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ヒーローライクヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
10話:イーストケース
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その5・情報屋

[フレア]

ゲンダイ達と共に自警団本部に戻る。

中に入ると女性が1人、カウンターのイスでグラグラ揺れていた。

ゲンダイ「おぉ、シーラ!いつの間に戻ってきたんじゃ?」

女「あぁ!ゲンダイさん!いつの間にじゃないですよ!誰もいないのに鍵開けたままにしないでって言ってるじゃないですか!」

座りながら早口で怒っている。

ゲンダイ「おぉ、スマンスマン。」

女「それで、みんなしてどこ行ってたんですか?」

ゲンダイ「ちょっとな、アリアンテのギルドのやつと一戦交えてきたんじゃ。負けてしもうたがのぉ。」

女「もう来てたんですか⁉︎今いますか⁉︎」

イスから跳ねるように降り、こちらに近づいてくる。

ゲンダイ「おお、おるぞ。ほれ、こいつらじゃ。」

ゲンダイに背中を叩かれ!前に突き出される。

女「おお、この人がアリアンテから来た人ですか…。ふむ、見た感じは強くなさそうですがゲンダイさんに勝てたということは余程の実力があるということですね。フレアさんとアクアさんのローレンス姉弟にカミヅキ・クロノさんですね?他の方はおられないのですか?」

フレア「え?なんで知ってんの?」

この女性に名乗った覚えはないはずだけど…。

女「あっと、失礼しました。私、シーラ・カステインと言います。色んな人に情報を提供する情報屋をしております。以後、お見知り置きを!」

陽気な雰囲気で少し早口気味の喋り方。

ゲンダイ「シーラの情報の速さはわしの知っとる中でもダントツでのぉ。あんたらギルドの噂もシーラから聞いたんじゃ。」

シーラ「情報屋ですからね。あなた達のことも一応知ってますよ。クロノさんはまだ入ったばかりの新入りさんだそうで。」

クロノ「え?あぁ、まぁそうだけど…。」

クロノの声色からは、あまり好ましくないような雰囲気が伺える。どうしたんだろうか。

クロノ「変な噂流してない?」

シーラ「流してませんよ!聞かれたことしか言わないことを主義にしてるんです!情報っていうのは正確さが命ですから、誰かに情報を売る時は私の意見は言わず、あくまで起きていることそのままを伝えてふんです!それにお金さえ払えば誰にでも話すわけではないですよ?この人に話しても悪用されなさそうだなという人にしか話さないんです。私の人を見る目は自分で言うのもなんですが、最高であると自負しております!」

クロノ「へぇ~。まぁ、なら大丈夫かな。」

クロノがシーラに笑顔を向ける。

シーラ「それで、アリアンテのギルドが来るというならハゼットさんが来るかと思ってたんですが…。」

フレア「今はドラゴンの繁殖期で忙しいんだよ。」

シーラ「あぁ!そうか!じゃあ今はフィレーにいるんですね!そっちに行っとけば良かったかなぁ…失敗しちゃったかな…?」

大きな声だったり小さい声になったりと随分上げ下げの大きな人だ。見た感じ同い年か少し上にも見えるが、子どもみたいな雰囲気だ。

シーラ「いやでも、せっかく新入りのクロノさんもいますし、そちらの話を聞くというのもありかもしれませんね…。クロノさん!少しお話を!」

クロノ「ごめんけど、遠慮していいかな?」

シーラ「ええ⁉︎なぜです⁉︎別に個人的なことまでは聞きませんよ?どんな武器使ってるかとかどういう経緯でギルドに入ったのかとか。」

クロノ「武器はともかく聞かれたくないことばかりだから…ちょっとね…。ごめんね?」

異世界から来たということを他人にあまり話してはいけないという理由があるのだろうが、それ以外の理由を含んでいそうな顔をしている。

シーラはクロノの顔を見て何かを分かったような顔をしそれ以上は食い下がらなかった。

シーラ「そうですか…。もし話してもいいと思ったら、改めて聞きに行ってもいいでしょうか?」

クロノ「まぁ、それならいいけど…。」

シーラ「お待ちしてますね!で、フレアさんとアクアさんはどうでしょう?」

アクア「特に理由はないけど、一応お断りかな。」

フレア「俺も同じく。」

シーラ「ちぇ…。」

そういえば情報屋なら例の事件のことは何か知ってるだろうか。

フレア「シーラは、イクツキで夜中に人が襲われてるって話は知ってるよね?」

シーラ「知ってますよ?情報屋でなくても、この町にいる人はみんな知ってますでしょうね。ですが、残念ながらみんなが知ってるくらいの情報しか持ってないですね…。何も手がかりが見つかりませんから…。情報屋として悔しいですが、私にはそんな恐ろしい犯人と直接戦うような力を持ってませんから、対峙するわけにもいかないですし…。」

ゲンダイ「情報屋が知ってたら、ワシら全員に教えてもらっとるしのぉ。」

それもそうか。

ゲンダイ「それでシーラは何しに来たんじゃ?」

シーラ「アリアンテのギルドの人が来るというから、話を聞こうと思ってたんです。ちょうど情報屋仲間からイクツキで不可思議な事件が起きていると聞いてましたし、ちょうどいいかなと。」

ゲンダイ「わしらがギルドのやつを呼んだことはシーラには言ってないんじゃが…誰から聞いたんじゃ?」

シーラ「世の中知らない方がいいことというのがあるんですよ…。」


シーラが宿に帰り、夕方になった。

フレア「なぁ、クロノ。シーラと話す時なんか嫌そうな顔してたけど、なんかあったのか?」

クロノ「ああいう人は苦手なんだよ。」

フレア「なに、アレか?ああいう元気な女の子は苦手なのか?」

クロノ「性格の話じゃないよ。情報屋が苦手って意味。」

情報屋が苦手?

フレア「どういう意味よ?」

クロノ「俺がいた世界でも情報屋みたいな職業があってね。あることないこと書いてるんだよ…。客観的な意見とか言いながら偏見たっぷりで対象を貶める気満々なことを信憑性たっぷりに見えるように書いたり。」

フレア「なんだよそれ…。」

クロノ「もちろん、みんながみんなではないけどさ。逆にそのせいで、どれが本当の情報なのか分からなくなっちゃってるんだよ。」

フレア「そんなことしてなんになるってんだよ?」

クロノ「お金になる。面白い情報ってのはウソでもホントでもお金になるんだよ。」

フレア「ウソだったらダメじゃねーかよ!」

クロノ「ダメだよ?でもみんなお金が好きだからね。だから、シーラも話を聞くだけ聞いて、面白くない情報は全部カットして脚色したら面白そうな部分はそれなりに改竄して他の人に提供するんじゃないかって思ってね。そんなことされたくないから拒否したんだよ。まぁ、やるやつは取材を一切せずにテキトーな情報をポンポンばらまくんだけどね。」

フレア「うわぁ…。」

ゲンダイ「じゃが、シーラはそんなことをするやつではない。」

フレア「うおぉ‼︎ゲンダイさん‼︎」

ゲンダイ「長年人を見てきたワシには分かる。シーラはそのようなことを考える子ではない。」

クロノ「頭では分かってるんですが、一度疑っちゃうとどうもね…。」

ゲンダイ「シーラはいい子じゃ。それだけは分かっててやってくれ。さて、そろそろ夜じゃ。例の待ち伏せの件、頼んだぞ。」

フレア「はい!」

ゲンダイ「逃げられてしまっても構わん。お主らが無事であることが優先じゃ。」

外に出る。まだ若干明るい感じは残ってはいるが、太陽はもう隠れていて見えない。

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