第42話 驚き
〈前回のあらすじ〉
深夜に魔物との戦闘を終え、家に帰ると玄関にはリサが。
その後、すぐに夕日たちは眠りに入り、朝を迎えた。
夕日たちが眠りに入ったのは夜中の四時。
寝入りが遅かった夕日たちは、朝日が部屋に差し込もうともなかなか起きることはなかった。
「う、うぅ」
寝ぼけ眼を擦り、ゆっくりとベッドから起き上がる夕日。
ベッドから降り、地面に足をつける。
「やばい、寝すぎたか?」
通常通りなら今日は稽古の日。
そして、その稽古は午前8時から。
「リサ、もう朝だぞ」
隣に寝ていたリサを揺すり起こす。
と、背伸びをしながらゆっくりと起き上がった。
「んー、もう、ですか」
リサもベットから降り、いつものようにいい匂いをたどって夕日たちは、リビングへと向かった。
「おはよう」
リビングに入ると、そこにはティーナさんが。
ちょうど今、料理を作っている最中だった。
「ティーナさん。おはようございます」
「ああ、といってもそんなに早くはないのだがな」
「えっ?」
リビングにある時計は、午前の10時を指していた。
「もうこんな時間じゃないですか!!」
「いいんですか? 今日も稽古あるんですよね?」
夕日とリサは焦り、交互に問う。
ティーナは、いや騎士団長は夕日たちとは対照的にゆっくりと話し始めた。
「深夜の戦闘で疲れているだろうから、稽古の開始を遅らせて午後からにしたんだ。本当は休みにしてやりたかったんだが、最近の魔物の異常発生を考えるとどうしても休みにできなかった」
「なんだ~。よかった。寝坊したかと思った」
寝坊じゃないとわかり、力が抜ける二人。
考えれば当然だが、団長たるティーナがまだ家にいるのだから当然寝坊のはずがない。
寝起きであり、なおかつ焦っていた二人にはそんなこと考える余地もなかった。
力が抜け心身ともに緩くなっていた夕日は、急に顔を引き締める。
「最近の魔物異常発生、ティーナさんはどう考えてるんですか?」
「……正直言ってわからない。なぜ最近になって魔物が増えたのか。なぜ今なのか。なにか理由があるのか。……さっぱりだよ」
「そう、ですよね」
「私はただの騎士だからな」
「『ただの』、ってただの騎士で団長なんて務められませんよ」
「ははっ、確かに『ただの』ではないな……まあ、魔物の異常発生についてはわからない。ただ言えるのは」
「ただ言えるのは……」
「私たちがすべて倒す。それだけだ」
「……ですね。俺ももっと力つけなきゃな」
そう言い、拳を固く握る夕日。
その隣。
夕日の言葉に、はっと目を覚まし、一人頷くリサがいた。
「魔物っていうのは、魔力スポットから出現しているんですよね?」
「ああ、そうだ」
料理を作り終え、皿に盛りつけながらティーナは話す。
「魔力スポットから漏れ出した魔力が形となり魔物ができる、と言われている」
「言われている?」
「ああ。魔物の生態については不明な点が多く、知っていることといえば魔物は魔石を核にして魔力で纏い形を作っていることくらいだ」
「たったそれだけしか」
「ああ。たったそれだけ、だよ」
そうして話しながらも、ティーナは机に皿を置き、少し遅めの朝食を取ることとなった。
「こうして話してるとおなかすいてきたろ」
「ですね。食べましょうか。リサもそうみたいだ」
そう言う夕日の視線の先には、今にも鳴きそうな腹の虫を制し、恥ずかしさからか、今にも泣きそうな目をするリサがいた。
「早く食べようか」
リサの目に促され、夕日たちは席に着く。
「いただきます」
「「いただきます」」
そうして席に着き、手を合わせ、いつも通りいただきますの挨拶をする三名。
リサはすぐに料理に手を付けたが、夕日はそうではなかった。
「あのティーナさん」
「なんだ?」
皿に盛りつけてある料理を自分の皿に移している最中のティーナは夕日の言葉に手を止める。
「さっきも言ってましたが、魔力スポットは魔物が発生するんですよね」
「そうだ」
「だったら魔力スポットの調査をするべきじゃないでしょうか」
「調査か……確かにな。調査は必要かもな。だがな夕日、これもさっき言ったが魔物については生態がわかっていない。つまり、魔力スポットの調査に行ったところで何がわかるわけでもないんだ」
「で、すね。何がわかるわけもないのに行くのは無駄か」
「私たちが今できることと言ったらやはり力をつけるくらいしかないだろう」
「すみません。失言でしたね」
「いや、いいさ。それにしても魔力スポットのことを知らないなんて……」
何気ない普通の会話。
なのに、夕日たちは背筋が一気に凍えた。
今までそんな会話をしたことがない。
いや、今までそんな会話をしていないのが異常なのだ。
リフッシの知り合いというだけでずっと夕日たちを鍛え、家に泊まらせてくれていたのだ。
だからこそ、夕日たちは尋常じゃないほどの緊張に包まれていた。
ティーナの次の言葉に唾を飲む二人。
そして、息継ぎが終わったティーナは次いで声を発した。
「魔物とは無縁のところに住んでいたんだな」
「え……そ、そうですね。自分が住んでいたところは魔物なんていない平和なところでしたよ」
「そうなのか」
「ええ。まあ、といっても争いがないというわけではないですけどね」
夕日は地球のことを思い出し、答える。
日本での生活は平和だった。
争いは無きに等しい。
だが、それは日本のこと。
世界で見れば争いなんて山の数ほどある。
そのことを夕日は考え、発言していた。
「それじゃあ私たちがその争いをなくせるせるようにしていかないとな」
それを当然かのように言うティーナ。
争いをなくす。
それがどれだけ大変か。
「ですね」
だが、夕日もティーナと同じく、当然のように返事を返した。
その後、会話少なく、朝食を取り終え、時は流れていき、時刻は午後一時を指していた。
「深夜のこともそうだが、なにかと魔物と戦うことが多くなるだろう。これからどんな魔物とでも戦えるように集中して稽古に取り組むこと。それじゃあ稽古はじめ!!」
そうして、いつもより気合の入った稽古が開始した。
「今日はここまで!!」
六時間後、辺りも暗くなってきたため稽古はこれでお開きとなった。
「みんな。魔物はここのところ日中が多かったものの、深夜にも出てくるようになった。だからいつでも戦えるようにしていてくれ」
「「「はい!!」」」
「よし。それでは解散」
そうして各々帰路に就く。
それはティーナ、夕日、リサも例外じゃない。
だが、その道中。
いつもどおり家に向け歩いていた夕日たちは急に足を止める。
「私と稽古をしたい?」
驚いた声を上げるティーナ。
その視線の先、ティーナを驚かせた張本人であるリサが真剣な表情でその場に立っていた。
久しぶりです。
最近やる気が出ず、書けるときに書くという感じでやっていますので、不定期更新が多くなると思いますがご了承ください。
さて次回は、今回の話の続き、リサがティーナに稽古をお願いしたところからです。
なぜリサがそんなことを言ったのか。ここまで三秒転生を読んでくださっている方ならわかると思います。
それではまた次回




