才能?
「拓実ちょっとピアノ聞いて」
紅姉ちゃんが僕を呼び出す。
「今度新しい曲が弾けるようになったの聞いて」
どうせ、ドレミの歌とかだろと思っていると。
テレテレテレテレテー テテテ テテテー。
「エリーゼのために!?」
めちゃくちゃ難易度上がってるじゃないか。
すげーよ、よくこの短期間で弾けたな。
「紅姉ちゃんすげー才能だなー。俺にもなんか才能ないかなー」
俺にはなんの才能もなかった。
勉強もダメ、運動もダメ。
「あんたにも才能あるじゃない」
「なに、なに?」
「女の子に嫌われる才能」
「そんなの嫌だー」
絶対将来モテてやると誓う拓実であった。
「そういえばあんた絵が上手かったんじゃない」
「え!?」
「ほら、小学校低学年の頃コンクールで賞取ったし」
「そういえば」
僕にも才能があった。
そう思うといてもたってもいられなくなった。
その日から毎日絵の練習をすることにした。
すると絵がどんどん上達していく。
学校の図工の時間に先生に絵を見てもらうと。
「拓実君、すごいじゃないプロが書く絵みたい」
「ほんとだすごい」
「こんなきれいな絵見たことない」
「俺に1000円で売ってくれ」
「くれるなら私のスカートめくってもいいわ」
もちろんそんなに簡単にあげるわけがない。
スカートを2回めくるのと交換に絵をあげることにした。
「でもこんなに上手いなら留学した方がいいわね。お母さんに連絡してあげる」
「え!?」
留学かいいなー。
かわいい女の子とかいそうだな。
家に帰ると。
「拓実おめでとう。あんた絵が上手いんだって」
レイン母ちゃんがとても喜んでいる。
「有名な外国人の先生にスカイプで見てもらってぜひうちに来てもらいたいって」
「そっかー、いつ」
「明日からよ」
「え!? そんな急に」
「早い方がいいでしょ」
「それにしたって僕の準備とかあるし・・・」
「というわけで今日はパーティーよ。から揚げもお寿司もあるわよ」
僕の話は聞いてなかった。
パーティーが終わると紅姉ちゃんが、
「私あんたのこと誤解してたわ」
たぶんいい話がくるなと思っていると、
「ただのエロガキだと思ってたわ」
ひどい言われようだった。
「最後なのにもうちょっと言葉ないの」
「!? あーそういう事かー」
紅姉ちゃんは感ずいている。
「あんたはなにもしなくてもすぐに慣れるわよ。拓実がんばれ」
紅姉ちゃんに頑張れって言われた頑張らないと。
それを聞いていたレイン母ちゃんが、
「拓実あんたにプレゼントがあるの」
なんだろうおもちゃかな、ゲームかな。
「はい絵の具と筆高かったんだからちゃんと使ってねー」
僕は涙が出てきた。
「あんたはやればできる子なんだから泣かないの男の子でしょ」
「だって海外に行ったら、紅姉ちゃんともレイン母ちゃんとも当分会えなくなくちゃうんでしょ。そんなのやだよ。もっと母ちゃんの料理食べたかったし、姉ちゃんのピアノも聞きたかったし。日本の女の子とももっと仲良くなりたかったし。家族でこれからも生活していきたい」
「!?」
レイン母ちゃんは?マークだ。
紅姉ちゃんが説明する。
「拓実は海外に行くと思ってるんでしょ」
「えっ、違うの」
「近所の外国人が先生してる絵画店」
「じゃあ、日本から離れなくていいの」
「日本どころかここから離れなくていいのよ」
「やったー、紅姉ちゃんレイン母ちゃん大好き」
そうして僕の才能の話は幕を閉じた。
人間誰しも何かしら才能がある。
しかし、それを探すのは大変だ。
そして、探すだけでなく努力も必要だ。