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とある黄金の女王の現実的な世界



「やあ、タクミ」


 扉をあけると、彼女が居た。


「やあ、シャル」


 英語を喋り、まったくの別次元の世界で生きる彼女、

 だがネットを介せば、このように身近な空間を共有できるのだから、現代世界の万歳を感じる今日この頃。


「今日はどうしたの?」


「特になにも、ただ何となく、貴方に会いたくなったから来た、それじゃあ不足?」


 美術の粋を極めたような、複雑に視る場所によって絵柄の変わる、二次元的な美しさの超美少女の横顔。


「問題無いよ、それじゃあ入って」


 ゲーム世界、エクストラシャペルン、移住するには割高だった、自慢のオフィスのような空間だ。


「どうタクミ、最近の調子は?」


「君の方こそ、なにか良い事は無かったのかい?」


 ソファーに腰掛け、女王のような、剣のように研ぎ澄まされきった、尋常ではない気配を放つ彼女に問う。


「最近は、ハスラー艦隊と戦ってるわ」


「あの、物理で無双とか言う?」


「ええ、アウルベーンとか言う、ネット内第九新領域に侵攻してる、

 まあ自力で、跳ね返したみたいだけど、ね」


「へえ、シャルはどういう位置づけで戦ってるの?」


「独自の遊撃部隊みたいな感じよ、気楽にやっているわ」


 彼女の事は、ほとんど言伝で知らない自分だ、もっと知りたいと何時も思っているのだが。


「貴方の、生きている目的が知りたいわ、教えて」


「そりゃいきなり、唐突だね」


「ええ、最近はとみに思うの、私ってどうして生きているんだろう、ってね」


「観測者の打倒、そうなんだろう?」


 自分もそうだ、観測者という、世界のインフレを妨害する、歪みの枢軸を打倒するのが。


「そうよ、観測者は殲滅する、

 だけど、それが正しいか、絶対の確信があるのに、この胸のモヤモヤは、果たして何のかしらね?」


「現状の世界の全てが間違いに満ちているのだから、先の果ての世界に期待するしか、他に何もないよ」


 自分は端的な、世界の真理と確信するモノを言っている、そういう自覚がある。


「世界がインフレして、限り無く超越した果てに、何があるのかしら?」


「完成に至った、ありとあらゆる不要なモノが無くなった、幸福に満ちた世界だよ」


 それは自分の望みだ、そして、願望という自覚だって十二分にあった。


「そうね、そういう事なんでしょう」


 沈痛な、その存在そのものと掛け離れている、そう感じる。

 黄金の意志を持つはずの彼女は、この不完全な世界に何を思っているのか、不可思議さが溢れる。


「究極肥大の世界の、世界自体における、世界の無限超越、それしか縋るモノはない、はずだ、そうだろう?」


「ええ、私を満たす、私が望む、それは世界の形よ」


 お互いの意志が、その面では確実に疎通している事を、瞳の視線を絡めて再確認したのだろう。


「そして、この件に関して、今貴方のしている事を教えて頂戴」


「ああ、とある暗殺者を、派遣していてね」


「くんくん、確かに、あの女の、メサイアの図書館の、忌わしいクソ女の匂いがするわ、貴方からも、抱擁でもしたの?」


 殺意が臨界を越えて、突きだされる突刺に特化した仕込み太刀、黄金の輝きを、手を振って古代文字をスペリング。


「どうしたの?」


「貴方は、裏切り者だわ、所詮は色欲に狂ったクソ男だわ、私の事だって、所詮は良い女くらいにしか思ってない、そうでしょう?」


「まさか」


 言いながら、必殺の間合いで必殺の武装を展開する彼女。


「ゴルデミック、ゴールドパンドラ、完全最終起動、オープンユアマインド、展開」


「本気か?」


「ええ、やはり駄目だわ、貴方は、絶海化して、黄金の海で、永遠にわたしと戯れる事を決定する」


 本気である、ならば、こちらも本気で、果ての、世界の真理と信じる、エアタイピングで古代文字を擬似三次元上に光速展開する。


「打ち砕き果てろ!」「私のセルロイドと化せ!」


 それから少し。


「ごめんなさい、激情が抑えられない、特に貴方には、物凄く甘えてしまうのを、抑えられないの」


 黄金の人形のように、軽い彼女は、俺の腕の中で座って、頭を撫でられている。


「まあいいさ、それも込みで、俺はシャルと、友達に成ったのだからな」


「良い人、貴方って本当に優しい、いえ、私と並ぶくらい、純粋に研ぎ澄まされて、強い人だわ」


 人間関係である以上、嫉妬の思いは厄介だ、俺だって逆の立場なら、このくらい、いやこれ以上をするかもしれないのだ。


「もう、あの女と会わないで」


「会わないよ、俺が一番好きなのは、シャルロット、お前だけだよ」


 耳元で囁けば、満足を表現するような泣き声で、メロメロに成ったハートが瞳に浮かんでそうな、とろけたような表情。


「大好き」


 それから、少し、彼女は帰った、そして別の彼女がやってくる。

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