ドタバタ学園生活~変態?紳士?変態紳士~
「なあ親友よ、お前は変態紳士って言葉に心当たりがあるか?」
いつもの様に教室で昼食をとっていると、目の前に座って弁当を食べていた親友がそう質問してきた。
変態紳士?なんだそれは。
予告状を出す怪盗紳士や、信頼する者同士が結ぶ紳士協定などなら分かるが、なぜ矛盾語である変態と紳士が結びついているんだ?
頭の中でそんなことを思いながら、俺は素直に知らないと答える。
「そうか、お前も知らなかったか…」
俺の答えに親友はいたくがっかりとした顔になる。
いつも馬鹿元気な親友にしては珍しい光景だ。
「それで、一体誰からそんな言葉を言われたんだ?」
親友がいきなり言いだした言葉だ、それなりのことがあったのだろうと思いそう尋ねると、親友が事情を説明を始める。
「実は今朝日課のトレーニングで近所を走り終わった後、いつものように公園でストレッチをしていたんだ。
走って汗をかいて、しかもこの天気だろう?ついつい汗だくのシャツを脱いで上半身裸になっていたんだ」
まぁ、こいつが毎日トレーニングしているのは知っているし、連日の猛暑で熱かったのもわかる。
それにこいつは何かと上半身裸になるのもいつものことだ。
だが、今のところそれが変態紳士とどう繋がるのか分からない。
「そしてな、汗を流そうと水道に近づいたら、急に水道管が破裂してな、全身ずぶ濡れになってな」
ふんふん。
「ズボンまでグッショリ濡れて気持ち悪かったから、ズボンを乾かそうと思い脱いだんだ」
…ん?ちょっと待て!!
「脱いだってズボンをか!?」
「そうだよ。でも大丈夫、今日はたまたま裸でも見苦しくない男の勝負下着、フンドシを身につけてたから」
いやいやいや、ものすごくいい笑顔で親友は言うが、そう言う問題じゃない!!
「でだ、服が乾くまでストレッチしていると、公園のそばの道路から女性の悲鳴が聞こえてな。俺は一目散に向かったんだ」
「……フンドシ姿で?」
「一目散に向かったんだからフンドシ姿で当たり前だろう?
そして道路に出ると、全力で走り去ろうとする男と、地面に倒れながら「引ったくりよ」と叫ぶ女性がいてな、俺は全力で男を追いかけて、そいつの背中に正義のドロップキックをくらわしたんだ!!」
犯人にとって、この馬鹿が近くにいたのが何よりも不運だっただろうな。
「その後、俺は男をとり押され、近くにいた人に頼み警察を呼び、女性に盗られたバックを笑顔で返したんだが、その時だよ女性が「あ、ありがとう…、へんた…、紳士さん」って言ったんだ」
あー、わかる。
その時の女性の心情が、痛いほどよくわかってしまう。
助けてくれたのは嬉しいけど、その助けた人がフンドシ姿だと、どう対処していいか分からないよな~。
そして変態と言いそうになり、慌てて紳士と言い直したんだが、この馬鹿はそのまま変態紳士と聞きとってしまったわけか。
「なあ、変態紳士ってなんだろうな?」
「さ~ね」
俺は余計なことを言わずに、言葉を濁すのだった。
追記
「あとさ、なぜか警察が来たとき、なぜか犯人の男じゃなくて、俺を取り押さえようとしたんだが、なんでだろうな?」
「……さ~ね」
世の中には知らなくていいことがたくさんある。