表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーローライクヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
4話:愛が止まらないから
16/95

その2・恋敵も敵のうち

[ハゼット]

ケインズ「さっそく本題に入ってもよろしいでしょうか?」

ハゼット「ええ。アリアンテの町長からは娘さんが『闇』にかかっている可能性が、と言われたのですが。」

ケインズ「ええ、そうです。最近娘の様子がおかしいのです。」

ハゼット「具体的には?」

ケインズ「娘の他に1人、息子が、娘の兄に当たる者がいるのですが。娘はそいつを愛しているのです。」

コンコンとドアがノックされる。

声「父さん、ちょっといいかい?」

ケインズ「カールか。ちょうどいい、入りなさい。」

噂の息子さんのようだ。

爽やかな好青年、という感じだ。

カール「あ、接客中だったのかい、父さん?出直そうか?」

ケインズ「いいさ。ちょうどお前の話をしていてな。…リーのことだ。」

カール「ああ、こないだ言ってた解決してくれるかもしれない人か。」

ケインズ「あぁ。ハゼットさん、こちらはウチのせがれでカールといいます。」

カール「はじめまして。カール・ハーマンです。」

実に清々しい青年だ。娘さんが好きになるというのも分からないでもない。

ハゼット「アリアンテのギルドから来たハゼット・ローウェルだ。」

カール「ハゼット・ローウェル⁉︎ハゼットといったらドラゴン退治の⁉︎本物に会えるなんて…。」

自分で言うのもなんだが、自分の名前は世界中に知れ渡っている。何せドラゴンを1人で相手するのは俺くらいだからだ。

ケインズ「それで、父さんに用事があったのだろう?急ぎなのかい?」

カール「いや、リーの姿が見当たらなくてさ。今あんな状態だし、どっかに行ってしまったんじゃあないかって。」

ケインズ「リーなら外出中だよ。使用人を連れているから大丈夫だ。」

カール「それならいいや。」

ホゥ…と胸をなでおろす。

ケインズ「さて、それでは話を戻しましょう。私の娘のリーのことです。」

カールも交え、3人で話を続ける。


ケインズ「妹が兄を愛する…。別にどの家庭でも起こり得るであろうことです。私は兄妹で愛し合うのを否定するつもりはありません。ですが、妹の愛情が常軌を逸しているのです…。」

ハゼット「逸している…とは?」

カール「家に入る時はやけにピッタリくっついてきたり、なぜか僕の私物がリーの部屋にあったり…。まぁ、この程度ならただの仲の良い兄妹かもしれませんが…」

恐怖を含んだような視線が落ちる。

カール「外に出て誰かと会話して帰ってくると、お兄様は私だけのものだからと包丁を持って抱きついてきたり。この間は夜中に包丁を持って外に出ようとしたのをなんとか引き止めましたが…。」

やはりそっちの類の『闇』か。

今、外出していていないと言っていたな。

ハゼット「リーさんの部屋…見る事はできますでしょうか?」

何か…『闇』のヒントがあるかもしれない。

ケインズ「ええ、解決のヒントになるなら。」


リーの部屋のドアを開ける。一面男物の服が散らばっている。

トビラの前で右手を部屋にかざす。

兄を盲目的に愛しているような人だ。どれだけ入室した証拠を消しても、誰かが部屋に入ってきたを理解するだろう。

ならば部屋に入らなければいい。ドアを開けただけなら、外出の際にドアをしっかり閉め忘れ、風で開いてしまったと説明ができる。

ケインズ「あの…何を?」

魔力を放出する。

ハゼット「大丈夫です。攻撃をするわけではありません。部屋の中を調べるだけです。」

魔力を部屋の中で分散。魔力の一つ一つの動きを分析し、どこに何がどういう状態で存在するかが分かる。昔、ハルカにはソナーだとかレーダーだとか言われた。聞いた事がなかったから異世界の単語だったんだろう。この魔法は『リフレクトレーダー』と名付けている。

カール「そんなことで調べることができるのですか?」

リフレクトレーダーの説明をする。納得いくようないかないような顔だ。

ハゼット「カールは狩人が障害物の多い森の中でどうやって魔獣の位置を把握しているかわかるか?」

カール「…い、いえ。」

ハゼット「狩人は音で判断する。目で見るには木がありすぎて邪魔だからな。熟練の狩人は音だけでどんな魔獣かだけでなく、方角、距離、周囲にどういうものがあるか、魔獣の体の大きさなどを理解することができる。」

カール「どうやってそんなことが…?」

ハゼット「音というのは反射するんだ。反射した速さでぶつかった対象がどのくらい離れているかを理解することができる。」

しばし悩んだのち、手を叩いて理解できたという顔をした。

ケインズはあまりわかっていないようだ。

部屋の分析完了。ドアから見えた範囲以外にも男物の服が散らばっているようだ。複数の包丁が机の上に整理して置かれている。包丁を置くスペースが一つ空いているのが気になる。もしかして、持って出たのか?

それ以外はベッドやタンスなどの当たり前の家具以外は何もなく、飾りもない。町長宅だというのに殺風景だ。


応接室に戻り、それらを伝える。

カール「包丁持って外出はするなと言っておいたのに…!」

ハゼット「とりあえず妹さんが帰ってきても、そのことを言うな。あのタイプの人間は何をきっかけに爆発するか分からない。」

カール「え、ええ。しかし包丁を持って出かける…か…。不安です…。」

そういえば、外出したときに誰かと会話したら包丁を持って出かけようとしたと言っていたな。

ハゼット「最近、外出した際に誰かと会話したか?」

カール「え?ええ。一昨日に自分の部屋に飾る花を買いに花屋に行ったときに、店の女性と話をしました。自分の部屋の飾りは自分でやるのが好きなので自分でよく買いに行くんです。」

ハゼット「…帰宅して妹の反応は?」

カール「…包丁を持って待って…て……」

だんだんカールの声が震えてくる。ケインズも察したようだ。

カール「……その日の夜にふと、リーの部屋の前を通ると、中から殺してやる殺してやるって呪文のように呟いているのを聞きました…。まさか…。」

ハゼット「そのまさかの可能性があり得る。その花屋に行った方がいいかもしれない。」

当たってほしくないが、可能性は十分にあり得る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