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精霊姫の帰還  作者: 香霖
8/14

読みに来ていただいて

有難うございます。





 私がリリフローラ・エーデルシュタインに

なって、一年半が過ぎた。




家族に恵まれなかった私だったが、

今は養父母りょうしんも、義兄あにも、私の事を愛してくれている。

私も負けないくらい、三人を愛している。


 義兄あにジークフリートは、

貴族の子供が十三歳から十七歳まで通う

王立学園の四年生だ。


 王立学園には、貴族籍を持つ者は、

必ず入学しなければならない。

三年間は、義務教育の如く、

貴族として、必要な事について学び、

守るべき者……自分より弱い立場の者についても学ぶ。

その為全寮制で、希望する者は一人だけ、

使用人を同行して良い事になっていた。


 三年間の締め括りとして行われる式典(卒業式)が、

社交界入りへの儀式でもあった。

故に、エッシェンバッの貴族籍を持つ子供は、例外なく

学園に通わなければならなかった。


学園にて、子供たちは、学問、常識、社交術を三年間学び、希望する者、優秀な者は、更に二年間、専門的な事を

学べるのだった。





******





 義兄あにジークフリートは、

王立学園官吏科の修士生(四年生)だ。


将来、義父ちちと同じ外交の仕事に

就きたい義兄あには、各国からの

留学生が多い、大国カルディニアの

上級学院に留学することを望んでいた。


国王陛下に認められて、義兄あには、

二週間後、留学のため隣国に向けて、旅立つ……。

エッシェンバッハの貴族子息として、

王族の血に、その名に恥じぬ行動を取り、

精進する事を、国王陛下の御前で誓う……


決意表明の為の謁見に、何故か私も

呼ばれていた。




 私達が謁見の間に入ると、中央最奥の、

高い位置にある玉座に、義父ちち

どことなく似た印象の、顎髭を生やした

男性が座っていた。


扉から玉座まで敷物が敷かれ、

その両側を、騎士が、等間隔で並んでいた。

玉座の手前には、玉座を中心に、

近衛騎士が左右に別れ並び立ち、

王を守っていた。


 私達は、中央の敷物の上を

横並びの騎士達の手前まで進み、

義父ちち義兄あには片膝をつき、

義母ははと私は、カーテシーをとった。



「臣下の礼大儀である。楽にせよ……」


国王陛下の声に、私達は姿勢を戻した。


「エーデルシュタインが子息、

ジークフリートよ。」


陛下の呼び掛けに、ジーク義兄様は、

体一つ前に出て頭を下げた。


「許す、口上を述べよ。」


「ははっ!この度、隣国カルディニアの

学府への留学を許可下さり、恐悦至極に

御座います。エッシェンバッハの貴族子息

として、祖国の名を落とさず、成果をあげることを誓います。」


「うむ。期待しておる。」


(ジーク義兄様、緊張してたわね。でも、

恙無く終わって良かった……)

この後は、陛下が退出されるのを

待つだけよね……と、私は考えていた。

それなのに……。


「ヴィクトール、我が従兄弟殿よ。

そこな幼女が、例の、御自慢の娘御か?」


お義父様に、陛下が声をかけた。


「チッ……はい、左様でございます。」


(えぇ〜?い、今お義父様、舌打ちして……大丈夫なの?

不敬になってない?ぇ、え?)



「許す、名を告げよ」


(はぁぇ?わ、わたしぃ?)

「……リ、リリフローラと申します。」


「フッ、可愛らしいな……まさか

直ぐに帰るなどとは、言わぬよなぁ?

妃がサロンにて待ちかねておる。

ああ、このまま共に向かおうぞ。」


いいこと考えたな、と、今にも

言い出しそうな国王陛下だった。


「チッ、面倒な……有難き幸せ……」


(お義父様、またも、舌打ち、そして心の声漏れてます……)

