第2話
読んで頂きありがとうございます。
なんとか、書き続けられているのも皆さまのおかげです。
翌朝。
私はニナさんの手によって13歳という設定相応の衣装を着せられた。
「可愛いわよ。ミオリ」
「ホントになぁ、うちのハンナとそう変わらないようにみえるな」
2人とも失礼です。
「あんまり、手を加えなくてもいいから楽だわ」ってニナさんの追加の言葉に軽く傷つく。それにリッチーさん! ハンナは10歳でしょうが!
私が引きつった笑いを浮かべていると、扉が開いて皇子が入って来た。
「あぁ、ミオリ。可愛いね。本当に13歳くらいに見えるよ。さすがニナ。うまくやってくれたね」
皇子は私の周りをグルグル回って言った。
「いいえ、ほとんど手を加えておりません」
ニナさんがサラリと報告する。
「えっ」皇子の動きが止まった。
いいから、皇子。変な汗かいてるの隠さなくても大丈夫ですから。
それにしても、このピンクのフリフリのドレス重いし、頭の大きなリボンも嫌だなぁ。
確かに、私は小さいからこんな格好すると、とてももうすぐ16歳になるようには見えないんだよな。はぁーっ。絶対キールさんには見られたくない。
「さぁ、行こうか」
皇子が手を差し出した。迷わず握る。私を守ってくれるって言ってるんだから、頼らなくちゃ。まだ、殺されるわけにはいかない。
離宮脇につけられた馬車に乗り込むとニナさんとリッチーさんが見送ってくれた。2人とも心配そうな顔をしている。大丈夫、皇子と2人だもの無事に帰ってくるよ。私は笑顔で手を振った。けれど、馬車が走り出すと私の不安は大きくなった。また、国王のあの冷たい目に射抜かれるのかな。嫌だな。初めて対面した時の記憶が甦ってきて身体が震える。
皇子は外の景色を何の表情もなく眺めていた。離宮から出るのは3年ぶりらしい。父親を斃さなくちゃならないってどんな気持ちなんだろう。やっぱり、辛いのかな。日本の戦国時代みたいだな。私には全然理解できない・・・・。
お城の廊下を皇子に手を取られ進むと、多くの人が足を止めて私たちを見た。
驚きの表情を浮かべた人、冷たい表情の人、物珍しそうに見る人、怒ってるように見てる人本当にいろいろな顔に囲まれながら進んだ。
手が震えると皇子が強く握ってくれる。大丈夫、怖くない、怖くない。私は皇子の手を強く握り返して返事した。
皇子と私は国王の執務室に通された。陽光がさんさんと降りそそぐ明るい室内は暖かったけど、そこに集っている人々の視線は冷たい。
国王は相変わらずの表情、その横にはトレイア大神官がいる。隣のきれいな女の人は誰なんだろう。国王の後ろには宰相さんが控えている。目元とか、口元がキールさんによく似ている。宰相さんは私を見て驚いたようだったけど、そのあとなんとも形容しがたい目で皇子をみていた。
「父上、お久し振りです」
「ほう。お前がの禍つ人の力により気が触れた状態から戻ったというのは本当らしいな」
国王は皇子を探るような眼で見ている。
「はい。ここ数年、頭に靄がかかった状態でありましたが、彼女が離宮に来てからは徐々にそれが晴れ、今ではすっきりとしています」
皇子は私の方を向いて微笑んだ。私もにこやかに微笑み返したつもりだけど、絶対変な笑顔になってる自信がある。
「ふーむ。では、また私の政治について不満を述べるのだな」
国王は皮肉気に口角を上げた。
「いいえ、私は国政に関わるつもりはありません。彼女と離宮で穏やかに過ごしたいと考えています」
皇子が私の手を取り周囲の人々を見渡す。うぅ、恥ずかしい。
「姉上はトレイア大神官と結婚なさるとか。トレイア殿はしっかりと国を見据えられる方と存じます。姉上を十分に支えられるでしょう。後継は姉上でよろしいのでは」
