譲れないもの
春蘭「くっ!」
一刀「春蘭、甘寧なんかにまけんなよ!!!!
俺と戦うんだろ!?」
春蘭がひるみそうになったとき、一刀が後ろから声をかけた。
春蘭「(一刀!)」
その声に春蘭が力強さを取り戻した。
金属同士がぶつかりあう鈍い音が響いた。
甘寧「(対応された!?)」
春蘭が甘寧の攻撃に対応し、弾き返した。
後ろにいったん下がる甘寧。
甘寧「よもや・・、まだそんな力が残っていようとはな。」
春蘭「ふっ・・・、私にも負けられない理由があるからな。
それを思い出したまでよ。」
先程までの春蘭とは思えないほど、凛とした立ち振る舞いで甘寧に言い返す。
甘寧「ふん・・、次こそは・・・・決める!!」
春蘭「こい・・・! 甘寧!!」
甘寧が再び春蘭目掛け飛び込んだ。
春蘭「(脚にもらわないようにしていたのに・・・、喰らうとはなんと情けない・・・。
しかし絶対にこの戦いは負けれん!!)」
甘寧「ふぅぁっ!!」
甘寧が脚力を活かし、素早い動きで春蘭をかく乱しながら攻撃を仕掛けた。
春蘭「あぁぁぁぁぁっ!!」
が
その一歩先に春蘭の右足が顔にクリーンヒットした。
甘寧「っくぁ!!?」
右足は先ほど甘寧が鈴音で叩きつけた方だ。
その右足をまさか攻撃に使用されると思わず右側がら攻めていたのだが
逆にそれを読まれ、カウンターをもらってしまったのだった・・・・・
春蘭「だぁぁぁ!」
そのまま足の痛みを堪えながら、春蘭は刀を振り下ろした。
ドゴッ!!
甘寧「うぐぁっ!!?」
振り下ろした刀は甘寧の肩にクリーンヒットした。
カランッ
その衝撃に耐え切れず甘寧は鈴音を落としてしまった。
それを見逃さず春蘭が足元に転がった鈴音を蹴り飛ばした。
カコーーォォン
甘寧「ちぃっ!」
甘寧は鈴音に気を取られ春蘭から目線を逸らしてしまった。
その隙を見逃さずに春蘭が目の前で春蘭の一撃で座り込んでしまった甘寧の
首元へ七星牙狼を突きつけた。
春蘭「これで・・・・、終わり・・・・だな?」
勝利を確信した春蘭が甘寧に問うように聞いた。
甘寧「くっ・・・! 私の負けだ。」
覆せない状況に陥った甘寧は負けを認め、敗北を宣言した。
司会「おおおおおっとおおおお!!
甘寧選手有利と思われた試合でしたが夏候惇選手の逆転勝利となりましたあああ!」
司会のお約束の勝利アナウンスが会場中を包み込んだ。
一刀「よっしゃ!」
真桜「さっすが夏候惇将軍やぁ!」
沙和「さすがなの~!」
凪「お見事です、夏候惇将軍。」
季衣「春蘭様なら当然だよぉ~。」
琉流「春蘭様、かっこよかったです!」
秋蘭「一時は危うかったが・・・、さすがは姉者だ。」
魏から春蘭へ勝利のお祝いの言葉が贈られた。
雪蓮「あちゃぁ・・・、思春負けちゃったか。」
孫権「魏の・・・、底力のようなものを感じました。」
孫尚香「思春まけちゃったぁ・・・・。」
黄蓋「勝負は時の運、こればかりは仕方ないのう。」
周泰「私たちが思春さまの分まで闘うしかありません。」
呉からは仕方ないことだが負の雰囲気が流れていた。
春蘭「良い戦いだった。またよければいつか手合わせ願いたいな。」
刀を納めた春蘭が甘寧に手を差し伸べた。
甘寧「次は・・・勝たせてもらうぞ、夏候惇。」
春蘭「ええい、刀を交えた仲ではないか、春蘭と呼べ。私も貴様を思春と呼ばせてもらうがな。」
その言葉に少し驚いた甘寧だったが
甘寧「ふっ・・・、わかったよ・・、春蘭。」
そういって春蘭の手をとり、立ち上がった。
春蘭「じゃあな。」
甘寧「あぁ。」
そういうと二人は互いの応援席まで戻っていった・・・・
春蘭が魏の応援席に戻ると皆が声をかけた。
