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魔導戦記リザレクション  作者: Lass
第一章 日常と暗躍-Life and shadow-
39/41

4

「へー、じゃあ何か? 今回私達に課された"課題"ってのは、ジャパニーズネズミを一匹ボコボコにしてやるって事なわけ?」

「一匹かどうかはまだわからないが、そういう事だろ。……ってか、お前がその結論に達するまで何度俺は説明をしたと思う?」

「あはは、ごめんごめん。あたしってば難しい事わかんないからさー」

放課後。

学園の所在地からは少し離れた、東京湾。

そこに浮かぶ海上公園で、学生と思われる二人組の男女が、そんな風にボヤきながら歩いていた。

この公園は東京湾の沖合に浮かぶ人工島の一角にある。

訪れた観光客用の貸し出しボートだろうか、水辺には小型のボートが多数係留されていて実に公園らしい。

公園の真横には海や陸から運ばれた荷物を大量に収納するための巨大な倉庫が多数あり、

大小様々なパイプをまわりにめぐらせた……何を作っているのかわからないほどに芸術的で、巨大な工場群。そしてレインボーブリッジが公園側から見渡せる。

園内には緑の芝が広がっており、ペットの犬を連れ散歩したり遊ばせたりする人や、単純にデートにでも来ているのだろうか。学生同士のカップルもよく見かけられる。

見た目だけで言ったら、彼らもそんなカップルと同じように見えるのだが、実際の所は全く違った。

公園の中心部にある大きな噴水広場で、二人はある人物を待っていた。

学生らしく、遊ぶ約束などはしていない。

かと言って、男一人女一人の所に一人何者かを追加して修羅場の出来上がり……だとかそういう展開が待っているわけでもない。


二人は、その"ある人物"とやらを襲うつもりなのだ。


学生らしく、それこそ宿題感覚で。

ちなみに彼らの学園内での序列は15位と、18位。

上位ランカーの中ではそれほどでないかもしれない。

しかし、今回は目標を確かな"敵"として認識してきている。かつて逆髪隼人が恭弥と交戦した際には多少なりとも、自らの慢心から油断をしていたのは間違いない。

それらの事から考えると、彼らのターゲットが仮に恭弥だったとして、楽な戦いにはならないと言えるだろう。

序列自体は上であるどころか、そもそも頭数が一つ多いのだから。

「そうは言ってもさぁ、あたしたちのターゲットは"たった一人"なんでしょ? 一応あたしたちも上位ランカーって奴なのに、ちょっと簡単過ぎる課題だとは思わない?」

「ほう、お前にしてはちゃんと頭を使った意見を吐いたな。久しぶりに見たよ」

「えへへー、でしょー?」

少女はそのセミロングの、ウェーブのかかった茶髪を揺らしながら、あくまで嬉しそうに、言った。

見た目だけで言えば中々に今風な風貌である。

「…………俺は何でお前が今喜んでいるのか知りたいよ」

少年の方は、肩をすくめながら言った。

しかし、

「まぁ、俺も正直恥ずかしくねぇのか。と聞かれたら言い返せない。それに、計画の概要はわかったが……わざわざ学園外、で狙わなければいけない理由だけはわからなかったからな」

「単純に、狙いやすいからじゃないの?」

「お前は一度に多くの事は考えられないのか、普通に考えて学園内のが手っ取り早いだろ。行動を追跡するにしても、都内はこんなにも広いんだからな」

「んー、果たしてそうかなー?」

少女は意外にも納得しない様子で訊ねる。

そして、そんな返しに少年の方も驚いた様子である。

「だってさ、学校外のが狙いやすいでしょ。あくまでこの計画は"他の生徒には知られちゃいけない"んじゃなかった?」

「…………っ!?」

「あれ? どうしたの、そんなびっくりした! みたいな顔して」

「いや、まさかお前に正されるとは思ってなくてな。正直恥ずかしくて穴があったら入りたいレベル……いや、これはもう生きてていいのか考えるレベルだな」

「さすがに酷くない!?」

二人は、こんな風にあくまで普通の学生のように振る舞いながら待っていた。

そして、

「おい、来たぞ」

「無視?」

数メートル先に、何気なく現れたのは、二人のターゲット。

日本製の魔導師で、学園側からしてみれば反乱分子の筆頭である少女が、

長い金髪を潮風にたなびかせながら、気怠そうな歩調でこちらに近づいてきた。

「まぁ、情報提供をしてくれた"第3位様"には感謝って事だね! 彼女にも、学園にも、どちらにも逆らえないのは確実だからー」

「そういう事だ。わかったならさっさと片付けるぞ」

「さっさとじゃつまらないよー、どうせなら楽しむくらいじゃないと」

「こっちはわざわざ居場所まで特定してもらっているんだぞ、万が一にも失敗は許されないと思え」

「だったらさぁ。楽しく、勝てばいいんじゃない?」

15位の少女は、ギラリと光るカタールを腰から抜きながらそう言い放った。

あくまで、二人を追って彼女が現れたのではなく、彼女が"来るはずの場所"に、二人が張っていただけの事。

だからこそ、この時点で彼女は、この二人に気が付く事はなかった。

飛んで火にいる夏の虫。

そう形容すべきこの状況だったが、二人にとっては想定外の事態を招くきっかけが……この場所には近づいていた事を今は知らない。

神宮雛じんぐうひな、彼女を探している人間は他にもいた。という事である。

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