私達は陛下と一緒に、入って来た時とは、

別の扉から出て、城の通路を進んだ。


陛下と一緒に移動した先にあったのは、

大きなガラス窓から注ぐ、柔らかな日差しが明るい、

サンルームの様なテラスがある広間だった。


其処には王妃様と第二王子殿下、

第二王女殿下がいらっしゃった。

第一王女殿下は、大国カルディニアの

第一王子に嫁がれていた。


「シア!」


「陛下……クラウス様。」


「父上」


「お父様ぁ!」


第二王子アルマンド・リュカス・

エッシェンバッハ

第ニ王女セラフィーナ・アザレア・

エッシェンバッハ

第一王子レオンハルト・クリストファーは

自身の留学準備の為、この場には

いなかった。

第一王子は親友のジークフリートと共に、

カルディニアの学府に行く事を、

急遽決めたのだった。


カルディニアに嫁いだ、姉の様子を

親に代わって見て来るという、

目的もあるようだった。

って、シスコンか!!


国王、ヴォルフラム・クラウス・

エッシェンバッハ陛下は、お義父様と、

従兄弟という関係だった。


王妃のフィオリナ・レウィシア様は、

お義母様とは、学園時代からの親友だ。


お義母様に、私が養女になってから、

何度も養女むすめ(私)を伴っての

お茶会の誘いがあった様だ。


私は養女になってすぐ、一般常識や

礼儀作法を教えて欲しいと、

義父母に願いでた。

それまで誰にも、相手をして

もらえ無かった私は、この世界の名前も、

自国の名前すら、知らなかったのだ。



「アスティ、貴方の可愛い娘を、

紹介してちょうだい。」


王妃様の言葉に、私は身構えてしまった。

緊張する私に、王妃様、国王陛下までが、

私的なお茶会だから、何も緊張しなくて

良い、失敗しても笑い話しになるだけだ、

と、言われた。


私は、養女にしてくれた義父母りょうしんの為にも、

何かやらかして、二人を笑い者にする

訳にはいかなかった。


「フィーナ様、私達の娘、

リリフローラですわ。」


「リリフローラと申します。」


私は軽く膝を折り、王妃様に

ご挨拶をした。


「リリィ、私の子供達よ。仲良くしてね。」


「アルマンドだ。」


「セラフィーナよ。もうすぐ

七歳になるわ。」


「私は来年、七歳になります。」


「僕は今、十二歳だ。」


「あら、年齢的にちょうど良いわね。

リリフローラ、アルマンドの

婚約者にならない?」


「……」

(えぇっ!?王妃様何を……私、

侯爵令嬢でも、養女ですよ?)

返事をする事が出来ずに、私は

義父母りょうしんに、助けを求めた。

二人が返答するよりも早く、当人である、

アルマンド殿下が、返事をされた。


「嫌です。こんな黒い髪の女の子、

それに、侯爵令嬢とは名ばかりの、

養女ではないですか。断固として拒否します。」


(あちゃ〜、断ってくれて感謝だけど、

地雷踏んだね。お義父様、お義兄様からの

殺気が感じられるわ〜)

「陛下、不躾なお願いを致します。

これから私が、何を話しても、不敬罪に

とわないで、いただけますか?」


私は膨れ上がる二人の殺気を収める為に、

自分なりの返事を、アルマンド様に

返す事にした。


「フム、何を言うつもりかわからぬが、

私的な集まりだ。思う存分言うが良い。」


「有難う御座います。……では、

アルマンド様、よろしいでしょうか?」


私が泣くとでも思っていたのでしょうか?

アルマンド様も、失言した事は、

自覚している様でした。

私が何を言うのか、身構えているようです。


「アルマンド様、王子、王族という立場の貴方が、人を見た目、身分だけで判断するのは愚かな事です。

また、王子である貴方が、発言する言葉の

効力をわかっていますか?極論で言えば、

黒が白、白も黒になってしまいます。」


私の、アルマンド様への苦言が、

言い出したら、止まってくれません。


「王族ともなれば、発言する前に、発言した後の影響を

考えないといけません。

私は養女で、本当の侯爵令嬢ではありません。

では、アルマンド様は?

王子だから?王族だから?それが何か?」


「アルマンド様自身が偉い訳でも、

何でも無いでしょう?

