでも変えたいという人間がここには集まってる。前にギャレンも確認したでしょう」
「冗談だよ。話を戻すか。あの事件、俺たちの終着点はあの場からの逃亡だ、でも大多数の人間は違う。望むにしろ望まないにしろ結果がついてくる」
と、言いますと? とシロウゾノが訊ねると「ホントにニュース見てないんだな」とギャレンが呆れた。
「俺が頭を痛める案件のひとつになったな。それがアイツにどう関係するか、はアイツ次第な所ではあるが」
にやり、と笑ってギャレンは自らの側近に端的に真実を告げた。
「"宝石の夜"の死者のなかに皇女が含まれてる。俺達は中々にとんでもないワイルドカードを引き当てたかもしれないな」
尻切れとんぼになったような…
また、少しずつストックがたまったら更新します。
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オナシャス