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ヒーローライクヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
11話:囚われのお姫様
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その1・作戦会議

[クロノ]

フレア「…という感じでした。」

イクツキでの事件の後、怪我の治療の為に3週間イクツキに滞在、そして戻ってきた。

帰ってきたときには既にハゼットさんもドラゴン討伐の依頼を終わらせて戻ってきていた。

ハゼット「なるほど…。それで、シーラちゃんがウチに入りたいと…。」

シーラ「だめでしょうか…?」

ハゼット「ダメなことはない。むしろ大歓迎だ。信用のできる情報屋が欲しかったからな。入団を認めよう。」

シーラ「ありがとうございます!」

ハゼット「クロノ。」

クロノ「はい。」

ハゼット「しばらく依頼を受けるのは控えて、体力やら戦闘の感覚を戻すのに専念しておけ。」

クロノ「へいへい了解しました。」


そんなこんなで1週間。特に何も大きなこともなく、いよいよ夏となった。

こちらの世界でも季節が春夏秋冬のように4つに分けられている。

そんなだんだん暑くなってきた日に、1人の来客があった。

ハゼット「まずは名前を聞かせてもらおうか。」

女性「はい。ベルージア国軍第4防衛隊所属、レーニャ・ストアーノ少尉です。」

ハゼット「ベルージアか…。」

ベルージアとは北にあるとても大きな町で、この世界では1番大きな町らしい。

外の町に厳しく、町に入るには厳重な関所を突破する必要がある。

そのため基本的に交易目的の商人ぐらいしか通しておらず、観光や友人に会いに来た程度の理由では入ることができない。

軍事国家のような一面があり、好戦的というわけではないが、攻撃を受けるととことんやり返すような町だ。

他の町と違って、独裁体制を取っている数少ない町でもある。

ハゼット「一応、依頼内容を聞こうか…。」

ハゼットさんのテンションが低いのは、そんな地雷感満載の、しかも軍の人間からの依頼なのだから政治にたっぷり絡んだような依頼が来たのではと思ってるからなのだろう。

レーニャ「依頼内容は…、とある人を牢から救助してほしいのです。」

ハゼット「救助?誰かお偉いさんでも囚われてるのか?どこの町に?」

レーニャ「囚われているのは私の隊の元隊長である、ターニア・ヴェルディ大尉です。」

ハゼット「ターニア・ヴェルディ⁉︎隻眼の女騎士と言われているあのターニアか⁉︎」

レーニャ「はい、その通りです。」

クロノ「知り合いなんですか?」

ハゼット「あぁ、数年くらい前に依頼でベルージアにしばらく滞在していたんだが、正規の手段で入ったわけではなくてな。その時に事情を知った上で俺の面倒を見てくれたんだよ。あいつがいなければ依頼の達成はならなかった。」

クロノ「ある意味恩人ですか。」

ハゼット「それで、ターニアはどこに捕まってるんだ?」

レーニャ「ベルージアです。」

ハゼット「なに?」

レーニャ「ベルージアでとある死刑が行われました。深い水の中に重りをつけて沈めるというただでさえ残酷な死刑の中でも更に残酷な部類に入るであろう刑です。」

ハゼット「そいつは何をやらかしたんだ?」

レーニャ「何もしていません。冤罪です。」

ハゼット「…ほう。」

レーニャ「冤罪である証拠はいくつも揃っていました。ですが軍の上層部がそれらを無視して、無理やり刑を執行したのです。」

ハゼット「本来の犯人は?」

レーニャ「秘密裏に処理されました。公に死刑にしたら前のあの者は冤罪だったのでは、という騒ぎになってしまいますから。」

クロノ「反対した人とかいなかったんですか⁉︎訴えた人とか…」

レーニャ「1人だけいました。ターニア大尉です。」

ハゼット「それが理由で捕まったってことか…。」

レーニャ「ターニア大尉には国を裏切ったという罪がかけられ、あと2週間もすれば死刑が執行されてしまいます。」

クロノ「んな理不尽な…。」

レーニャ「本当にです…。私はどうにかして大尉を助けたいです‼︎ハゼットさんは大尉に恩があるらしいですが、私にも大尉に恩があります‼︎私は18歳という若さで少尉の階級を得ました。」

ハゼット「18?それまたえらく若いな。」

レーニャ「ええ。そのおかげで他の人から妬みの視線を向けられることも多々ありました。ですがターニア大尉は…ターニア大尉だけは私に真っ直ぐ接してくれて、孤独だった私を救ってくださいました。」