平民の格好をして一人でいれば、

誰も貴方を王子様だなんて思わないわ。

王子だから何を言っても、やっても、

許されるなんて、思わないで。

自分がした行いは、自分に

返ってくるものと、思いなさい。」


「ぐっ……」


アルマンド様は、止まらない私の発言に、

黙って聞いているけど、握った両手が、

小刻みに震えていた……。


「アルマンド様に、甘い事しか言わない人は、

貴方自身を見ていない、貴方を利用して、

得しようと思っているだけよ。

掌で転がして、逆に利用してやるぐらい、

賢くなりなさい。愚かな王子なんて、

害悪でしか無いわ。」

(はぁ、一気に、言い放ってしまった。

アルマンド様は……顔を赤くして、うん、

プルプルしてるね……。あ、動き出した。)


「クッ、年下のくせに生意気な……」


怒ったアルマンド様が、私に掴みかかってきた。

前世で武道家だった母に、中学まで

武道を習わされていた。

高校受験を機に、止めていたけど、

咄嗟に体が動いていた。


掴みかかってきたアルマンド様に、

自然に右手が出て、左肘の辺りを掴み、

左手で上衣の襟を引き、

右足を軸に素早く回転すると、

バランスを崩したアルマンド様を、

左足を引っ掛けて投げ倒してしまった。

やっている最中に、(受け身出来ないよね?床、アブナイ!)

と、思って、襟を離さない様にしたから、

頭部の、床への直撃は避けられたと思う。


アルマンド様は、何が起きたかわからず、

義父母りょうしん義兄あに

口を開けてポカーンと、していた。


静まり返った室内の空気を破ったのは、

いつの間に入室されたのか、第一王子の

レオンハルト様だった。


「ブハッ!……くっくっくっ、あはははっ、

アル、アルマンド、お前、何やって……」


「兄上……」


「レオン兄様」


「ヴィク叔父上とジーク、それに

アストリッド様までいらっしゃる……

と、いうことは、君がジークの妹か!」


レオンハルト様は、笑いながら私を指さしていた。


「……リリフローラと申します。」

内心、冷や汗を垂らしながら、

アルマンド様から手を離した。

そして、何も無かった様に、

軽く片膝を折り、礼儀正しく挨拶をした。

(これで、アルマンド様を投げ倒したこと、

誤魔化されてくれないかな?)

切望しつつ、私はそっと顔を上げ、窺ってみた。


レオンハルト様は、愉悦に満ちた

表情かおで、私をジトっと見ていた。


「母上、アルにこの娘は駄目です。

勿体無い。私の花嫁にし……」


「「駄目だ!」」


「ぇえ〜、叔父上も、ジークも、

即答ですかぁ……酷いなぁ〜」


「レオンハルト、貴方……

本気なのですか?」


「ん?勿論本気ですよ、母上。冗談で、

求婚など、言い出したりしません!」


そう言うと、レオンハルト様は

私を抱き上げた。


「ね?私の伴侶になって……」


「わ、私まだ七歳にもなってましぇん!!」

(噛んだ……ぁぅ……)


