ジャスミンティーが好き
少しでも楽しんでいただければ、幸いです。
「ジャスミンティーが好きなの」
「ふうん」
「独特の香りがいいわ」
「そう。はまってるんだ」
「そう、はまってるの。マイ・ブームよ」
「ジャスミンって、名前の響きがいいよね」
「それも、はまっている理由の一つなの」
「……名前で?」
「そう、名前」
「……」
「ジャスミンティーの魅力に気付いたのは、二ヶ月くらい前。お一人様でたまたま入った中華料理屋さんで飲んだことがきっかけだったわ」
「注文したんだ」
「ううん、タダで飲み放題」
「いいね」
「いいでしょ?」
「それが美味しかったんだね」
「とっても。それ以来、私、毎日ジャスミンティーの事を考える程、ジャスミンティーが好きなの」
「相当なんだね」
「人類の画期的な発明の一つと言っても過言ではないわ。香りも良いし、身体にも良いし……」
「お勧めのジャスミンティーって?」
「そうね……やっぱりその中華料理屋さんで飲んだものが一番だわ」
「そんなに美味しいジャスミンティーをタダで出してくれるなんて、良心的なお店だね」
「運が良かったわ……」
「そうそう、思い出した」
「なに? 良い話?」
「タイミングばっちり、朗報だよ」
「あら、何かしら」
「ついこの間、ジャスミンティー専門店が駅前に出来たよ」
「ああ……」
「あ、なんだ知ってたんだね。まあ、知っているよね。それだけジャスミンティーが好きなんだから」
「いいえ、知らなかったわ」
「そう! じゃあ丁度良かった。今度一緒に行こうよ。ジャスミンティー好きのキミと行ったら、きっと面白いんじゃないかな、と思って」
「……」
「どうしたの?」
「ええと、いつ頃、かなと」
「今度の日曜日とか」
「今度の日曜日はダメよ」
「じゃあ、来週」
「来週も、ちょっと……」
「好きな日で良いよ」
「え」
「『え』?」
「そこまでは…」
「え!?」
「いえ、だって専門店に行く程じゃ」
「そうなの!?」
「それに、例の中華料理屋さんでしか、お店で飲んだこと無いし」
「……」
「はっきり言って、お茶にそんなお金掛けたくないし……」
「……」
「詳しい知識も、無いし……」
「……」
「でも、好きなの……」
「……そういうことなの」
「ごめんなさいね、私、ついつい」
「いや、いいよ」
「うん」
「中華料理屋さん行こうか」
「うん」
「飲んでみたいな、そのジャスミンティー」
―おわり―
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