授業参観
今日は小学校の授業参観の日。
拓実はちゃんと授業を受けられるのかしら。
レインは気が気でなかった。
なぜなら拓実の態度が普段から悪いからだ。
そして、この前はデブクソババアと呼ばれたのだ。
どうせろくでもないことをしでかすに違いない。
そう思っていると、
キンコーンカンコーン。
チャイムが鳴った。
拓実のクラスは5年2組。
もう授業は始まっている。
今日の授業は作文のようだ。
黒板に題材が書いてある。
『家族に感謝してること』
感謝していることなんてあるのかしら?
そう不安になっていると、拓実の前の弘之君が当てられた。
『仕事をしているお母さんへ』
そうタイトルを言い終えると本文に入った。
「お母さんへ、いつも仕事をしてくれてありがとう。しかも家に帰って料理も掃除も洗濯もしてくれてありがとう。僕はお母さんがいつか体を壊すんじゃないかと不安です。たまにはゆっくり休んでください」
そして、最後に一言。
「おかあさん、僕を生んでくれてありがとう」
そう言った。
「弘之ったら」
弘之君のお母さんは感動して泣いている。
拓実もここまでとは言わないけどちゃんとしたこと言って欲しいわ。
そして、拓実の番が回ってきた。
『レイン母ちゃんに感謝していること』
そして、作文の本文に入る。
「レイン母ちゃんに感謝していることはありません」
教室内はざわめいた。
「だって、親が子供を育てるのは当たり前のことだから。僕が大人になっても当然のように子どもを育てると思います。だから、僕は感謝しない」
そう言って作文を言い終えた。
私はとても悲しかった。
家に帰って。
「拓実どうしてあんなこと言ったの」
「レイン母ちゃんには僕の気持ちなんてわかんないよ」
そう言ってランドセルを投げて自分の部屋の中にこもった。
その拍子にランドセルから丸めた紙が出てきた。
どうしてあんな子に育ったのかしら。
私は投げられたランドセルを戻すと、丸めた紙を開けてみた。
『レイン母ちゃんに感謝していること』
今日の作文の紙が出てきた。
「レイン母ちゃんには日々迷惑をかけています。勉強も家の手伝いもまともにやらないし感謝の言葉も俺は言わないし、僕は最低だ」
そして、最後に一言。
「そんな僕をここまで育ててくれてありがとう」
と書かれていた。
私は拓実の部屋に向かった。
コンコン。
「拓実、入るわよ」
拓実は布団の中に潜っていた。
「なんで作文通り読まなかったの」
「だって、あんなの読んだらかっこ悪いって、読む寸前に思って適当なこと言っちゃった」
「拓実、ここに書いてある文章ちゃんと読んで」
「やだよ。かっこ悪い」
そう言った。
「拓実、母さんはそんなあなたのこと愛してるからね」
「気持ち悪いからやめろクソババア」
ゴチーン。
拓実は殴られたのだった。
本当のことを言うのは恥ずかしい。
でも本当のことを言うと心の奥がすっきりする。
だけど、悪口は本当に思っても思わなくても言っちゃダメだ。