「うん?へーき、君が大人に

なるの待つし……」


そう言って、レオンハルト様は、

私の髪の一房を取り、キスをした。


第一王子の言動に、国王陛下は、

顎髭を撫でながら、片眉を跳ね上げた。



「本気なのか?レオン……」


「ええ、父上。彼女を逃しては

いけないと、本能が告げているのです。」


「本能が告げる?はっ、何を

変態じみた事を」


「ジーク義兄様!」


私は助けを求める様に、義兄あにに向かって、手を伸ばした。


「逃がさないよ……」


そう言うと、レオンハルト様は、

私を子供抱きから、お姫様抱きに……

縦抱きから横抱きに、器用に抱き変えた。

そして私の顔に、自分の顔を近付け、

額と頬に、唇を落した。


私は羞恥で、顔に熱がこもるのを

感じていた。実際、その時の私は、

真っ赤な顔をしていた。


「こっんの、いい加減にしろ!」


怒ったジーク義兄様と、お義父様が、

私をレオンハルト様から引き離してくれた。


初めての謁見、初めての王族との対面、

初めてのお茶会、初めてのキス……

私の心の許容範囲を超えた出来事に、

クラクラしてきた……


「……お、母様、帰りたい……」


私の訴えに、お義母様も腹に据えかえたのか

レオンハルト様に、チクリとやっていた。


「レオンハルト殿下、子供相手だからと、

おふざけが過ぎましてよ。」



私は恥ずかしい事に、知恵熱の様な

熱を出してしまった。

レオンハルト様から奪い返した私を、

抱きかかえていたお義父様が異変に気付き、

私達家族は、城を後にした。


国王陛下が従兄弟だったとしても、

王族から私を守るように庇ってくれた、

義父母りょうしん義兄あに

私はこの時から、実の両親、兄と、

思う事に決めた……。それは、実の父親との

完全な決別でもあった。



隣国、カルディニアへの出立前に、レオンハルト様が

わたしに会いに来ても、面会謝絶、見舞い拒否、と、レオンハルト様は、父から追い払われていた。


王族相手に、それでいいのか?父よ……

って、父も王族なんだった。


 ジーク兄様達が出立する前日、

レオンハルト様から贈り物が届いた。

それは、紫の水晶を、海の色の様な

青い宝石いしで囲んだデザインの

ペンダントだった。


レオンハルト様から贈られた

ペンダントを見たお父様、ジーク兄様は

絶句していた。

お母様は両手で頬を押さえ、

独占欲が……とか、あらまぁ、とか呟きながら、

我が身の事の様に、照れていた。



 この世界、エリンジウムでは、

相手の色を持つ水晶を贈る事は、

未婚の男女にあっては、告白、求愛の

意味を持ち、家族にあっては、

親愛・守護の意味を持っていた。


わたしの周りを囲むレオン……



(レオンの奴……本気だというのか……?)

ジークフリートは、自分と同じ年齢のレオンハルトが、

妹とはいえ養女、しかもまだ、七歳にもなっていない幼女に、本気で求愛の水晶を贈るとは、予想もしていなかった……。





******





 次の日、隣国に向けて出立する、

ジーク兄様とレオンハルト様を、

両親と共に、王城までお見送りに行った。


見送る人の多さに圧倒されて、

私は二人に、近付け無いでいた。

両親からもはぐれてしまいそうな、

私の手を引いて、二人の近くまで

連れて行ってくれたのは、第二王子の、

アルマンド様だった。


私は、アルマンド様のおかげで、

ペンダントのお礼を、レオンハルト様に

直接言う事が出来た。


 無事の帰国と、健康と学業の成功を

祈って、私はジーク兄様の頬に

キスをした。

レオンハルト様も、私に頬を

突き出すようにしてキスを強請られた。


ウッ、と思って顔が強張ってしまったが、

ペンダントのお返しと、一年以上不在に

なるのだし、餞別だと思って、意を決して、

レオンハルト様の頬にも、キスをした。


「無事のお帰りを、お待ちしています。」


「うん。待ってて。」


そう言うと、レオンハルト様は、

私の頭を撫でて、お返しとばかりに、

私の頬にキスをした。


(クッ、油断してた……)


ジーク兄様が、すかさず

上塗りだ、とばかりに、

レオンハルト様がキスしたのと

同じ場所に、キスをしてくれた。


周囲から、黄色い声がしていたが

ジーク兄様との別れに、寂しさが

募って、それどころでは無かった。


私は、精霊の力を借りて、

状態異常解除の効力を持つ、

ピアスを二組、作製していた。

隣国での、お守りとして、

ジーク兄様と、心の平穏の為に、

レオンハルト様にも……


この世界、エリンジウムは、

ファンタジー世界ではあるけれど、

誰も彼もが魔法を使える訳ではない。

生活魔法レベルでも、使えるのは

古くからある貴族とか、限られている。


大国カルディニアで、魔法使いが

皆無という事は無いだろう……

中には魅了のスキルを持つ者が

いるかもしれない……


そこ!ネット小説の読みすぎとか、

ラノベの読みすぎとか、言わない!!


 私はじゃれあっている、

ジーク兄様とレオンハルト様に、

小袋に入れた、ピアスを手渡した。


「帰国するまで、身に着けて、

離さないでいて下さい。」 


ジーク兄様の瞳の、青い水晶のピアス……

レオンハルト様も同じ様な青の瞳なのは、

まぁ血がつながっているからね……

しょうが無いよね?



護衛の騎士達と、出立した二人の姿を、

私は見えなくなるまで、手を振って、

見送っていた。


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