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ヒーローライクヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
13話:ウェスタンカニバリズム
70/95

その5・信じて

[クロノ]

男「いやー生き返ったぜ‼︎あんがとさん‼︎」

路地裏で倒れていた男を担いで近くの料理屋に入り、2,3個程の料理を奢った。

クロノ「そりゃ良かったよ。そんで、えーとあんたは…?」

男「おっと名乗ってなかったな。俺はジェスティー・ロック。あちこち旅しながら傭兵をやっている。ジェスと呼んでくれ。二つ名はラピッドイーグル。自分で名乗ってるんだがな。」

黒色を基準にした足まで丈のある大きなコートに黒い髪、いかにも兄貴というような雰囲気の男だ。

クロノ「ジェス、ね。俺はカミヅキ・クロノ。それで、なんであんなところで倒れてたんだ?」

ジェス「話は長くなる…。俺はとある筋からある情報を聞いたんだ。それは身の毛もよだつ程恐ろしい情報で俺は」

クロノ「ぶっちゃけて言えば?」

ジェス「飯食う金も無くて彷徨ってたら倒れてた。」

あーあ。

ジェス「仕方ないだろ‼︎一個前の町もこの町も誰も依頼出してくんないんだよ‼︎」

机をバン!と叩いて泣き崩れる。

いちいちリアクションが大きい。

クロノ「傭兵ってのは儲からないの?」

ジェス「依頼があるときはそりゃ儲かるが、無いときは全然だな。」

クロノ「大変な職業だな。」

ジェス「はっ!こんなの無職と変わりゃしねぇよ。そういうあんたも武器も持ってるみたいだけど、傭兵じゃないのか?」

椅子の横に置いた二本の剣を指差して言う。

クロノ「俺はギルドに所属してんの。アリアンテって町知ってる?」

ジェス「ギルドってのは知ってるが、町の名前は知らないな。その町にもギルドがあるのか。ここにはなんかの依頼か何かか?」

クロノ「いや、ギルドの人手が足りないからこの町で誰か来てくれる人はいないかなって。あんたは?入ってみる気ない?」

ジェス「悪いが、お断りさせてもらおうかな。」

クロノ「なんでさ?」

ジェス「俺はただ意味も無く町と町をぶらついて傭兵みたいなことしてるわけじゃないんだ。今日みたいに飢え死にしかけても、どうしてもやらなきゃいけないことがあるんでね。」

クロノ「そ。それなら仕方ないな。」

ジェス「しかしなんだ。お前1人でここに来たのか?」

クロノ「いや、ギルドの仲間と一緒だよ。」

ジェス「へー、そのお仲間さんは?」

クロノ「今キュリー教の教会に行ってる。」

ジェス「キュリー教ね。実は俺がとある筋から聞いた情報ってのもそのキュリー教のことなんだよ。」

クロノ「へー、どんな?」

ジェス「ちょっと耳貸せ。」

ジェスが小声で言う。

ジェス「なんでも…ここの宗教は洗脳をして信者を増やしてるんだとか…」

クロノ「やっぱりか。」

ジェス「なに、知ってたの?」

クロノ「知ってたってゆーか、俺の仲間も洗脳されてるかもしれないんだ。」

ジェス「おいおい、なんだよその笑い事じゃない事態。あと、こんな情報もあんだけどよ…」

また耳を貸す。

ジェス「ここ最近この辺で起きてる不可解な殺人の被害者に共通してるのが、信者じゃないってことだ。」

クロノ「全員?」

ジェス「全員。何年も続いてきていた生贄騒ぎのことだ。その被害者の全てが信者じゃないどころかキュリー教をよく思ってないやつらだ。キュリー様ってのがこの町に来た前は知らんがな。」

昨日あったことを説明する。


ジェス「なるほど…。そんな事が…」

クロノ「さて、俺はそろそろ行くとするかね。」

ジェス「どこにだ?」

クロノ「教会にだよ。」

ジェス「なら俺もついて行こうか?」

クロノ「いや、仲間の迎えに行くだけだからいいよ。それじゃな。」

ジェスの分の代金を机に置いて店を出る。


教会につき、中に入る。

修道士に武器を預けて、聖堂に入る。

やはり大きな聖堂だ。

中を見渡しても、エリーの姿が見当たらない。

(入れ違いで外に出たのか…?)

近くにいた修道士にエリーのことを聞いてみる。

修道士「その方なら司祭様と一緒に奥の方へ行かれましたが…」

クロノ「奥?」

修道士が指を差した方には扉があった。

修道士「あそこから、例えば修道士達が着替えをしたりだとか、いわゆる教会の裏というやつですか。それに入ることができるのですが、修道士以外の立ち入りは禁止されておりまして…」

教会の内部か…

クロノ「…友人に会いたいんですが、中に入ってもいいでしょうか?」

修道士「えーと、私にはどうにも…。司教様に…」

男「構わないさ。」

その扉から修道士の上位互換みたいな服を着た中年らしい男が出てきた。

修道士「司教様‼︎」

男「初めまして。ラガズ・ユーリスと申します。このキュリー教で司教をしております。」

行儀よく礼をする。

クロノ「カミヅキ・クロノです…。」

ラガズ「こちらへどうぞ。私が案内します。」

ラガズの案内で、さっき話していた扉をくぐり、階段を降りる。


クロノ「エリーさんはどこに?」

ラガズ「応接室におられます。」

どんどんと奥に進んでいく。

ラガズ「クロノさんには何か信じられるものなどはありますか?」

クロノ「ないですし、そもそも何かを信じる気もないですかね。」

ラガズ「おや、それは寂しいですね。」

クロノ「寂しいことはないですよ。これで満足してますから。何か信じたいけど信じられるものが見当たらない時には、宗教なんかはとても心強く感じるものですけど、俺は特にそういうことは感じていないので、無宗教でも生きていけられます。」

