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ヒーローライクヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
13話:ウェスタンカニバリズム
72/95

その7・ヒールヒーロー

[クロノ]

信者「だああああ‼︎」

クロノ「せぇあ‼︎」

信者がナイフで突いてくるのを避け、腹に蹴りを入れる。

殺さないように手加減をしたが、かなり強めに蹴ったので体が大きく吹き飛ぶ。

信者「キュリー様の為に‼︎」

クロノ「しつこい‼︎」

ナタを振り回す手を掴み、腹に膝蹴りを入れる。

力が緩んだところでナタを奪い、遠くに投げ捨てる。

クロノ「はぁ…はぁ……あぁ、くそっ‼︎」

予想外に疲れる。

孤独に戦う兵士というのは、こんなにも疲れるものなのか。

クロノ「エリーさんと戦ってる時の方がマシかなこりゃ。」

ラガズ「どうする?投降するというのなら、生かしてやっても良いぞ?」

クロノ「却下。」

ラガズ「では死ぬしかない。」

後ろから信者の1人に羽交い締めにされる。

信者「うああああああ‼︎」

クロノ「くっそ‼︎離せ‼︎」

信者「死ねええええ‼︎」

前からナイフを構えて信者が走ってくる。

(ちぃ‼︎)

後ろの信者の足を思いきり踏んづける。

痛みで若干拘束が緩んだ隙に振りほどき、後ろの信者の腕を引っ張って背負い投げをする。

前からナイフを持って突っ込んできた信者の頭に投げた信者の体が当たり、同時に2人を倒す。

クロノ「はぁ…はぁ…」

周りを見渡す。

足元で苦しんでいる声が聞こえてきた。

下を見ると、先ほど投げた信者が口から血を流して苦しんでいた。

信者「がぁっ…ぁ……ぁ…」

(なんなんだ…?)

もう1人倒れている信者の方を見ると、手に持っていたはずのナイフが無いことに気づいた。

(まさか…)

苦しんでいる信者の背中を見ると、ナイフがかなり奥の方まで刺さっていた。

信者「このやろう‼︎」

1人の信者がナイフを持って走ってきた。

信者「よくも…よくもナリーを‼︎俺の大事な友人を‼︎」

クロノ「ゆうじ…くそっ‼︎」

振り下ろしたナイフを避け、頭に回し蹴りを入れる。

一度倒れたが、執念からかまた立ち上がり、更に斬りかかってくる。

信者「許さん‼︎許さん‼︎‼︎」

クロノ「俺は悪くねぇ‼︎俺は投げただけで…」

信者「うおあああああああああ‼︎‼︎」

ナイフをしつこく振り回してくる。

(くそっ、どうすれば…)

『やらなきゃ収まらんぞ。』

(だよな。それしかないよな!)

誰かの声に従い、男の鳩尾を蹴る。

膝をついた男の顏を回し蹴りで蹴り抜く。

男の首がゴキッと嫌な音を立てて、倒れた。

(あれっ?今の声誰の声だ?)

男の首が明らかに曲がってはいけない方向に曲がっていた。

(なにこれ。どうなってんの?)

静まり返った信者の集団から声が聞こえてくる。

「人殺し…」

「あんな酷いことを…」

「ナリー…カルロフ…」

クロノ「あ、あんたらが俺を殺しにくるから‼︎だから…」

『だからなんだ?そんなことよりも、殺さなきゃ殺されるだけだぞ?』

また声が聞こえてきた。

どことなく聞き覚えのある声で。

(今の声なんだよ…)

『この町を救ってヒーローになりたいなら、なんとかしなきゃいかんよなぁ?こいつら全員悪者、あるいはそれに手を貸す悪者なんだからさ。』

(だからなんなんだよ‼︎その声‼︎)

『どうする?』

(あぁもう‼︎ちくしょう‼︎)

