第1話
読んで頂きありがとうございます。
うまく書けず悩んでばかりですが、頑張って続けたいと思います。
物語は第2章に入ります。
村から王都まで馬車で護送されている。
馬車の中は狭くて暗いし、窓は小さくて布がかけられていて、絶対に開けるなって言われた。禍つ人をできるだけ見せたくないんだろうな。
ラインドア王国では迷い人は「禍つ人」と呼ばれていて、国に厄災をもたらす者とされているってあの綺麗な神官に言われた。歴史書のなかに、王様を唆して戦争を起こさせたり、貴族に新しい武器の知識を与えて国に内乱を起こさせたり、王様にとりいって国を意のままに動かしたりした禍つ人の存在が記載されているらしい。そのため、近年では迷い人が発見されたら国の監視下に置かれたり、殺されたりしたって聞いた。
私には何の力も知識もないのに、国を滅ぼすなんてできるわけないのに。私、どうなっちゃうんだろう。殺されるのかな。もう、キールさんやおばさん、リィナ、隊員さんたちや村の人たちに会えないのかな。
キールさんに会いたい、会いたいよ。笑顔が見たい。大丈夫だよって言ってほしい。砦での最後の時みたいに、抱きしめて大事って言ってほしい。
村を出て2日、私の涙が涸れることはなかった。
馬車が止まった。
どこかの町に着いたんだろう。神官と神殿騎士たちは、町ごとに馬を変えて休みもほとんどとらないで王都を目指している。最短時間で到着したいみたい。それでも、王都までは7日かかるって聞いた。
あの綺麗な神官はこの隊列を指揮している。みんなトレイア大神官殿って呼んでる。偉い人なのかな。彼は、いつも私を金の瞳で鋭く睨んでくる。私に異変が起こるのを、なにか力を発揮するのを見逃すまいって思ってるのかな。
「休憩だ」
馬車の扉が開いてトレイア大神官が現れた。私はうつろに視線を向ける。
「宿で排泄を済ませ、その後食事だ」
トレイア大神官はそれだけ言うと冷たい視線を外して去っていく。排泄って・・・・。もう何度目かの言葉を聞いてため息がでる。私、一応女の子なんだけどな。
「さぁ、宿まで行くぞ」
私には、スレイって言う騎士が見張りについている。スレイさんも最初は冷たい視線を向けてきてたけど、今は少し違う。私にはなにもできないことがわかったんだと思う。
私は、頭に被るようにと渡されている黒い布を手にノロノロと立ち上がった。
宿のトイレを借りて、食欲はないけど少し食べて、馬車に戻る途中に老婆とすれ違った。
「あんたが禍つ人なら、王を殺してくれないかね」
すれ違いざまに、小さな声で囁かれる。思わず振り向いた。
「そこの年寄り、今何と言った」
トレイア大神官だ。私に伝えることでもあったのか、意外に近くに来ていたようだった。今の言葉聞かれた? おばあさんが大変。
「なにも、なにも言ってないです。私に大丈夫かって声をかけてくれただけです」
「お前には聞いていない。そこの年寄りだ」
トレイア大神官の冷たい声が響いて、場に緊張が走る。老婆は覚悟したように息をのんで一気に吐き出した。
「禍つ人に王を殺してくれと頼んだんだよ」
「なんだと」
「だって、そうじゃないか。あの王は愚かだ。あたしらから搾取ばかりして、贅沢三昧。町や村は荒れるばかりだ。今度は隣国に戦争をしかけるそうじゃないか。あたしたちから家族まで取っていくのかい」
老婆はトレイア大神官の顔を睨んで吐き捨てるように言った。大神官の瞳が怒りに染まっていく。
「不敬罪だ。町の広場に連行して殺せ。住民へのみせしめにもなるだろう」
神殿騎士はトレイア大神官の指示に従い、老婆の腕を掴み引きずりだす。痩せた老婆は軽々と引きずられていく。
「やめて、やめて」
私は止めようとするが騎士たちが止めてくれるわけがない。騎士の手に弾かれて私は何度も地面に叩きつけられた。その度に老婆は「嬢ちゃん、無理するな。あたしゃ、言いたいこと言えれば死んだって本望だよ」って言った。そんなわけない。そんなことで殺されていいわけない。
広場の中央に老婆は土下座をとらされ、神殿騎士が傍らで剣を構える。
「みな聞け。この老婆はあろうことか禍つ人に王の死を願った。その罪万死に値する。よって、ここで斬首の刑とする」
しんとした広場にトレイア大神官の声が響きわたる。どうすれば、どうすれば止められるの。
「あっ」
神殿騎士の剣が振り上げられた瞬間、私は老婆に覆いかぶさった。騎士の動きがとまる。
「禍つ人よ。なんのつもりだ」
トレイア大神官の静かな声が響く。
私は大神官の目を見据えた。不安や恐怖が伝わらなければいいと思いつつ言葉を紡ぐ。
「この人を殺すなら、私も死にます。そして、死の瞬間に王の死を願いましょう。私は禍つ人ですよね。でも未だ、私の力は把握されていません。私の行ったこと、思ったことが王に悪影響を及ぼす可能性は十分にありますよね」
私はいっぱいいっぱいな気持ちのまま、意地悪な笑顔を作ってみせた。でも、たぶん緊張ですごい変な顔になっていると思う。こんな子供だましが通じるとも思えないけども、禍つ人の力が不確定ってことを利用するしかない。大神官は怒りの表情のまま、剣を振り上げた騎士は困惑した表情のまま広場は静まりかえっている。
「禍つ人が王の死を願うのに切ることはできませんね。もし、本当に王に影響が及んだらトレイア大神官の責が問われましょう。町の人々の目もあります。このような老婆にかまうことはありません。先を急ぎましょう」
スレイさんだ。スレイさんは私の手を取りその場に立たせてくれた。トレイア大神官は、怒りの表情のまま無言で隊列のほうに戻っていった。
「ありがとう。スレイさん」
「命知らずにもほどがあるぞ」
スレイさんは真面目な顔で私の頭をぐりぐりと撫でた。
「嬢ちゃん、ありがとう」
老婆がゆっくりと立ち上がった。怪我はしていないみたい。よかった。
「無理しないで下さいね」
「あぁ、無茶しちゃだめだね。約束するよ。あんたも無事でいてくれよ。祈ってるからね」
「ありがとうございます」
私は老婆に礼を言って、スレイさんと馬車に戻った。