クロノ「いい人じゃないですか…。」

レーニャ「だから、あの冤罪の事件に異を唱えられたのでしょう。ですが、そのせいで大尉は捕らえられ、刑を待つ身となっているのです…。」

レーニャが泣くのを抑えようともせず、こちらを見る。

レーニャ「こんな理不尽な結末はあんまりです‼︎なんとかしてお救いしたいのです‼︎」

ハゼット「…そうだな、ギルドとしてはその依頼を受けることはできない。」

レーニャ「そんな…‼︎」

クロノ「ハゼットさん⁉︎」

ハゼット「まぁ落ち着け。ギルドとして受ける気はないが、暇を持て余したハゼット・ローウェルとかいう男がたまたま友人とベルージアに忍び込んだら囚われのお姫様がいたからついでに脱走のお手伝いをしてやったというシナリオで行こうじゃないか。」

レーニャ「…‼︎それでは‼︎」

ハゼット「ギルドではなく、ハゼット・ローウェルが承った。」

レーニャ「ありがとうございます‼︎」

ハゼット「それで、あんたは早めに戻った方がいいんじゃ?」

レーニャ「い、いえ、その…私は無断でここに来たものですから…その…」

クロノ「脱走兵みたいな感じですか?」

レーニャ「このまま戻ってもおそらく重罪は免れないので…。」

ハゼット「ならどうにかなるまでウチに滞在するといい。なんだったらウチで働いてくれても構わんぞ。」

レーニャ「…それはこちらとしてはとてもありがたい申し出なのですが…よろしいのですか?」

ハゼット「あぁ。ギルドは人手があればあるだけ助かるからな。まぁ、その代わりちょっとした変人と変態がいるのを我慢してもらわなきゃならんが。」

レーニャ「いえ‼︎是非とも、お願いします‼︎」


そしてその日の夜、

ハゼット「さて、作戦会議だ。どうやって潜入するか、だが…。」

カウンターの向こうでハゼットが手を机の上に置いて立つ。

それ以外はカウンターのこちら側に立つか椅子に座るかして聞く。

エリー「この前潜入したときは商人の馬車に乗り込んだんでしたっけ。」

ハゼット「今度もその手でいくしかないか…。」

シーラ「ちょっといいでしょうか!」

シーラが手を挙げる。

ハゼット「どうした?」

シーラ「それがですね…。ここ最近、ベルージアは商人の馬車ですら入ることを許していないのです。」

ハゼット「なんだと?本当か?」

シーラ「はい。ハゼットさんのように町に侵入しようとした者がちょくちょくいたみたいで、それらを防ぐ為に商人の馬車も封じたみたいです。今あの町に入れるのは余程の重要人くらいなものでしょう。」

ハゼット「なんてこった…。どうやって入る…?あそこの壁は高い上に監視がいるから登ってもすぐに見つかる。」

一同が黙り込んでしまった。

…陸がダメ、海に近いわけでもないから海もダメ…それなら残っているのは…

クロノ「空から…は?」

ハゼット「空…?」

クロノ「すっごい高い空から降りてきて、入るってのは…。」

ハゼット「面白い案だが…」

フレア「地面に激突して潰れちゃうでしょうが。」

ハゼット「俺なら…」

エリー「ハゼットさんは高所恐怖症でしょ?私も痛いのは少しトラウマだし…」

アクア「空からもダメってことかい?」

いや…

クロノ「俺は…いけるんじゃないでしょうか…?」

ハゼット「なに…?ああ‼︎そうか‼︎」

フレア「なになに?どういうことっすか?」

クロノ「カウンターの応用で、地面に激突したときのダメージをなんとかして他の方向に送るなりすれば体にくるダメージを少なくできるので、潜入できると思うんですけど…。」

レーニャ「よく分からないですが、それが上手くいけば入れるということですか…?ですが、その…あれですよ?」

クロノ「あれ?」

レーニャ「単独潜入、ということになります。捕まったら最悪殺されるような場所に。」

クロノ「でもそのターニアさんって人をこのまま見殺しにするのは俺だって嫌ですよ。」

レーニャ「クロノさん…」

ハゼット「正直反対したいが、これしか案がないとなるとな…。これでいくしかないか。」

というわけで、見知らぬ土地への単独潜入を行うことになった。

蛇の傭兵よ、俺に勇気を与えてくれ。

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