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3発目 騎士と姫 中編

 次の日の昼休み、私は入間と一緒に屋上で昼飯を取っていた。私にとって神聖な時間だ。メシ、風呂、睡眠の三つは何人たりとも侵すことの許されない時間なのだ。いよいよ大好きな焼きそばパンを食べようと口を開けた時だった。


「た、大変だーーー!」


 屋上のドアがもの凄い勢いで開いた。それに驚いた私は手に持っていた大好きな(←大事)焼きそばパンを落としてしまった。姿を現したのは、頭に包帯を巻いた松谷だったが……


「何さらしとんのじゃ、このボケがーーーーー!!」

「ごでぃばっ!」


 容赦なく上段後ろ回し蹴りをかました。邪魔をするんじゃない!


「どーしてくれるんだ!私の焼きそばパン!」

「オイオイ……興奮し過ぎだって、凛堂。一人称おかしいぞ」


 入間が松谷の胸ぐらを掴んで揺さぶる私を止める。だって、こいつ許せないよ……。わざわざ最後まで取っておいたのに……。入間は松谷を起こして聞いた。


「お前、霊豪中の松谷だろ?どうしたんだ?」

「うう……いってー……って、そうだ!凛堂!」

「ああ!?呼び捨てか?」

「いえ、凛堂サン」

「なんだよ」

「頼む!岸那を……進を助けてくれ!!」

「どういうことだよ……」


 助ける?おおよそ、あの男に似つかわしくない言葉だな。あいつは十分強いだろ。


「進に妹がいるのは知ってるか?」

「ああ、入間に聞いたな。生まれつき足が悪いとか……」

「そうだ!その子は(かおる)ちゃんと言うんだが……その子が拐われたんだ!」

「拐われた!?誰に!?」

「……蛇腹だ」


 入間はぼそりと呟いた。蛇腹?ああ、岸那に返り討ちにあった奴か。やれやれ、ここまで外道だとは……。しかし……


「松谷。お前は岸那と親しいんだろ?何故助けてやらない?」

「俺じゃ、進の力になれねえ!」


 うん、それはよく分かる。君はびっくりするくらい弱いからね。


「頼む、凛堂!思い当たったのはお前しかいなかったんだ!」


 松谷頭を下げた。土下座だ。昨日殴りかかり逆に返り討ちにあった相手に頭を下げる……友のために……か。


「岸那はどうした?」

「もうバイクで向かっちまった!蛇腹の根城、郊外の廃工場だ!」

「松谷、お前はバイク持ってんの?」

「え?ああ、中古だが……」

「やれやれ、それじゃお姫様を救出する騎士の援護といきますか」

「凛堂……。恩に着る……」


 松谷は泣いていた。泣くんじゃないよ、男の癖に……と言いたいところだが、その涙は理解できる。誰かの力になりたいのに自分にはできない、その悔しさ。女の私にだって分かる。

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