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ヒーローライクヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
9話:似た者同士
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番外編・誰もが幸せになれる魔法とは違う魔法

[クロノ]

朝。

ギルドの中を軽く掃除して、来客があってもいいようにする。

森の警備には誰も行っていない。定期的に国軍がギルドの代わりに警備しているのだ。

ハゼット「そりゃあ国軍だってギルドに負けるわけにはいかんからな。面目保つためなんだろうよ。こっちも楽できるからいいじゃないか。」

だそうだ。

マキノも研究が一段落したとギルドにやってきている。


昼飯も終わった。特に何もない。まぁ、たまにはこんなダラダラした1日もいいだろう。最近は色々ありすぎた。

するとそこに、アリアージュのオーナー、シレイノが入ってきた。何やら本を持っている。

レオ「シレイノ、その本どうしたの?」

シレイノ「いや、こないだ森を歩いていたら落ちていてな。何かイラストがあるのは分かるんだが、文字が読めない。おそらく食べ物か何かの本だとは思うんだが…。」

レオがアリアージュに通ううちに、敬語をやめて話し合うほど仲良くなっていた。

レオ「うわぁ、ホントだ。見たことない文字。ねぇ、お兄ちゃんも見てよ。」

そういえば俺はいつからレオにお兄ちゃん呼びされているのだろう。まぁ、悪い気はしない。

本を見てみると、自分の知っている言語だった。日本語だ。

そういえばシレイノには俺が異世界から来たことは言っていなかったっけ。

クロノ「俺これ読めますよ。故郷の言語です。」

シレイノ「本当か⁉︎これは何の本なんだ?」

クロノ「色んな食べ物のレシピをまとめた本ですよ。この本は特にスイーツに関してまとめていますね。」

レオ、マキ、シレ「スイーツだって⁉︎」

この甘味厨共が。

クロノ「ケーキ、プティング、プリン…色々ありますね。」

結構たくさんあるな。同じものでも色々とバリエーションがある。

シレイノ「プリン?初めて聞く名前だな。」

マキノ「私もスイーツに関しては詳しい自信があるが、初めて聞いたぞ。」

この世界にはプリンというものはないのか…。

クロノ「プリンっていうのは、見た目的には黄色の台形の形をしていて、プルプルしたスイーツですね。ケーキとはまた変わった味が楽しめますよ。」

菓子好き三人衆がよだれを垂らす。比喩ではなく、ガチめに垂らしやがる。今日の掃除当番はフレアなんだからやめてあげて。

シレイノ「なぁ、クロノ…。そのプリンとやら…作ってはもらえんだろうか…。」

クロノ「俺がですか?」

マキノ「クロノは料理はできるのか?」

クロノ「まぁ、人並みには作れますよ。アレンジとかは無しでレシピ通りにしか作れませんが。」

レシピ通りなら失敗しない自信がある。

当たり前に聞こえて案外そうじゃないのが料理だったりするのだが、少なくとも失敗したことはない。

シレイノ「本当か‼︎よし、ならアリアージュで調理器具や食材の準備をしよう!今日は暇か?」

ハゼット「今日は特に用事もないし、依頼もないからな。あんたらで行ってくるといい。俺たちはここで留守番してるから、出来たら呼んでくれ。」


さて、プリンを作ろう。

アリアージュはオープン中ではあったが、客がそんなに多くなかったため、厨房の一部を貸してもらった。

クロノ「さて、まずは食材ですね。」

牛乳、生クリーム、全卵、卵黄、砂糖、バニラエッセンス…

シレイノ「バニラ…エッセンス?」

クロノ「バニラエッセンスってのは…まぁ、香りをつけるだけですのでなくても大丈夫っちゃあ大丈夫ですね。甘い香りがするんです。」

シレイノ「それならこのエキスでも代用できるかな。」

そういってピンク色の液体が入った瓶を見せる。匂いを嗅いでみると、バニラエッセンスに近いような香りがする。

クロノ「代用できると思いますよ。」


さて、作ってみよう。

まずはカラメルソース。

鍋に砂糖と水を混ぜながら火にかけ、沸騰させる。

色が茶色になるまで沸騰させたら、火を止める。

お湯を少しずつ入れてかき混ぜる。

いい感じになったらとりあえず完成。

次は本体。

ボウルに牛乳と生クリームと砂糖を混ぜる。

そして別のボウルに全卵と卵黄を入れ、混ぜる。

卵のボウルに牛乳やらを混ぜたやつを少しずつ入れながら混ぜる。

濾し器で濾す。

濾した液にバニラエッセンス代わりの溶液を少し加える。

プリンの容器に先ほど作ったカラメルソースを入れ、その上にプリン液を入れる。

その後はオーブンに入れなくてはいけないのだが、この世界にはオーブンなるものはないので、魔法を使うことにした。

レオに弱い火の魔法を使ってもらう。燃やさないようにプリンの液を炎で包む。

30分間使わせっぱなしはかわいそうなので、時々交代しながら加熱する。

いい感じになったら5分放置。

そして冷蔵庫で冷やす…と言いたいがそんなものもない。ので、氷の魔法で冷やす。


完成。

見た目的には上手くいっているようだ。

クロノ「では、少し試食を…。」

スプーンでプリンの角を少しだけ取り、口に運ぶ。

マキノ「ど、どうだ…?」

クロノ「うん、普通にいい感じですね。マキノさんたちも食べてみてください。」

マキノがスプーンを取り、プリンを食べる。

マキノ「な、こ、これは⁉︎今までにない味だ‼︎」

レオ「こんなの僕はじめて‼︎」

シレイノ「甘く、軽やかで、綺麗な味だ…。美愛神フォンティアナに祝福されているかのようだ…。」

例の英雄神とやらか。

とにかく、気に入ってくれて良かった。


シレイノ「美味しいお菓子を作ることが出来る…。とても素晴らしいことだ。」

クロノ「そうですか?自分はレシピ通りにやっただけで、アレンジも何も加えてませんよ?」

シレイノ「それでもだ。レシピ通りにやろうとしても失敗することはある。それに、なにより…」

マキノ「甘いお菓子は人を幸せにする。」

シレイノ「どんな人だろうと、甘いお菓子で幸せになることができる。私がこの店を開いたのは、それが理由でもある。」

レオ「素敵な魔法だね!」

レオが自分を見上げる。

クロノ「それじゃあ、ギルドの人らを呼びましょうか。」


ギルドのメンバーとアリアージュの店員たちにも好評で、アリアージュの新しい商品にしようということになり、皆が賛成した。


その後プリンはアリアンテの街だけにとどまらず、世界中で広まり、様々な人に愛される菓子となったが、それはまた別のお話。






参考にしたプリンの作り方:クックパッド「濃厚♪絶品♪基本のカスタードプリン」

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