第26話 灯り
ミステスを出発して三時間がたった。
都市ディヌスは1日に馬車走らせれば着く距離に位置し、夕日は今日中にディヌスに着くつもりでいた。
「リサ、大丈夫か」
「だぁぁぁぁいじょぉぉぉうぅぅぶぅぅぅぅでぇぇぇすぅぅ」
「⋯大丈夫じゃないな。でも、我慢してくれよ。これ以上どうにもならないから」
「はぁぁぁいぃぃぃ」
馬車の猛烈な揺れによりリサの声が震える。
夕日は馬を操っているため外に馬車の中ではなく外にいた。
リサは王族で座っていた椅子はすべてふかふかであった。
だから素材むき出しの硬い板の上に座ったことはこれが初めてで、地面からくる揺れがもろに伝わるためリサは今の今まで揺れに耐えるようにずっと壁に手をついていた。
「まだ着かないんですか?」
「あと、20時間くらい走らせれば着くと思う
よ」
この情報は馬車を買った店の店長から教えてもらった情報だ。
リサにも確認してもらった為、本物の情報であることは確かである。
話によると少し進んだら大きな山があるらしく、その山を超えるのが一番の近道だと教えてもらった。
「リサ、キツかったら言ってくれよ」
「はぁぁぁぁいぃぃぃぃ」
リサの我慢が続いている間にとっとと山を超えたいな、と思いつつ夕日は馬車を走らせる。
それから1時間経ち、目の前に大きな山が薄っすらと見えてきた。
夕日は馬車を止め、山の全貌を確認する。
「でかっ!!」
「大きいですねー」
夕日と共にリサも馬車から降り山を見上げていた。
その山の大きさは例えるなら富士山。
そのくらい大きさな山が目の前にそびえ立っていた。
夕日とリサは馬車へと戻り、再び馬車を走らせる。
すると少し進んだ後、前方から何やら声が聞こえてきた。
「え、土砂崩れが起きて、道路が通れない? おいおいまじかよ」
「ああ、先日の大雨で地盤が少し緩くなってたからな、仕方ないか」
声の聞こえる方に行くと、山にかけての道に馬車の列ができていた。
夕日は列の最後尾に馬車を止めた。
先程聞こえてきた話も声が聞こえる程度だったので内容はわからなかったが何かトラブルが起こったことだけはわかっていた。
「すいません。この列はなんの列ですか?」
夕日は前にいる厳ついおじさんに話しかけた。
「あ? この列だ? この列はなこの山を越える為に来た奴らの列だ」
「山に登らないんですか?」
「山に登らないんじゃなくて登れないんだよ。昨日ここら一帯は大雨が降ったんだがそのせいで山の地面が緩くなって土砂崩れを起こしちまってな。それを知らずにここまで来た結果がこれだ」
そのおじさんは数多の馬車が並ぶ列を指差し苦笑いをした。
「そうですか⋯」
「困りましたね夕日」
「ああ。この山を越えていくのが近道だけど⋯」
夕日たちはこのまま山を超えて今日中にはディヌスに着く予定だった。
だがその予定は土砂崩れ同様に崩れた。
(仕方ない。遠回りになるけれどディヌスまで行ける道を探さないと)
夕日は馬車の店の店長から貰った地図を見て道を探す。がしかし、貰った地図には大まかな道しか書かれておらず小さい道が一切書かれていなかった。これではどこに道があるのかわからないのと同じだ。
(まあ、あの店長から地図を貰えただけでも良しとしよう)
仕方がないので先程話しをしていた厳ついおじさんに再度話しかけた。
「すいません。俺たち、このディヌスっていう都市に行きたいんですが、ここから行ける道ってありますか?」
「ああ、それならこの山を避けるように大きく迂回すればその後はこの地図に書いてある道を辿れば着けると思うよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「いいってことさ」
男性は地図を指でなぞり迂回するルートを示してくれた。
その優しさもあって、夕日は人を見た目で判断してはいけない、そう思うのだった。
「それじゃあリサ、行こうか」
「了解です。夕日」
おじさん曰く、ここから大きく迂回すれば行けるとのことだったのでおじさんが地図を指でなぞった道筋を思い出し、馬車を走らせた。
「これで山は迂回できたな」
「長かったですね」
夕日が馬車を走らせ5時間ほどで山を迂回できた。
本来、山を越えれば一時間くらいで行けたが、4時間もオーバーしてしまった。
(今日はディヌスに着けないだろうな)
今は午後6時。
外も暗くなってきた。
今日は野宿かなと思いつつ夕日は馬車を進められるところまで走らせた。
と、前方に灯りが見え始めた。
「リサこの先に街がありそうだ」
「よかったです。これで野宿にはならなそうですね」
「やっぱり野宿は嫌だよな」
「はい」
そのまま馬車を走らせた。
その先には大きな都市があった。