「でも、あなたとその娘の間に男子が生まれればその子が後継となるのでしょう。この国は男子の直系を望んでいるもの。それまでは父様も国王として在位し続けるわ。わたしくの出番はないわね」
綺麗な女の人がよく響く声で言った。皇子のお姉さんだったんだ。どうりで綺麗なわけだ。スラリと背が高くて、金髪はきれいに巻かれてて、顔は薄化粧なのにとってもはっきりしてる。そして、紅い唇がとっても色っぽい。
「姉上、彼女はまだ13歳ですよ。まだまだ、子など生せませんよ」
皇子が苦笑する。彼は私を低年齢にすることで関係のないことを強調して、後継問題にも関わらないようにしてくれている。
「トリア村では15歳と聞いたが」
トレイア大神官が私に問う。そうだよね。調べてたもんね。
「どうしても働かなくちゃと思って、嘘をつきました。ほんとは13歳です」
できるだけ、幼い口調で返してみる。大神官が探るような目つきで私を眺める。直視に耐えられなくて俯いてしまった。お芝居は苦手です。
「ディーンを正気に戻した禍つ人か。この王家にとって吉となるのか凶となるのか。ディーンよ、儂はまだお前に期待している部分があるのだ。智、技、国民からの信、どれをとってもマリアンヌはお前には及ばない。トレイアがどれほど補えるのかも疑問だ。儂はな、アルツハイ国の貴石鉱山を手に入れたいのだ。ぜひ、お前に手伝ってもらいたい」
国王は皇子に戦争をさせるつもりなんだ。貴石鉱山って宝石が採れるのかな。今のラインドア王国には戦争なんてできる力がないって、むしろ攻められたら終わりだって皇子は言ってたのに。本当に国王はわかってないんだ。
「父上がそれほどまでにおっしゃるのなら、考えなくもありませんが、今はミオリと静かに離宮で過ごしたいのです。時間を下さい」
「まぁ、いいだろう。しかし、あまり猶予はやれんぞ。あぁ、それとお前が正気になった祝いでもするか。トラウトよ、適当に進めてくれ」
「はい」
宰相さんは無表情のまま返事した。
国王が退出すると、続いて皇女と大神官が私を睨むようにしてから部屋を出て行った。そのあまりの迫力に私の身体は凍り付いたように動けなくなってしまった。
「大丈夫?」
皇子が私の顔を覗き込む。その柔らかい声と表情で我に返った。
「えっ、はい。皇女様と大神官の目力にびっくりしちゃいました」
「あの2人は強いからねぇ。さて、どんな手で来るか」
皇子は私にだけ聞こえるように呟いた。
「ディーン様。祝いの会は3日後でよろしいですかな」
宰相さんが声かけてくる。3日後、スレイさんが戻ってくる頃かな。皇子は私にスレイさんを付けてくれるって言ってたからちょうどいいのかも。
「うん、悪いね。トラウト」
「いいえ、皇子が正気に戻られて喜ばしい限りです」
「会の規模は小さくていいからね。あまり人が多いと彼女が驚いてしまうから」
皇子は私のほうを向いて言う。えっ、私もそれに出るの? 驚いていると宰相さんと眼が合った。彼は私を見て、にっこりと笑いかけてくる。私も慌てて笑顔を返した。
「初めて見た時よりも幼くなってしまったようですが、可愛らしいお嬢さんですな。禍つ人などといった二つ名などふさわしくありませんな」
「そうだね。まぁ、幼く可愛くしとかないと色々と守れないんだよ。友人との約束もあるしね」
「そのご友人は大層幸せ者ですな」
「まぁ、色々苦労をかけてるし、これからもかけそうだしね」
皇子はクックッって笑ってる。それを見て宰相さんも口元を綻ばせた。
なんだか、とっても優しい空気が流れてる。宰相さんは、表立っては行動できないけど皇子の側なんだと理解できた。
今年はお世話になりました。
来年も頑張りますので宜しくお願いいたします。
よい年をお迎え下さい。




