第25話 神のみぞ知る
夕日たちはリフッシと別れたあと、馬車を売っている店へと足を運んでいた。
「ここか」
「結構歩きましたね」
「リフッシに店の場所を聞いておけばよかったな」
「そうですね」
リフッシと別れたあと馬車を買うために店へと向かった夕日たちであったが、その肝心の店がどこにあるかリフッシに聞いていなかった夕日たちは、通行人に聞いたりしながらようやく店へとたどり着いた。その際かなり歩いたため二人とも表情に疲れが出ていた。
「すいません。誰かいますか?」
「はいはぁーい。私が店長ですが」
店の中に声をかけると奥から店員らしき男が出てきた。
「あの、馬車を買いたいのですが」
「購入ですか。それではどのような馬車を⋯」
笑顔で接客する店長は夕日たちの容姿を一瞥し、急に言葉を止めた。
「すいませんお客様。生憎、馬車が今無くて」
「え?」
夕日は男の後ろの方に一台の馬車が見える。それなのに馬車は売れないと言ってきた。そのことに夕日は不審感を示していた。
「うちも繁盛してまして、本当に申し訳ないのですがもう馬車が一台もないものですから」
そう言う店長だったが夕日には馬車がしっかり見える。どういうことかと夕日は店長に聞いた。
「その後ろにある馬車は?」
「あーこれですか。えーとですねー、そのー」
おそらく店長は夕日が金を持っていないそう判断して馬車があるのに売れないと言ってきたのだろう。だが、夕日たちには王からもらったお金がある。だから、買えないことはないはずだ。
「その馬車を買えるお金があればいいんですよね?」
「そうですが、高いですよ。あなた達がそれだけのお金を持っているようには見えませんが」
店長はやはり夕日たちがお金を持っていないと思っているようだ。
「いくらですか?」
「その馬車だとざっと金貨1枚ですね」
店長は後ろにある馬車を指差し金額を教えてくれた。そして馬車の金額の高さに驚くと夕日たちを見て店長は口調を鋭いものに変えた。
「これでわかったでしょう。それならさっさとお引き取り願いましょうか。あなた達の相手をしている暇はないんです」
仕事の邪魔だ、と出て行けと手で合図をする店長。だが、夕日たちは出て行かなかった。
「それじゃあ買います」
「へ?」
店長は変な声を出し固まった。そして、すぐに動き出した。
「いやいやいや何言ってんのお客さん。買うって。金額さっき聞いたでしょ?払えないってわかったでしょ?」
店長は夕日たちが金を持っていないと決めつけているようだ。これでは埒が明かないので夕日は実際にお金を見せることに。夕日は金の入った袋から金色の硬化を手のひらに乗っけ店長に見せる。
「これでいいんですよね?」
「はい?⋯えーーーーーーーーーー!?」
店長は夕日の手のひらに乗っているものに驚き、大きく目を見開いた。
「えっとこれって」
店長は嘘だと思いながらも夕日に問う。
「金貨ですけど」
「で、ですよね」
すると店長は姿勢をただし、崩れていた営業スマイルを夕日に向けてくる。
「もうお客さん、お金があるんならそう言ってくださいよ。さ、どうぞ持ってってください。ささ」
お金を受け取るや否や、夕日たちは馬車のところに誘導された。多種多様な馬車があり、どれを選ぶか悩むところ。だが、夕日はあることを失念していた。
(あ、馬車だけあっても馬がいなければ意味ないな)
夕日はとても笑顔な店長に声をかけた。
「その、馬も売ってほしいのですが、馬って売っていますか?」
「もちろんです。馬がいなければ馬車も意味がないですからね」
「それでいくらでしょうか」
「馬2頭でざっと金貨4枚ですね」
提示された金額は金貨4枚。馬1頭に金貨2枚のということになる。
(結構するな。馬って馬車よりも高いんだな)
馬の高さに驚きながらも夕日は袋から金貨四枚を取ろうとする。だが、袋の中に入れた腕を何かに引っ張られることにより夕日は動きを止めた。
「夕日。その人嘘をついています」
「ギクッ!!な、なんのことでしょう」
リサに引っ張られることにより動きを止めた夕日は店長の方へと視線を移していた。その店長からは汗がダラダラと出ていた。
「で、本当はいくらなんですか?」
「え、えっと」
夕日が問いただすと店長からは汗が更に出てきた。
「いくらですか?」
リサからも問いただされ店長はようやく観念した。
「⋯金貨ニ枚です」
夕日とリサのダブル攻撃を受け店長は本当の金額を言った。夕日は嘘か本当か見分けるため、リサを見たが頭を縦に振ったことで本当だと確信した。
「はい。どうぞ」
夕日は金貨4枚ではなく金貨2枚を店長へと渡した。
「ひぃー、なんでばれたんだ」
店長はなぜ嘘がバレたのか理解できていない様子だった。その後、店長に連れられ厩舎へと行き、馬2頭を買い取った。その後馬に馬車をひかせ
「買ったはいいですけど御者は雇わなくて良かったんですか?」
「ああ、それは別にいいんだ。俺、馬に乗れるから」
「え、そうだったんですか」
夕日はシャルネアの記憶を共有している。その中に馬を操っている記憶があった。馬を操る技術は体が覚えていなくとも記憶が覚えている。だから、わざわざ御者を雇う必要はなくなった。
「とりあえず馬と馬車は手に入れたしもう出発しようか」
「はい」
馬車に乗り、東の門から出発する。ようやくディヌスに向かうことができた。そしてその頃、『ディヌス』では魔物退治に駆られる騎士の姿があった。
「また魔物が現れました!!」
騎士団の詰め所に響き渡る声。その声に慌てて外へと向かう騎士たち。
「っ、またか!?一体これで何度目だ」
「ここ最近、何か変ですね」
「こんな頻度に魔物が来るなんてなかったのに、それが1日に何回も。何か良くないことが起こる前触れなんじゃ⋯」
「そんなことを考えるより早く魔物を倒さないと」
詰め所から出て魔物のいる都市の外へと勢いよく走る騎士たち。
「騎士の皆さんお願いします!!」
門番が扉を開け騎士にエールを送る。
「ああ、任せとけ!!こんなやつらすぐに退治してやる」
騎士団長らしき女性は門番に向かいそう言うと、門番の表情は緊張感のある顔からたちまち表情は緩くなっていった。
「ほら行くぞ皆」
「「「はい!!」」」
その後、騎士団は魔物を討伐し事なきを得た。騎士団の1人が言うようにある日を境に天球はおかしくなっていた。各地で頻繁に魔物が現れ、魔物退治に駆られる人々。なぜこんなことになっているのかそれは神のみぞ知る。
最後、何やらこのあと起こりそうな予感ですね。そして夕日たちは次の都市へと馬車で移動を開始します。果たして無事に『ディヌス』へと着けるのかどうか・・・