ラガズ「はっはっは。強いですな。」

クロノ「強かないですよ。ただの強がりです。まぁ、宗教ってのが苦手ってのが一番大きいんですけどね。」

ラガズ「さぁ、着きましたよ。ここです。」

ラガズが扉を開ける。


入ると、とても広い部屋に出た。

ちょっとした会場というか、何百人入れるんだってくらいの大きさだ。

どう見ても応接室には見えない。

部屋の中心に、エリーがポツンと立っていた。

クロノ「エリーさん?」

ふと、足元の影が大きくなっているのに気づく。

上を見ると、男がナイフを持って飛び降りてきていた。

クロノ「っつあ‼︎」

向けられたナイフを転がって避ける。

すると色んなところからぞろぞろと入り口にいた修道士と同じ服を着た信者達が現れてくる。

老若男女を問わず、色んな人達がいる。

クロノ「なんなの、これ?」

ラガズ「邪魔な芽は早めに摘んだ方が良いかと思ってね。本当は教団に取り込もうと思ったのだが、君だけ上手くいかなかったようで、仕方なくこうやって無理矢理な手段を取らせてもらうことにしたよ。」

クロノ「怪しいなと思ってたら…こんな暴力的な集団だったとはね。なんか企んでることでもあるの?」

ラガズ「あぁ。色々あるが、まずはこの町の政治の実権を握ることかな。」

クロノ「キュリー様ってのはどうなってんだよ?そいつは実在してんだろ?」

ラガズ「あぁ、してるとも。」

クロノ「もしかして、そいつが指示してるとか?」

ラガズ「いいや、キュリー様には手伝って頂いてるのさ。キュリー様の夢の達成を手伝う代わりにね。」

クロノ「夢ねぇ。その為にこんなくだらんことしやがっ…」

エリー「クロノさん。」

後ろにいたエリーに呼びかけられる。後ろをふり向こうとすると、自分の首に鎌が向けられているのに気付いた。

腕を引いたら首が真っ二つになるような位置だ。

クロノ「エリーさん?」

エリー「キュリー様を侮辱するのはクロノさんでも許しませんよ?」

クロノ「………」

ラガズ「エリーはもう立派な信者になったさ。君にも洗脳が上手くいってくれれば、うちの信者にしてやれたんだがねぇ。」

めんどくさいことしやがって…

クロノ「エリーさん…」

エリー「キュリー様は心を操る神です。私たちの心を誰よりも知っておられるのですよ。キュリー様なら、私たちをお救いくださるのです。今私の心にあいてしまった穴も埋めてくださります。」

クロノ「キュリー様しか信じないってわけじゃないでしょ?」

エリー「…?」

クロノ「あんたの心の中を1番知ってるのはハゼットさんだと思うけどね。」

エリー「………」

クロノ「何があったかはまだ聞いてないけど、ハゼットさんに助けられたんでしょ?昔それはもうトラウマレベルの事件があったって。」

ラガズ「エリー、その異教徒の話を聞くんじゃない‼︎」

クロノ「あんたは黙ってろ‼︎」

エリー「………」

クロノ「そんなハゼットさん捨てて人殺しの宗教に入ろうって?ハゼットさんは人殺しってのはあんま好かない人だったはずだけど。」

エリー「…人殺し…?」

クロノ「さっき俺のこと殺そうとしたのもそうだし、例の生贄騒ぎ、被害者達はキュリー様を良く思ってないらしいじゃん?悪くもない邪魔者殺して自分らの安全を維持しようっておかしいと思わない?」

エリー「…でも…」

クロノ「あんたはハゼットさんのこと好きなんだろ?それを裏切んの?ハゼットさんもあんたのこと好きなんだぞ?俺にエリーさん紹介する時、ドヤ顔で俺の恋人だって言ってきやがるくらいだぞ?」

エリー「…私には…キュリー様が…」

エリーの目から涙が溢れてきた。

クロノ「ハゼットさんは大事な人だって言ってたろ?」

エリー「…私の心に空いた穴を塞いでくれるのは…キュリー様しかいません…きっと塞ぎ方も…キュリー様が…」

クロノ「今のあんたはハゼットさんを失ってる状態だ。その穴はハゼットさんなんじゃないのか?」

エリー「……私……私……分からないです…」

ラガズ「エリー‼︎」

エリーが首にかけた大鎌を持ち上げる。

エリー「うぅ…ぅあ…ぁぁ…」

持ち上げたまま鎌を降ろさない。

クロノ「戻ろう。ハゼットさんの所に。フレアもアクアも待ってる。ガイアさんだって待ってるし、レオだって退屈してるさ。」

エリーが鎌を振り下ろす。

クロノ「っぬあ‼︎」

ぎりぎり避ける。

エリー「ぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

クロノ「あらーこれは頭の中でキュリーとハゼットのことで考えが争いあってキャパオーバー中かな?それなら…」

拳を構える。

クロノ「来い、エリー。一旦発散しよう。頭の中のあれこれを全部吐き出せ。それからもう一度考えよう。自分の信じたいことを。」

エリー「わた、わ、私、は…キュリー…ロー、ぁぁあ…ハゼットさ…あぁぁぅぅ…」

鎌をよろよろと持ち上げる。

光のない目で、いやそもそも目としての役割を果たしてるのかすら怪しいレベルで光のなさすぎる目で自分を見る。

エリー「クロノ…さん…」

クロノ「俺のことも大事だって言ってくれましたよね…」

エリー「だい…じ…」

クロノ「俺もエリーさんが大好きです…だから…」


クロノ「本気で殴りますんで、俺を信じて本気で殺しに来てください。」

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