小話「グラン・バーズの販売促進会議」
「この間、グラン・バース開店以来初めての苦情がありました。さんざん悩んで赤いリボンのラッピングをしたお菓子を購入した。お客様からです」
キャシー社長が業務日誌を前に切り出した。
「えぇ! あの優柔不断のイケメンから?」
そのイケメンに赤いリボンのラッピングを勧めたメアリが言った。
「あら、でもあの方はその後、濃桃色のラッピングのお菓子を買っていったわよ。イケメンだったからよく覚えているわ」
ナンシーが続いた。
「そうよ。うまくいったから濃桃色を買いに来たと思ったのに」
カレンも同調した。
「いいえ。どうも空回ったみたい。『贈る相手がリボンの意味を知ってなきゃ意味がないだろう』って言われたわ」
キャシー社長は溜め息をついた。
「そうか、盲点だったわね。グランバーズのお菓子のリボンの色については、口コミでだいぶ周知されたと思ってたけど知らない人もいるのね」
メアリが悔しそうに呟いた。
「なにか、ほかに変わったことはなかったかしら」
キャシーはスタッフの面々を見渡した。
「あぁ、そういえば宰相様のご子息が濃桃色のラッピングをしたお菓子を10個ほど購入していかれました」
ナンシーが手を挙げて報告した。
「えっ、どういうこと。配りまくるのかしら」
「そっ、それはだめだわ。令嬢たちの間で争いが」
当店のお菓子が争いの火種になるなんて、キャシー社長は青ざめた。
「なに考えているのかしら。あの方は救国の迷い人様と御婚約されたんじゃなかったの」
メアリが興奮気味に目を吊り上げる。
場に緊張が走る中、カレンが手を挙げる。
「それについては、心配ないと思います。宰相家の使用人に友人がいるんですけど、ご子息はそのお菓子を全部迷い人様に差し上げたそうです」
「ええーっ! 全部」
皆が声を揃えた。
「そういえば、ご子息は購入の際にリボンの色の意味を可愛いカードに書くよう命じたので、記入してお菓子に添付しました」
ナンシーがのんびりとした口調で付け加えた。
「あぁ、それか! 社長! その手で行きましょう」
メアリが大声を出した。
「可愛いカードに意味を記入・・・・」
カレンが呟く。
「そうね。そうすれば相手も理解できるわけね。一枚のカードに5種類のリボンの色の意味を全部記載して添えるようにしましょう」
キャシー社長は強く頷いた。
「社長! 救国の迷い人様にお菓子をそれだけ贈るってことは、愛もあるんでしょうけど。彼女がこの店のお菓子を気に入ってるという可能性はないですかね」
メアリの瞳がキラリと光る。
「そうね。御用達ってことにしちゃおうか」
キャシー社長が同調した。
翌日、グラン・バーズの店頭には『救国の迷い人様もお気に入り! グラン・バーズのお菓子!』と記入されたポスターが張り出された。『希望者にはリボンの意味を記載した可愛いカードを添付致します』との文言も添えて。
読んで頂きありがとうございます。
小話はあまり悩まず、楽しく書けるので好きです。あと、4話ほど投稿したいと思っています。
よろしかったら、お付き合い願います。