信者達が自分を見る。

みんな手に持った武器を強く握っている。

『覚悟しなきゃいかんよなぁ?ヒーローになるんならさ。』

クロノ「あぁ、そうかよ…。覚悟しなきゃいかんかよ……ならしてやるよ…」

男のナイフを取り、もう1本ナリーと呼ばれていた女の背中に刺さっていたナイフを抜く。

左手のナイフは逆手に持つ。

クロノ「来いよ…片っ端から…‼︎」

信者達が武器を構え突進してくる。

振り下ろされた剣を右手のナイフで抑え、左手のナイフで首を斬る。

もしくは、突っ込んでくる前の信者の方に突っ込んでいき、魔力を込めた足で吹き飛ばす。

壁に強烈にぶつけられた信者達は、運が良いやつは骨が砕ける程度で済んでいる。

体から溢れてくる魔力がナイフを覆い、ナイフの刀身を伸ばすように、光が伸びる。

横に薙ぐと、光に触れた部分が真っ二つになり、大量の信者達を倒す。




何百回振り回しただろうか。

立っている者は自分だけになっていたのに、ナイフを振り回し続けていた。

ラガズはもはや座り込み、怯えていた。

クロノ「おい、さっきの声。聞こえてるかよ…」

返事は無い。

クロノ「なんでこんなに人たくさん殺してるのに、罪悪感が湧いてこないんだよ…」

返事は無い。

クロノ「なんで…くそっ…」

ラガズの方に向かう。

ラガズ「ふふふふははは‼︎やってしまったなぁ‼︎おい‼︎」

クロノ「うっさいなぁ、ホントに。」

ラガズ「罪の無い者たちをこんなに殺して…正義どころか貴様は極悪人だぞ‼︎」

クロノ「うっさいって言ってんでしょ。」

ラガズ「くくくっ、英雄になり損ねたんじゃないか?」

クロノ「はぁ…いや、でもあれだ…こういうのもアリなんじゃないか?良いことやって人を助けるような英雄とかヒーローってのはさ、ジェスやハゼットさんのような聖人に任せてさ。こうやって悪いことやって結果的に人を救うようなさ、ダークヒーローっていうの?悪役ヒールみたいなヒーローになってやろうかってさ。」

ラガズ「悪役みたいなヒーローだと?」

クロノ「そ。もうそうなるしかないじゃん?後戻りできないんだし。…そうだ、ずっとどうしようか悩んでた二つ名良いの思いついたかも。悪役のような英雄って意味で『ヒールヒーロー』ってのはどうだろ。ちょっと文法おかしいけど。でも言いやすいし良いんじゃない?」

ラガズ「貴様を喜んで見るやつはいないぞ…?」

クロノ「ヒールだもん。仕方ないじゃん。そんなことよりも…あんたをどうしてやろうか…」

ラガズ「ひぃ‼︎」

クロノ「ナイフ使うのも飽きたし、直接いたぶるのもありか…」

ラガズ「助けてくれぇ‼︎」

立ち上がり、自分が入ってきた扉とは反対にあった扉を開けて出て行く。

クロノ「そういえばキュリー様の姿見とかなくちゃ。」


扉を開け、先に進む。

一本道がずっと続く。

やがて扉の前に着いた。

扉に耳をそばだてて、中の音を聞く。

男と女が話しているようだ。

ラガズ「キュリー様、お助けください‼︎」

女「なるほど…つまり、じきにそのクロノという男がここに来るということか?」

ラガズ「へっ?」

女「そんなやつが貴様が逃げるのをただ黙って見つめて帰っていくと思うか?既にその扉の向こうにいるかもしれんというのに?私に危険を連れてきたと?」

ラガズ「そ、そんなつもりは…キュリー様なら奴を殺せるだろうと‼︎」

女「あぁ、できるとも。できるともさ。だが、私を危険な目に合わせていることには変わりはないのだぞ?ん?」

ラガズ「で、ですが…」

女「もういい。貴様にはうんざりだ。まぁ、そろそろこの宗教ごっこにも飽きてきた頃だし、丁度良い頃合いだったかな。貴様ももう用済みだ。」

ラガズ「な、何を…」

女「いやしかし、貴様には随分と助けられた。貴様の世界の覇権を握る…だったか?その野望を叶える為に放浪していた私を助けてもらった恩返しをしてやったが、貴様の良いところといえば、人を集める力と夜の営みが上手いくらいだったかの?貴様に体を貸すのもなんだかんだ楽しみではあったが、本当に残念で仕方ない。でもまぁ、野望も夜も、どちらも十分堪能したろう?」

