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三秒転生 〜神に三秒で敵を倒せと言われたのだが〜  作者: サカキ
第一章 異世界転生は突然に
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第12話 武術大会(2)

 武道大会2日目。

 準々決勝は12時から。

 宿屋から闘技場はあまり離れていない。

 夕日は宿を出て少し歩き、開始10分前に闘技場に到着した。

 場所は変わらず同じ闘技場。

 だが、昨日とは違いその場にいるのは勝ち上がった8名と観客のみ。

 そのため、闘技場の中は緊張感で張り詰めていた。

 そんな中、緊張感のない者がいた。今は仲間とおぼしき人と喋っている。

 昨日の青年だ。

 観客席には青年の応援団らしき人たちがいた。

 そんな人たちに青年が手を振ると、たちまち歓声が上がる。

 青年と夕日を除いた6名は、青年を疎ましい目で見ていた。



「ただいまより準々決勝を始めます。勝ち上がった者はトーナメントに従い、各コートに分かれてください」



 準々決勝の始まりを告げるアナウンスが闘技場内に響き渡る。

 先程まで仲間たちと喋っていた青年も今は口を閉ざしている。

 仲間たちが頑張ってくださいと言っているが返事をしなかった。

 青年はそれほどまでに集中していた。

 夕日たち8名はトーナメントに従いコートに分かれる。

 コートは全4コート。

 各々決められたコートに入る。

 そして、最後の1人がコートに入った。



「それでは準々決勝を始めます。それでは⋯⋯」



 最後の1人が入ったことを確認して審判がそう告げた。

 シーンと静まり返る会場。

 その静けさを開始を告げる審判の大きな声が遮った。



「始め!!」



 こうして大会2日目の準々決勝が始まった。

 と同時に1つのコートで決着が着いた。

 そのコートとはあの青年のコート。

 その後、少し遅れて夕日のコートでも決着がついた。

 もちろん勝ったのは夕日と青年。

 夕日はいつも通り試合開始と同時に相手に詰め寄り、顎を狙った攻撃を仕掛けた。

 そうして相手を気絶させ夕日の勝ちが決まる、はずだった。

 だが、曲がりなりにも準々決勝まで来た相手。

 さすがにバカではない。

 夕日の試合を見て対処法を考えたのだろうか、一発で終わらないように両腕をきっちり合わせ、顎へのパンチをガードする体制をとっていた。

 攻めを止め、守りに入る。

 それは一見いい策のように見える。

 だが、夕日からしてみれば攻撃を捨て守りに入った時点で相手の負けは確定していた。

 夕日は相手の顎が狙えないと見るや否や、すぐさま相手の背後にまわり、首を絞めた。

 初手は防げる。

 そう慢心していた相手の不意をついた攻撃。

 相手が落ちるのはそう早くはなかった。

 一方、青年の方はというと、昨日と全く同じ試合展開となった。

 青年の相手も夕日の相手と同様、対策を練ってきていた。

 だが、青年はその対策ごとねじ伏せた。

 それから相手は立ち上がることなく、審判に戦闘不能と判断され青年の勝利となった。

 青年の攻撃は夕日より速く、そして強い。

 齢21で魔法部隊の隊長しているだけはある。

 片や夕日は、つい最近継承したばかり。

 そして戦い方はシャルネアの記憶をなぞるだけ。

 青年と夕日には明確な練度の差があった。

 その練度の差が試合を終わらせる時間へと繋がっていた。

 試合が終わった今、青年は笑顔だ。

 青年が夕日を見る。

 夕日はそのにこやかな表情を見て、戦慄を覚えるほかなかった。

(これが魔法部隊『マルグリア』の隊長、か)

