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悪いが其方、グリモワールを預かってくれないか?

 でかい本を五千円の所を千円でいいと言われて無理矢理買わされそうになっている私を見かねたのかシオン君が、


「大きさ的に真帆様が持つには現実的ではありませんね」


 シオン君が本に手を当て咳ばらいを一つし、


 「<ビック ラ ポン!>」


 ボフンと煙に包まれ大きな本が高速のインター等で売っているような「なぞなぞの本」みたいな手のひらサイズになる――しかもご丁寧にチャームホルダー付きである。


「これなら真帆様のバッグにつけていても違和感がありませんね」


 なぜ私が「付ける」前提なのだろうか?


「あの……内容も読めないし変なものに千円も出したくないんですけど……」


 そこでレイが「ふふっ」と笑いながら「グリモワールも所詮この程度の認識か」と言いながら顎に手をあてて撫でる。


「まぁよい。余の買い物のついでだ。もう金は払ってある」


 あれ? レイってお金持ってるんだ。なんで今まで現物――宝石や貴金属しか出さなかったのだろうか……それとも物々交換したのだろうか?

 そんな事を思っているとレイがカチャリと私のバッグになぞなぞ本をつけてくる。


「まじないだ。きっと真帆を守ってくれる」

「その自信は一体どこから……」

「余の勘である」

「頼りになりそうにない勘ですね」


 私達の会話を聞いていた店員がクスリと笑いながら微笑ましく見てきていた。


「そ、それにしてもまさかミオンデパートにこんなとことがあるなんてね……社長の趣味とか?」

「遠からず……ですかね」

「今度友達と来てもいいですか?」

「…………入れるなら歓迎しますよ」


 ニヤリと笑う店員……次に来たときは改装していてこんな部屋は最初からなかったとかそういうオチがありそうな笑みである。




 部屋から出ると本棚が元通りになる。

 正直レイが扉を作動させた本がどれかも私にはわからなかった。

 レイが「良き買い物をした」と言いながらポケットに手を当てる。


「何か買ったの?」

「ああ、余には必要なものだ」

「ふーん」


 あまり聞かない方がよさそうだ。

 どうせ聞いても答えてくれそうにないが。


「これからどうしよう? レイの服は買ったし……あっ! シオン君の服とかかな?」

「僕には必要ありませんよ。なにせこれが私服ですから」


 そういいながら執事服をピシリと着込みネクタイをクイと締め上げる。


「うーん、もっとラフな私服とかいらない?」

「必要ありませんね。それに部屋着ならすでにもってます故」

「シオン君学校は?」

「学び舎……ですか? 必要ないのですが」

「レイは二十過ぎでしょうけどシオン君はまだ十五、六でしょう?」

「なっ! 私は既に二百――もごっ!」


 レイがシオン君の口にそっと手を当てる。


「ああ、シオンは確か十六だったとおもうぞ。そうだな?」

「殿下……そういう事にしときます」


 シオン君が「はぁ」と大きくため息を吐く。


「高校生か……私の家の近くには高校はないから都心かなぁ。公立高校に編入試験受けさせに行くかぁ」

「高校……確か義務教育ではないですよね?」

「ええ、でも教育は大事よ?」

「うむ、教育は大事だな。そしてシオンは余の身内――その「コウコウ」という学び舎の代金は私が払おう。それに必要なものもシオンに調べさせて買いに行かせよう」

「で、殿下?」

「この世界の知識を集めよ」

「はっ! 知識こそ我らの得意とする分野、僕にお任せを!」

「うむ、情報網を広げよ!」


 レイとシオン君が盛り上がってるところ申し訳ないが、高校で情報網を広げれるのはたかが知れてるがそれは言わないでおこう。


「それでは今日は帰るか」


 レイが「ふっ」と笑みを零す。

 私は腕時計を見ると既に十七時を回っていた。


「そうね、帰りに何か食べて帰りましょうか」


 私がそう言った途端鞄につけてあった「ぐりもわーる」とかいう小さな本が点滅する。

 中を見ると「お好み焼きに吉あり」と書かれてあった。

 占い関係の書物だったか……それにしても会話を聞いて反応した? いや、そんな非現実的なことはないと思うからシオン君のマジックだろう。

 それにしても英語ではない何語かわからない表紙に中身が日本語ってのもなんだかなぁ。


「それじゃ、シオン君の希望に応えてお好み焼きを食べに行きましょうか」

「えっ? 僕の希望ですか?」


 私は「わかってる」の意味を込めてウィンクする。

 すると「なにやってるですか?」と冷たい答えが返ってきた。

 解せぬ。




 近くのお好み焼き屋に移動した私達は適当に頼み食事を終え帰路につく。

 勘定を払う際に近くの商店街のガラガラのチケットを貰った。

 一回引ける分を貰ったので帰り道、駅に向かう途中なので引いて帰ることにする。


「ふむ、ガラガラというのは回して当たりを出せばいいのだな?」

「まぁティッシュばっかなんだけどね」

「それも当たりか?」

「残念賞――参加賞ね」

「ふむふむ」


 そんな会話をしているとガラガラのあるたどり着く。


「ほら、どっちがいく? 私は当たらないからパスで」

「それでは殿下――お願いします」

「ふむ。重責(じゅうせき)であるな」

「そこまで気を張らなくてもいいわよ。私も当たったことないし」


 レイがコキコキと指を鳴らし首も鳴らし始める――そこまで本気にならなくても……。


「ガラガラを一回頼む」


 券を店員に差し出し「はいっ、どうぞ」と言われ「うむ」と頷くレイ。

 私は当たりが何かを確認する――期待していないとはいえ一応……ねっ。


 一等……ハワイ旅行――海外旅行か~行きたいな。

 二等……四十二型大型テレビ――でかいけど置く部屋がないのよね。

 三等……電動自転車――田舎道でも楽そうだしこれは欲しいかも。

 四等……スパの家族券――三等との格差ぁ!

 五等……商店街千円引き引換券――商店街で買い物あんまりしな……コロッケ買うくらいか。

 あとはハズレのテッシュか。


 商店街の福引のガラガラなんてこんなものだろう。

 いや、ちょっと奮発しているといったほうがいいか。

 そう思っていると――、


 カランカランカラン!


 (かね)のいい響きが聞こえてくる。

 何事かと目を向けると店員が鐘を鳴らしている。


「えっ! もしかして当たった!?」

「大当たりぃ!」

「ま、まさか!」


 レイがこちらを向きニカリと笑う。


「やったぞ、真帆!」

「さすがは殿下です!」


 シオン君が大きく拍手喝采し、周りの注意を引いてしまう。

 でもいいだろうなんて言っても大当たりなのだから!


「大当たり、ガタイのいい兄ちゃん! 四等スパガーデン家族チケットだよ!」

「四等かよ!」


 私は盛大につっこんでしまった。

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