閑話「金色亭の客人」
読んで頂きありがとうございます。
少しほのぼのがほしくて書いてしまいました。
久し振りのトリア村です。
金色亭に客人がやってきた。
「こんにちは」
あたしは、トリア村に一軒の宿屋兼居酒屋の扉を開けた。ここに来るのは1年ぶりだ。
「おぉマリー、久しぶりだな」
「おばちゃん!」
「リィナ、大きくなったね」
あたしは、10歳以上歳の離れた末弟の子どもの頭を撫でた。
「どうしたんですか。急に」
義妹のアンがお茶を手に現れる。
「いや、なに。急にトリア村が見たくなってね」
「町のほうはどうですか」
「まったくダメだね。国王が腐ってりゃ、領主も腐ってくるさ」
あたしは溜め息をついてお茶に口を付けた。
「おばちゃん、相変わらずだね。そんなことばっかり言ってると捕まるよ」
リィナが苦笑いしながらお菓子を出してくれる。
「そうなんだよ。この間ひどい目にあってね。でも、小さな天使が助けてくれたんだ。禍つ人って言われてる・・・・」
「ミオリに会ったの?! 元気だった! ひどい扱いされてなかった!」
リィナは禍つ人という言葉を出した途端、あたしの両腕を握って強く揺する。
んっ? 最近もこんなことがあったような。
「あの娘はミオリって言うのかい」
「そう! ここで働いてたんだよ」
そうかい、ここで暮らしていたのかい。いいところに匿われてたね。
あたしは、命を助けられた一部始終を語った。
いつの間にか周囲には村人と砦の隊員が数人集まっていた。禍つ人がひどい扱いを受けていないことを知ると、みんながみんな安堵のため息を吐いた。
大切にされていたんだね。あたしの心の中にポッと小さな灯がともった。
「その後を追って不審者みたいな若い男が・・・・」
話を続けようとすると
「隊長に、隊長に会ったんですね! 元気でしたか! やつれてませんでしたか」
砦の若い隊員が、あたしの両腕を握って強く揺する。
あぁ、もういい加減にしてほしいよ。腕が痣だらけになっちまう。あたしは苦笑いした。
「元気だったよ。あたしがミオリの話をしたら俄然食欲が湧いたみたいでもりもり食べてたね」
あたしはミオリを追っていた隊長の話をした。やはり周囲から安堵のため息が聞かれる。
あの男もみんなに慕われてるんだね。
迷い人のあの娘だけど、ここに居場所があって大切にしてくれる人達がいる。大事な人もいるようだ。
あたしの口元は自然に緩んだ。
「マリー、ありがとう。みんなあの二人を気にしていたんだ」
ダンが笑顔を浮かべる。
来てよかった。ミオリと砦の隊長を知るために来たけど、心配してたみんなの役に立てたようだね。
「で、マリー。あの二人はこれからどうなるんだい」
ダンがこっそり聞いてくる。あたしはにっこり笑ってダンに小声で答える。
「いろいろあるけど乗り越えて、これ以上ないくらい幸せに暮らすだろうよ。この国もよくなるしね」
「よく当たる占い師のマリーがそういうなら安心だ」
ダンは顔を綻ばせた。
「そんなこと私はとっくにお見通しですけどね」
金色亭の隅で昼食を摂っていたオレムが呟いた。