 少し時間が経って他の2コートでの試合も終わった。

 残ったのは夕日、青年を合わせ4人。

 このまま行けば問題なく決勝には行けるだろう。

 だが、決勝で勝てるかわからない。

 決勝に上がってくるのは確定であの青年。

 彼の武術のレベルはシャルネアにひけを取らない。

 夕日はそんな化け物と闘わないといけないのだ。



「準決勝に残った4名は各々決められたコートに入ってください」



 夕日は一抹の不安を感じながらも決められたコートに入っていく。

 対戦相手もコートに入ってきた。



「!?」



 夕日は驚きを隠せないでいた。

 対戦相手は筋肉隆々のがたいのいい男性。

 だが、夕日はそんなことに驚いていたわけではない。

 夕日が驚いていたのはそのデカさ。

 目の前に壁がある感じだ。

(これは⋯⋯でかいな。俺は今からこれを相手に戦うのか)

 夕日に、この大会初めての焦りが生まれる。

 シャルネアの記憶にもここまでデカイ相手とは闘った記憶がない。

 となるとシャルネアの記憶はあまり意味をなさない。

 これは夕日自身で考え戦わなければいけない。



「これより準決勝を始めます」



 夕日が色々考えているうちに試合が始まりそうになっていた。



「それでは、始め!!」



 夕日はとりあえずいつも通り相手に詰め寄る。

 ただ、このパターンは試合で何回も見せてきた。

 当然相手も対処法を考えているはず。

 だから、一か八か相手に賭けることにした。

 夕日は相手を信じ、詰め寄る。

 相手はそれを待っていたかのように筋肉隆々の右腕を後ろに引き、思いっきり前に突きだしてきた。

(来た!!)

 夕日はそれを待っていた。

 夕日は賭けに成功し、繰り出された渾身のパンチを避ける。

 相手は当たらず空を切るパンチの勢いに引っ張られバランスを崩した。

 夕日はその隙を見逃さなかった。

 夕日はすかさず相手の足を引っかけ仰向けに倒した。



「参った」



 夕日の右手の突きが相手の顔面寸前で止まっているのを見て、相手は負けを認めた。

 これにより夕日は勝利した。

(何とか勝てた)

 安堵する夕日だったが、あの賭けが外れていたと思うと正直勝てていたかわからなかった。

 だが、そんなことを考えてる暇はない。

 隣で行われていた試合はとうに終わっていた。

 もちろん勝ったのは青年。

 これで決勝は青年と夕日の一騎討ち。

 正直勝てるかもわからない。

 だが、夕日には勝たなければいけない理由がある。

 この大会で試合が速攻で終わった試合にはすべてその2人の対戦だった。

 その2人が戦うとあって会場はこれまで以上の盛り上がりを見せる。

 そうして少しの休憩を挟まみ、すぐさま決勝戦となった。



「⋯⋯」

「⋯⋯」



 決勝のコートには夕日と青年。

(ディルナンド・クルシェか)

 夕日は目の前にいる青年を見る。

 先程、名前で呼ばれているのを夕日は聞いていた。

 コートに立つディルナンドの表情は笑顔で観客席に手を振ったりもしている。

 反対に夕日の表情は無表情であった。



「これより決勝戦を始めます。なおこの決勝戦は国王も観られます。自分の力を十分発揮してください」



 国王も観ている。

 そう聞かされ夕日とディルナンドの間に緊張感が生まれた。

 それと同じく観客席はまだかまだかと2人の対戦を待つ人々の妙な緊張感も生まれていた。



「それでは、始め!!」



 審判の試合開始の合図とともに夕日が攻撃を仕掛ける。

 その前にディルナンドが先に攻撃を仕掛けた。

 一瞬で間を詰められ、練度の違う正拳突きが放たれた。

 ギリギリ見える速度で放たれた右の正拳突き。

 それは腹を狙っていた。

 夕日は即座に後ろに飛び退く。

 攻撃を避け、夕日は直ぐに反撃に出る。

 一瞬で間合いを詰め、顎に狙いを定め拳を放つ。

 だが、拳は顎に届く前に下に叩きつけられた。

 そこからは一進一退の攻防戦。

 だが、徐々にディルナンドに押され始めていた。

 ディルナンドが夕日に生まれた隙にここぞとばかりに左の正拳突きを放つ。

 その攻撃に夕日は反応が遅れる。

 反応の遅れた夕日は攻撃を避けることができず、そのまま正拳突きが腹に入った。



「ぐはっ!!」



(なんだ!?)