「結構大きな街だな」
「そうですね」
馬車を走らせ、都市の入り口に到着した。
この都市は他の都市と同じく壁で覆われており、入り口には門があった。
そして当然、門には門番がいた。
これも他の都市と同じだ。
「すいません。馬車も一緒に入ることってできますか?」
「できますが。馬車保有証をお持ちでしょうか」
「馬車保有証ですか?」
「馬車保有証がないと都市には入ることができません」
「え、そうなんですか」
門番に話しかけると、馬車保有証なるものの提示を言われた。
だが、夕日はそれを持っていない。
(あの店長、そんなこと一切言っていなかったぞ)
店長に1杯食わされた夕日だった。
「無いのであれば新しく発行するための発行料がかかります。発行しますか?」
「お願いします」
夕日は、どれくらい取られるのだろうと軽く身構えた。
「それでは銀貨三枚いただきます」
「あ、はい。わかりました」
そこまで高くはなく夕日は袋から銀貨3枚を取り出し門番に渡した。
「少々お待ちください」
門番はそう言うと街の中から人を呼び寄せ何やら指示をしていた。
「おまたせしました。どうぞ」
発行は案外すぐ終わり、門番から鉄製のカードを渡され馬車ごと都市に入ることができた。
この馬車保有証は馬車に何が起きても都市は一切責任を取りませんというもの。
(都市はなぜそんなことをするのだろうか)
「リサ、とりあえず何か食べるか」
「はい」
時刻は午後7時過ぎ。
夕食を取るにもちょうどいい時間帯。
そしてそれは街も同じ。
街の大通りには屋台が軒を連ねていた。
(この光景を見ると、地球のことを思い出すな⋯)
夕日がその光景に懐かしさを覚えているとリサがソワソワしている様子が目に入った。
「リサは何か食べたいものはあるか?」
「食べたいものですか。迷いますね」
リサが悩んでいると、近くに店を出していた屋台から男性の声が聞こえてきた。
「そこのお二人さん。ここで食べていかないかい」
その声に夕日たちはその声の方向に目を向けた。
そこにはニコニコ顔ではツルツルの頭にはちまきを巻いているいかにもThe大将な男性がいた。
「ラーメンか・・・」
屋台の看板には『ラーメン』の文字が。
夕日はラーメンという言葉に反応しお腹が鳴った。
それを聞きリサは今日の夕食を決めた。
「夕日。ここで食べましょうか」
「ここでいいのか?」
「はい。私、食べてみたくなりました」
リサに夕食を決めさせるつもりが結局夕日の食べたいものになってしまった。
「ありがとなリサ」
「な、なんのことですか?」
「いや、なんでもない」
(相変わらず演技が下手だなリサは)
リフッシと会ったときのことを思い出して
少し思い出し笑いをした夕日に、「なんですか」と少し焦りながら言うリサ。
そのやり取りを終え、夕日たちは屋台の暖簾をくぐり、椅子に座った。
ちょうど客はおらず、その場には夕日とリサ、そして店主だけがいた。
「お二人さん何にしやすかい」
「俺は豚骨ラーメンで。リサは?」
夕日はメニューを見ずに注文をした。
ラーメンのメニューは地球も天球も同じだろうと思ってのことだ。
店主が「あいよ」と言ったことにより夕日の予想は的中したことを確認できた。
リサはメニューを見ていたが、どういう料理なのかわからずにアワアワと慌てていた。
「リサは味噌ラーメンとかどうだ。もし口に合わなかったら俺と交換すればいいし」
「う、うん。じゃあそれで」
「あいよ」
店主はそう言い、すぐさま作り始めた。
(早く食べたいな)
このただ待っているだけというのはとても地獄だ。
スープのいい匂いにやられ、早く食べたい、食べたいという気持ちが先行し箸を構える。
リサも同じような状況だった。
ラーメンを作り終え、店主は夕日たちの前に器をドンと置いた。
「さあ、召し上がれ」
その店主の声を合図に夕日たちはラーメンを啜る、啜る、啜る。
気づけばもうラーメンはなくなっていた。
リサに至ってはスープまでなくなっていて、とても満足そうな顔をしていた。
その後、お金を払い、屋台を出た。
胃も満たされ、あとは寝るだけ。
「明日はどうしますか?」
「明日はとりあえず馬を休ませないといけないから自由だな」
「そうですか。それなら観光をしましょう」
「観光か。⋯それもいいな」
「ふんふふーん。明日が楽しみです」
明日は観光をすることになりいつになく上機嫌なリサ。
夕日も観光をすることを少し楽しみにしていた。
「おやすみリサ」
「おやすみなさい夕日」
その後夕日たちは宿を見つけ、夕日とリサは同じベットに入り、おやすみの挨拶を交わす。
二人とも疲れが溜まっていたのかすぐに眠りに入った。
『ディヌス』に着くまでまだまだかかりそうです⋯




