1:死線
冷たい北風があたしの顔に吹き付ける。
今日も”死線”が見える。
兄貴が死んで5年。あたしは高校生になった。
普通に友達も居るし、部活だってやってる。
そんなあたしが他人とひとつだけ違う事。
”死線”が見えること。
兄貴が死んだ次の日、あたしの世界が変わった。
そこらじゅうに落書きのような黒い線。
ベッドに、TVに、ぬいぐるみにも・・・。
あたしは一番近くにあったぬいぐるみを手にとって、線をなぞった。
すると・・・
なぞった線に沿ってぬいぐるみが二つに切れた。
まるで刃物に切られたように。
あたしは次々に物をなぞっていった。
鉛筆だって、下敷きだって・・・鉄製のものまで壊れていく。
ガチャッ
「沙羅、あなた何してるの?」
物音を聞きつけて母さんが部屋に入ってきた。
母さんの目に映るのは・・・壊れたものにかこまれてるあたし。
「沙羅!!」
母さんは悲鳴に近い声を上げた。
「母さん・・・この線、何?」
「え?」
「落書きしたみたいに・・・そこらじゅうにあるじゃん。
この線なぞったらなんでも切れたんだよ。」
母さんは、青ざめた。
「線なんて・・・何も・・・ないわよ・・・。」
泣き出す母さん。
あたしが変になってしまったのかと。
なぜ自分の生む子は普通じゃないのかと。
兄貴が死んだだけでも壊れかけていた母さんは本当にボロボロだった。
あたしは、そんな母さんを見ている事はできなかった。
「なーんちゃって!!うそだよ、母さん。」
そう言ってあたしが笑うと、馬鹿な事はやめなさいと安心したように言って母さんは部屋から出て行った。
あたしはそれを”死線”と読んでだれにも教えなかった。
そう、誰にも・・・
次からちゃんと本編となります(たぶん←
ちゃんと主人公と要人物からみます(たぶん←