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隊長さんと小さな迷い人  作者: らさ
第1章
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第1話

初投稿です。

拙い作品ですがよろしくお願いいたします。

 半年前、トリア村に保護された少女がいた。



「うん・・・」

 うっすら目を開くと吸い込まれそうにきれいな空色が見えた。

 思わず手を伸ばす。ぺタッ。

「?」

 意外な感触に目を見開くと。外国の男の人が、私の顔を覗き込んでいた。男の人は私の手が触れている頬をそのままに、じっと私を見つめている。

 私は驚いて、手を引き、寝かされていたベットから飛び降りた。


「隊長っ、この書類・・・って何してるんです! まさか、まさかこんな小さな女の子に手を! ぐっ」


 ドアを開けて入ってきた金髪の男の人が大声で叫ぶと、空色の眼の男の人はその人の頭に拳を落とした。


 私、どこにいるの。部屋のなかを見渡すと、ランプが灯っていた。

 ランプ? 電気はないの? なんだか、部屋とか建物のつくりとか、テレビで見る外国の古い時代のものみたい。ここはどこなの。


 塾、そう、塾の帰り道に、道が光って・・・。光に包まれて・・・それから・・・。よく憶えてない。外国に来ちゃったの?でも、この人たち日本語喋ってる。どうして。

 怖い、帰りたい! 家に帰りたいよ!


 思わず涙がこぼれる。そうしたら、もう我慢できなかった。大声を張り上げて泣いてしまっていた。

 男の人たちの慌てる顔を見ても、泣き止むことはできなかった。


 空色の眼の男の人がゆっくり近づいてきて、そっと頭を撫でてくれた。でも、私の不安はなくならない。男の人は私の体を引き寄せ、頭を撫で続けてくれる。男の人はとても大きくて、私の頭はちょうど胸のあたりまでしかなかった。


 トク、トク、トク、規則正しい心臓の音が聞こえる。私の嗚咽はやまない。


「俺、ヤールのおかみさん呼んできます」

 金髪の男の人は慌てて部屋から出て行った。


 トク、トク、トク、規則正しく聞こえる心臓の音。なんだか、だんだん落ち着いてくる。呼吸も楽になってきた。



    ☆




「隊長、ヤールのおかみさん連れてきました。」

 ドアが開いて、小太りの中年女性と金髪の男、副隊長のオレムが入ってきた。


「今また、眠ってしまったようだ。」

 ちょうど、俺が少女をベットに横にした時だった。


「隊長、この子、隣国の子じゃないですか? 森で倒れていたっていうし、隣の国からの行き倒れじゃないのかな」

 オレムは少女の顔を覗き込んで言った。


「いや、瞳の色が黒かった。この国にも、隣国にも・・・・この世界にはない色だ。」

 俺がため息混じりに返すと、

「禍つ人・・・・」

 オレムがポツリと呟いた。


「こんな小さな子がかい。悪い感じはちっともしないけどね」


 ヤールのおかみさんは、村に一つしかない宿屋兼居酒屋≪金色亭≫の女将さんだ。女将さんは、ベットで眠る少女の涙を拭った。


「で、隊長さんはこの子をどうするつもりなんだい」

「王都に連れていかれたらどうなるんだろう」


 女将さんとオレムが不安気に聞いてくる。

 俺は答えられない。国の機関である国境警備隊の隊長としては、国に報告しなければならないのだろうが。少女のひどく混乱した不安な様子を見ると、判断がつきかねた。


「何歳くらいなんでしょうね」

 オレムが誰に聞くともなく呟いた。

「12~13歳くらいなんじゃないの」

 女将さんは暫く黙り込んだあと、口を開いた。


「隊長さん、この子を家で預かってもいいかな。とても禍つ人には見えないし。いつまでも、砦に置いておくわけにはいかないだろ」

「女将さん、とてもありがたい申し出だが、様子をみて王都に報告するべ・・・・」

 俺が続けようとすると、

「何言ってんだい。王都になんか連れていかれたら、あの王に殺されちまうよ。ここは辺境の地だ。この子を隠すには、うってつけじゃないか」

「そうですよ隊長。こんな小さな子を見殺しになんかできませんよ。女将さんの申し出を受けましょうよ」

 オレムも女将さんに同調した。


 しかし、いつまで匿えるか。禍つ人の来訪を察知した神官たちは、自分たちの威信にかけて血眼で彼女を探すだろう。

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