ラガズ「た、たすけむがぁ‼︎」

女「あぁ、もう一つ良いところがあったな。貴様の血は人間の中でもかなり美味い部類に入る。その点だけは、割と本気で讃えてやってもよいくらいだ。」

ラガズ「んーー‼︎んー‼︎‼︎」

中でラガズがナニかされているようだが、次第に何も聞こえなくなる。

女「やはり味は最高だな。鮮度がもう少し良ければ生かしてやっても良かったかもしれんなぁ…。なぁ?」

誰かに問いかけているようだ。

女「そこにいるのは分かってるぞ?入ってきたらどうだ?」

(あぁ、俺のことだったのか。)

扉を開けて中に入る。

女性が1人立っていた。

側にはラガズのような何かが倒れていた。

女「貴様がクロノとか言ったか…。私はキュリー・ハル・ルーンフェル。」

クロノ「なんつーか、只者じゃないって感じですね。入らない方が良かった?」

キュリー「死にたくない、というのならその方が良かったのだろうが、ここまで来たのならどのみち生かして帰すつもりはないぞ?」

クロノ「ですよねー。それで、あんた何者よ?」

キュリー「そうだな。今の代の1つの前の魔王だった。」

クロノ「魔王?マジで?」

キュリー「あぁ。2,3百年ほど前に封印されてしまったが、その封印が解かれてな。力を失っていたから1度人間界に逃げてどうしようかと彷徨っていたらこの男に会ったのだ。そして、私がこいつの野望に協力をするから私にも協力しろと持ちかけたのだ。」

クロノ「それが生贄事件ってやつ?悪魔を倒して自分がその生贄を横取り?」

キュリー「いや、悪魔も私だ。私がこの町の救世主になることで、生贄を手に入れやすくしたのさ。」

クロノ「洗脳は?あんたの仕業?」

キュリー「あぁ。教会の中に洗脳をする為の特殊な魔力を仕掛けていてな。中に入る度に洗脳がかけられるようにしていたのだが、貴様には効かなかったとは。なかなか面白いじゃないか。」

クロノ「それで俺はどうすればいいの?あんたを退治した方がいい?」

キュリー「無理だな。」

油断していたわけではなく、ただ単に目が乾いたから瞬きをした瞬間、いつの間にか至近距離まで来ていた。

キュリー「貴様の血は随分と美味そうじゃないか。」

体を優しく抱き寄せる。

自分の胸にキュリーの豊満な体が押し当てられ…じゃない。首元に痛みが走る。

だが痛みはすぐに気持ち良さへと変わっていく。

クロノ「っつあ‼︎」

キュリーの腹を殴り、無理やり引き剥がす。

クロノ「くぅ…くっそ…」

キュリー「………」

キュリーが自分の口に何度か触れたり離したりを繰り返している。

クロノ「俺の血そんなに不味かった?なら逃がしてくれると…」

キュリー「なんだこれは…」

キュリーがこちらを向く。

また高速で移動して、至近距離まで近づくが、今度は抱きつくのではなく、肩を押さえて自分を前後に激しく揺らしてくる。

キュリー「お前はいったい何者なんだ⁉︎なんだこの記憶は⁉︎」

クロノ「なん、の‼︎話、だ⁉︎」

キュリー「味が良いだけではない…こんな見たことない景色…こんなところではなんだ!ぜひ私の家で続きをしようではないか‼︎ふふふふはははははは‼︎」

足元に黒い魔法陣が出現する。

クロノ「ちょっ‼︎何する気⁉︎」

キュリー「初めは気持ち悪いかもしれないが、じきに慣れる‼︎さぁ、行くぞ‼︎こんな人間は初めてだ‼︎ははははははは‼︎」

顔を掴まれ、無理やり魔法陣の中に押し込まれる。

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