 夕日は混乱していた。

 腹に拳が触れた瞬間、体に内側に重い衝撃が伝わった。

 だが、夕日は体を強制的に鍛えら上げ、頑丈になっている。

 だからこれしきのことじゃ参ったとは言わない。



「すごい。これで落ちなかった人は今まで見たことがない」



 ディルナンドはとても驚いていた。

 だが、その驚いた顔はすぐに笑顔になった。

(なんとか耐えたけど、速く決着をつけないとな)

 そう思い、目の前にいるディルナンドを見る。

 案の定、ディルナンドは笑顔だった。

 その笑顔を見て夕日はあることを思い出す。



『楽しい試合にしましょう』



 夕日はこのままいったら負けてしまう。

 そう、このままなら。

 夕日はまだ、鬼麻纏流の奥義を出していない。

 今まではただ、鍛えた体とシャルネアの記憶だけで何とか戦ってきた。

 だが、この試合、そのままでは勝てない。

 そう判断し、夕日は鬼麻纏流の奥義を使うことにした。



「もらったー!!」



 ディルナンドが勢いよく放った拳は空を貫く。



「え?」



 彼が驚くのも束の間、彼は腰から折れ、地面に倒れる。



「な、、に、、、が」



 こうして彼は意識を失った。



「⋯⋯」



 その光景を見ていた観客たちはしばし沈黙に包まれたのち、今までにない歓声を上げた。



「勝者⋯⋯龍崎夕日」

「「「おぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」



 夕日が使ったのは魔法ではない。

 夕日が使ったのは鬼魔纏流奥義『纏魔てんま』。

 自身に魔力を纏い、身体能力を上げるというもの。

 夕日は素早く魔力を纏い、ディルナンドの背後にまわり、その隙だらけの首裏に手刀を入れ意識を奪ったのだった。

 夕日は自身の勝利が確定し、ふぅ息をつく。

 ひとまず安心する夕日だったが、ふとシャルネアがどんな表情をしているか気になった。

(シャルネアのことだし、優勝して当然みたいな顔でもしてるのかな?)

 そう思い夕日は観客席を見る。

(シャルネアは昨日と同じ場所にいるはず)

 昨日シャルネアがいた場所に視線を移す。



「いた」



 シャルネアに声をかけようとしたが、すぐに声をかけるのを止めた。

 シャルネアは夕日の方ではなく、全く別の方向に目を向けていた。

 そのシャルネアの表情は固く、暗いものだった。



「誰だあれ?」



 シャルネアが見ているのは観客席に座っているかなり40代くらいの男性とその妻と思われる女性、そして、その娘。

 その娘はシャルネアと歳が近いような印象を受けた。

 そして雰囲気もシャルネアに似ていた。

 夕日はシャルネアの見ている人たちをしばらく眺めた。

 すると、男性と視線が合ったような気がした。

(なんでこっちを見ているんだ?)

 視線があったっきりその男性はずっとこっちを見ていた。

 その男性は座っていた椅子から急に立ち上がり、こちらへ向かってくる。

(なんだなんだ?)

 困惑する夕日に尚も男性は近づいて来る。

 そして、夕日の目の前に立ち止まった。

 時刻は16時。

 日が沈みかけ、町並みが真っ赤に染まるなか夕日の頭の中は疑問でいっぱいだった。

武術大会はこれにて終了。かと思いきやまだ何かありそうな予感ですね。シャルネアの視線の先にいた男性たち。一体シャルネアに何があったのか・・・

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