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ヒーローライクヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
10話:イーストケース
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その7・捜査

[フレア]

シーラ、アクア、ゲンダイと手分けをして探す。

深追いはせず、ある程度の情報を集めるだけにしようということになった。

が、やはりそんな簡単に有力な情報は見つからない。

フレア「はぁ~…」

橋の欄干に座り、ため息をつく。

クロウ「おっすフレア。捜査は順調…には見えねぇな…。」

フレア「クロウ!」

手に団子を持ったクロウが隣に座る。

クロウ「1本いるか?」

串に刺さった団子を1本差し出してくる。

フレア「あぁ、ありがとう。」

団子を受け取り頬張る。

フレア「うまいな、これ。」

クロウ「だろ?ここの団子は美味いのよ。」

何故か自慢げに語る。

クロウ「それで?捜査はどうなの?」

フレア「全然。そもそも腕を怪我してるやつってのがいない。」

クロウ「そりゃあ普通は中々いないからなぁ。」

フレア「お前は家の用事ってのはどうしたんだ?サボりか?」

クロウ「サボりじゃねぇよお!手伝うのは準備だけでいいってさ。刀研ぐのは片腕でも出来るんだと。」

フレア「砥石屋だっけ?」

クロウ「そそそ。まぁ、この町には砥石屋なんてた~くさんあるかんねぇ。ウチのは繁盛してねぇのよ。他の店より腕がいいってわけでもないしねぇ。」

フレア「それ生活とか間に合ってんの?」

クロウ「あぁ、間に合ってるよ。俺が自警団じゃあ解決できないような依頼なんかを代わりに受けてんのさ。あの魔獣倒してきて~とかあれ作って~とか。」

フレア「ギルドみたいだな。」

クロウ「ホントだよ。俺もせっかくだからギルドにしちゃおうって団長さんに言ったんだけどね。あの人、自警団はまだやれるっつって聞いてくんねえの。まぁ俺も絶対ギルドにすべきだってわけじゃあないからそれ以上は言うつもりはないけどさ。」

フレア「あの人ギルド嫌いなの?」

クロウ「ワシが死んだら自警団は老人ばかりの酒飲み集団にしかならんからそうなったらギルドにしてくれってさ。別にギルドが嫌いなんじゃなくて自警団の伝統が好きってだけなんだろ。」

フレア「伝統ねぇ。」

クロウ「団長さんの祖父の父さんの代から始まったらしいぜ?よく続いたよな。」

フレア「もう続かないのか?」

クロウ「団長さん並に強いやつがもういないんだとさ。若いやつも刀じゃなくて金を武器にしてるやつが多いからねぇ。俺みたいに戦う若者の方が珍しくなっちゃってるのさ。俺は戦うのは嫌いじゃないけどね。」

フレア「戦う若者か…。」

クロウ「変だよなぁ。若者の戦士離れを嘆いときながら、いざ武器持った若者が現れたら、どうせ戦えないだろだってさ。あんたもよくあのおっさんに勝てたなぁ。」

フレア「見てたのか?」

クロウ「あぁ、ちょっと町の外に散歩に行こうとしたらあんたらが戦ってるのが見えてな。遠目から見てたのよ。凄かったぜ~?特に最後。あの人の雷刃閃よくもまぁ返せたもんだよ。」

フレア「まっすぐ突っ込んでくるだけの技だからな。来る場所分かってたら対処はできるさ。」

クロウ「あぁ~、なるほど…。そういうことか…。俺もなぁ、兄貴に鍛錬は欠かすなって嫌ほど聞かされててなぁ。」

フレア「大変だな。」

クロウ「ホントだよ。ゲンダイに勝てるくらいには強くなれ。お前には才能があるんだからな、ってさ。」

ソウスケの声や仕草を真似しながら言う。

クロウ「兄貴は昔からずうっと俺に強い男になれって言ってくるんだよ。俺は別にどうでもいいんだけどさ。強くなるつもりはないって言ったら、せっかくの才能を無駄にする気か!って言って嫌でも特訓させてくるのよ。今は好きにはなってきたけどな。」

フレア「才能ねぇ…。俺にもそういうの欲しいけどなぁ…。」

クロウ「でも強いじゃん?あんた。」

フレア「そりゃあ俺は何年もずっと戦ってきたからな。経験だけなら人並み以上にある自信はあるさ。」

クロウ「経験な~。ま、才能だけあっても意味ねえし、俺も努力しなきゃいけねぇよな…。」

クロウが地面に視線を落とす。

クロウ「最近兄貴おかしいんだよなぁ。才能才能って。昔も結構言ってたけど、今はなんかおかしいんだよ。才能至上主義ってやつ?どうなっちゃったんだか…。」

フレア「才能至上主義…。」

クロウ「昔は兄貴はいい奴だったよ。チャンバラごっこして遊んだり、お面作ってくれたり。ガキのくせに大人用の大きさのお面作ったりしてさ。色んな動物のやつを作ってたよ。ガキのくせに大人顔負けの上手いお面作んのよ。鶏とか犬とか狐とか。」

クロウが欄干から降りる。

クロウ「そんな兄貴も今はなぁ。才能のある者は力を誇示する義務があるとかなんとか…。よく分からないんだよ。」

大きく伸びをする。

クロウ「そんじゃ、そろそろ行くわ。んじゃな。」

フレア「あぁ。じゃあな。」

(クロウは何かを伝えようとしていたのか…?)

遠ざかるクロウの背中から、助けを求めているような、そんな何かを感じた。


[砥石屋]

クロウ「ただいま~。兄貴、団子いる~?」

クロウが外から帰ってくる。

中に客はいないが、ソウスケは刀を研いでいる。

ソウスケ「いや、いいよ。お前が食べてくれ。」

クロウ「そう?んじゃもーらい。」

持っている団子の最後の1本を食べる。

クロウ「俺、奥にいるけど、なんかあったら言ってよ?」

ソウスケ「手伝え手伝えと言ってるときはサボりに行くのに、こういうときには手伝おうとするな、お前は。」

クロウ「はー。」

腕をヒラヒラと振って照れ隠しをする。

ソウスケ「奥で休むくらいなら外に出て魔獣でも倒してこい。せっかく才能があるんだ。努力努力と言って時間を無駄にするような才能のない者に負けてはいかんのだ。」

クロウ「へーへー、頑張りますよ。あ、そうそう。兄貴さぁ。」

ソウスケ「どうした?」

クロウ「知ってる?例の通り魔事件の犯人。どうも左腕を怪我してるんだってさ。」

ソウスケ「…そうか。それが?」

クロウ「兄貴も左腕を怪我してるじゃん。」

ソウスケ「………。」

クロウ「今、自警団やらギルドの人やらがその辺の怪我してる人らに話聞いて回っててさぁ。兄貴も疑われちゃうんじゃないの?」

ソウスケ「ギルドか…。あの大剣の男からは才能の欠片も見られなかったな。…俺には関係ない話だ。」

クロウ「そ。そんじゃ。」

クロウは奥の部屋に入っていく。

ソウスケは刀を研ぎ終えると、部屋に飾っている狐のお面を見る。

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