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1発目 入学初日にトップ取り宣言(不可抗力なんだから)

 そして迎えた入学式……と言っていいのか、あれは?壇上に上がった校長自ら


「この学校は暴力が全てを支配する!若者よ、大いに励め!」


 と断言する始末。励めって、あんた……ハゲんのはあんたの頭だけで十分だっての。教師もそうそうたる顔ぶれだ。明らかに堅気でない者が何名かいるし、残りだって知れたものではない。生徒は生徒で至る所でガンつけや小競り合いが起きている。ここはいつの時代の不良高校ですか?世紀末ですか?お前らせめて初日ぐらいは大人しくできんのか?


 入学式が終わり教室に戻った私は気疲れからか机に俯してしまった。とりあえずはバレていないようだがこの先はどうなるのだろうか?そんなことを考えていたら頭の上から声がした。


「おい、お前大丈夫か?そんなんじゃ、この学校で生き残れないぜ?」


 私が顔を上げると目の前にメガネをかけた男の顔があった。比較的まともそうな顔をしている。というよりも周りが酷い。パーマーかけてる奴、眉を剃り落している奴、下卑た笑いを浮かべながら女の話をしている奴、明らかに薬をやってる奴……挙げればキリがない。そんな中でもまだこいつは『一般人』の部類に入るな。


「お前も頂点目指してこの学校に来たんだろ?」

「はあ?」


 おかしなことを言う奴だ。この学校の頂点って……『番長』とかいうやつか?馬鹿馬鹿しい。覇権争いでも何でも勝手にやってくれ!私の望みは唯一つ……無事平穏に卒業することだ。


「隠すなって。確かに今この学校は揺れ動いている。不動の番長、副島そえじま道我どうがが支配していた五年間が終わりを告げたからな」


 こいつ……勝手にペラペラしゃべるな……。誰だよ、副島って。五年間って、バッチリ留年してるじゃねーか。


「副島は一匹狼だった。無敵だったけど徒党を組まない奴だったらしい。だから正当後継者が不在なんだ。今、この学校は当に群雄割拠の状態だ。まあ、順当にいけば今年三年になる条定じょうさだ光一こういちだな。マーシャルアーツの使い手で、特に高速で繰り出される蹴りが武器だな。後は二年の『暴走機関』こと浜笠はまがさや『ジャックナイフ』春達しゅんだちってところかな?」

「わた……俺には関係ない」


 いや、ホント関係ないから!関係したくないから。それにしてもこいつ詳しいな……。なんか不良マンガとかでよくいるよな、こういう奴。やたら不良界の情報に詳しいけど本人は喧嘩が弱い、とかいう男。そういやこいつの名前聞いてないや。


「ふふふ……俺には分かるぜ!お前は強い。空手をやっているな」

「!?……分かるのか?」

「この『分析家アナシスト』こと入間いりま勇気ゆうきの目に狂いは無い!」


 お前とりあえず自分の二つ名を言いたかっただけだろ。しかし驚いた。こいつ、意外と人を見る力があるな……。その目を持っていながら何故私が女だと分からない?まったく……


「悪いが俺は頂点とか本当に興味ないから」

「お前がそう思うのは自由だが、無理な相談だな」

「なんでだよ」

「既に頂点を目指す一年達が争いを始めているからだ」

「?それが、わ……俺に何の関係がある?」

「俺の集めた情報によると、お前も頂点を目指す争いのリストに入っている」

「はあ!?」


 何でそんなことになってるんだよ!お前、いつそんな情報を集めたんだよ。今日は入学式だぞ。というか、お前の情報の中に私が女だという情報は何故無いんだ!?ホント……泣きたいよ……。


「何でそんなことに……」

「何言ってんだ、男なら誰だって最強を目指すものだろ?」

「私は乙女だ!」


 瞬間、静まる教室。あ、言っちゃった……。皆こっちを見ているな……。どうしようか困っていたら、入間が聞き返してきた。


「今、何て言った?」

「わ……俺は男だ、と言ったんだ!」

「そんなもん当たり前だろ。何言ってんだ、お前は?」


 入間は疑いの眼差しでこちらを見ている。まずい……このままではバレる。まだ入学初日だぞ。しかもこのままバレたら退学だけじゃ済まない。新聞にも載ってしまう。私が桜国高校じゃなくて殴獄高校に通っていることも祖母にバレてしまう。何かいい手は無いか?そう考えていた私は、おそらく人生史上最悪の発言をすることになった。この発言を私は後で文字通り死ぬほど後悔することになる。


「い、今のは俺がこの学校の頂点を目指すための……宣言みたいなものだ……」

「「オオーーーッ!!」」


 教室内が一転、どよめく。中には睨んでくる者までいる。言ってしまった。関わりたくなかったのに……。これはもう、今日家に帰ったらやけ食いだ!ポテチにコーラも付けてやる!

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