秋蘭「お疲れ様、姉者。」
春蘭「あぁ、ありがとう。」
季衣「さすが春蘭様!」
沙和「お疲れ様なの!」
真桜「おつかれさんです~。」
凪「見事な勝利でした、春蘭様。」
琉流「カッコよかったです、春蘭様!」
一刀「おつかれさん。春蘭。」
戦いに勝利し、皆の賞賛を浴びた春蘭だったが、なぜか不機嫌だった。
一刀「なんだ、勝ったのに不機嫌だな、春蘭。」
不思議に思った一刀が春蘭に不機嫌の理由を尋ねた。
その言葉を聞いた春蘭は何も言わず恨めしそうにジーッと一刀を見た。
一刀「どうした・・・・?」
さすがの一刀も春蘭のその行動が理解できなかった。
春蘭「な・・で・、・・い・・・んだ。」
一刀「んっ? なんていったんだ?」
春蘭の声がどもったり、小さかったせいも有り、春蘭の声がうまく聞き取れなかった一刀は
もう一度春蘭に聞いた。
春蘭「なんでみんなには撫でたり色々してるのに私にはないんだー!」
ウガァーッと雄叫びを上げて一刀に春蘭が詰め寄った。
おどいた一刀がタジタジと後ろに後ずさった。
一刀「な・・・、なんだ撫でたりして欲しかったのか・・・・?」
春蘭「そうだ!!」
自分の指を一刀の顔に向けながら、一刀の言葉に頷いた。
二人の距離はかなり近く、周りに人が、皆がいるのも忘れて
トラ化しかけている春蘭は更に一刀に詰め寄った。
一刀「そういうことならお安い御用なんだが・・・、皆見てるところだと
春蘭は嫌だとおもったんだが。」
春蘭「皆とは人目をはばかっておらんではないか! 私もお前となら例外ではないわ!」
色々爆弾発言を撒き散らしているが、そんなもの今の春蘭には関係なかった。
ただ、他の娘達のように、一刀に褒められたかったのだ。
春蘭がフーフーいいながら一刀を見上げていた。
一刀「ほんっと・・・・、かわいいくらいわがままな猫だな・・・・。」
そういうと一刀は春蘭の耳元にそっと掌を置いてグッと顔を自分の方へ近づけ
そのまま淡いキスを交わした。
時が止まったかのようにその場が凍りついた。
周りの皆の顔は真っ赤、顔は赤くないがさすがの秋蘭も驚かずにはいられなかった。
当の春蘭は何が起こったのか分からない顔で目の前にいる一刀を見た。
一刀「次も頑張れよ。」
周りを凍りつかせた一刀は気にするそぶりもみせずに言った。
いまおきた事に気づいた春蘭は真っ赤になってワナワナと震えだし・・・、そして・・・・
ドガーーーーン
グーパンチで思いっきり一刀を殴った。
とてつもない衝撃が一刀を襲う。 いろんな意味で。
ドッゴーン
ライナー線を描いて一刀が壁に衝突した。
一刀「いってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
壁にぶつかって前のめりにたおれこみそうになった時、一刀が痛みを堪え切れず叫んだ。
春蘭「ば・・・・ばかものぉ!!! だ・・・・だれが・・・く・・くくく・・くっ
くちすいなどしろといったぁ!!」
真っ赤な顔して春蘭が怒号を上げる。
一刀「お前がほめてほしいっていったんだろおおおがあああああ!!」
春蘭がして欲しいはずの行為をしたはずなのにぶっ飛ばされた一刀が反論した。
春蘭「ふ・・・、ふつうに撫でるだけでいいだろ!!」
春蘭がハズカシがりながら言った。
一刀「んなもんわかるかぁ~!!」
そんな終わりの無いいい合いが魏の応援席を包んだ・・・
華琳「ほんと・・・・、ばかばっかりね・・・・・。」
呆れた声で華琳が呟いた。
そういう華琳ではあったが
見事な装飾に包まれた華琳専用のイスの右側の肘置きが握りつぶされ
みるも無残な姿にかわりはてていた・・・。