第30話 偶然
翌朝8時。
宿を出て、馬小屋から馬を連れて行き馬車につなげた。
これでこの都市から出ていく準備が出来た。
「行こうか」
「はい」
こうして、夕日たちは入ってきた門から出ていくこととなった。
その際、ある文字が目に入った。
それは『セルニス』という文字。
そのセルニスという文字はこの都市の名前だった。
「ありがとうセルニス」
セルニスはとてもいい都市であった。
出会った人は優しく、それに温泉もあった。
夕日は門をくぐり、都市に心から敬意を表した。
こうしてディヌスに再び歩みを進めたのであった。
夕日はちょくちょく休憩を挟みつつ森の中を地図を頼りに馬車を走らせていた。
「リサ。もう少しでディヌスに着くぞ」
「わぁぁぁかぁぁぁりぃぃぃまぁぁぁしぃぃぃたぁぁぁぁ」
リサの震えた声での返事に夕日は軽く笑い、馬車の速度を少し上げた。
(リサの為にも早く着かなきゃな)
そうしてディヌスまでもうすぐの所まで来た夕日たちであったが、進行方向側から騒々しい声が聞こえてきたことに夕日は馬車を止めた。
「かなり騒々しいな。何かあったのかな?」
「どうでしょうか。でも、この感じ。何か普通じゃなさそうですね」
馬車からため息をつき出てきたリサ。
リサは馬車での移動に疲れたのか大きなあくびをした。
「とりあえず歩いて行ってみようか」
「そうですね」
夕日たちは声の聞こえる方へと歩いていく。
ある程度の歩いていくと声が鮮明に聞こえてきた。
「おい。そっち行ったぞ」
「了解。こっちは任せてくれ」
「それではこちらは私が引き受けるとしよう」
その声は仲間と連携を取っているようだった。
「何かと、戦ってる?」
「その可能性が高そうですね」
「もしかして魔物!?」
「ここらへんに魔物がいると言っていましたし、おそらく」
そう話しをしていると、ふと前方から大きな声が響いた。
「しまった!! 1体抜けられた」
「おい!! 何してるんだよ」
「今はいいから早く倒さないと」
そんな声が聞こえた瞬間、前方から夕日たちのところへ何かが向かって来ていた。
「なんか手こずっている感じだな。俺たちも参戦したほうがいいよな」
「そうですね。私が参戦したところで足手まといにしかなりませんけど、夕日は行ったほうがいいかもしれません」
「リサ⋯」
夕日はたった今リサが引け目を感じていることに気づいた。
(リサ。そんな風に思ってたんだな。気づいてやれなくてごめん)
そう思い夕日は表情を暗くした。
その時、前方の草むらからガサガサと音が聞こえた。
夕日は戦っている人が来たのだと思い、リサから顔をそちらへと向けた。
「っ!?」
驚く夕日。
夕日が見たものは人ではなく魔物だった。
魔物は夕日たちを見つけるなり襲いかかってきた。
(やばい!!)
油断をしていた夕日は完全に反応が遅れてしまった。
咄嗟に魔力を纏おうとする夕日だったが魔物はすでに目前に迫っていた。
(だめ、か)
魔物の攻撃を防ぐため腕で防御をとったその時、ふと目の前に影が現れた。
「グガァ!!」
声を出して吹き飛ぶ魔物。
その魔物は吹き飛ぶと同時に何かを残し霧散していった。
「大丈夫か?」
魔物を倒した影、もとい人は夕日に声をかけた。
「はい。大丈夫です」
「そうか。それならよかった」
魔物から夕日を救ったのは女性だった。
女性は鎧をつけ、腰に剣を提げていた。
「すまんな。うちの団の者が魔物を1体逃してしまった。その魔物が君たちに危害を加えそうになった。本当にすまなかった」
その女性はそう言うと頭を下げ謝ってきた。
「結果的に助かったんですからそんなに謝らなくても」
「騎士団たるものほんの少しの失敗でもすることは許されない。それが人の命に関わることであるならばなおさらな」
夕日は女性の話の中で騎士団というワードに引っかかっていた。
「騎士団の団員なんですね」
「ああ。こうして魔物を討伐するのも、団員の尻を拭うのも騎士団長としての役目だからな」
女性の発言に夕日は驚いた様子を見せた。
「今、騎士団長って」
「ああ、私がディヌスの騎士団長、ティーナだ」
こうして夕日たちはリフッシがすごいと思う人であるティーナに出会うことができた。
目的であったティーナに偶然会うことができた夕日。果たしてティーナはどんなすごい人なのか⋯




