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最終話:戦場の女神ーかくして自衛隊の活躍は、伝説となったー

【王都付近の草原】

「あれが王城なのか、ずいぶんと奇抜な見た目だな。」

「それに、城下町を囲む城壁もないのか。」


双眼鏡で王都を観察する私。

中世ヨーロッパの城塞都市を想像していた私は、王都と王城の異様さに驚いていた。

市街地を囲む城壁もなく、王城自体の石垣もない。

王城は巨大な空堀と、高くそびえ立つ土塁によって構成されていた。


そして、王城の中心には、巨大な西洋風建築物が建てられていた。

周囲が質素なだけに、チグハグな印象を受ける構造だった。


「なんだ......あれは......」


思わず口から出たつぶやきに、ミーナが答える。

「ヨシツネ様が、お造りになられた城だからです。」

「城と城下町の構造は、そのままの形で残されています。」

「しかし、城のシンボルとなる建物がありませんでした。」

「そこで、数代前の国王が国としての権威を示すために、中央の建物を建てました。」


「日本の城をベースにしているのなら、天守閣や石垣がないとおかしくないか?」

歴史オタクの藤本一等陸尉が、私の疑問に答える。


「大隊長が想像されているのは、戦国時代以降の城でしょう。」

「源義経の時代には、天守閣と石垣の両方を備えた城はありません。」


「なるほど、理解した。」

「この構造であれば、市民を巻き込まなくて済むな。」


「城と城下町の構造を前提にして、攻撃計画を立てる。」

「各中隊長及び反乱軍指揮官は、本部へ集合せよ!」





【王城上空】

「だんちゃーく、いま!」


ワイバーンの背に乗り、王城上空を飛行する前進観測員。

無線から弾着タイミングを知らせる連絡が入る。

連絡と同時に、王城内部で大爆発が起きる。



~~~~

ワイバーンは飛行時の揺れが激しく、かつ数を揃えることも難しい。

揺れにより、通信魔法を含む全ての魔法を使用するのが困難であった。

その欠点により、戦争で用いることはできないのが、この世界での常識であった。


しかし、無線機と組み合わせることにより、用途が生まれた。

上空からの観測任務に就く、前進観測員とワイバーンを操る御者。

反乱軍への協力者から受け取ったワイバーンに乗り、二人は飛び立った。

~~~~



「本丸付近の広場に命中!効果不十分!」

「修正指示、北100m東20m!」


前進観測員が、第一斉射の戦果報告を行う。

観測員の報告を受け、照準の微調整を行う砲兵隊。

すぐに第二斉射が撃ち込まれる。


「全弾中央建築物に命中!敵軍被害甚大!」

「修正射は不要と思われます!」

「了解した。引き続き弾着観測を行え!」


無線からの声が鳴り響く。



「全砲、効力射に切り替え!」

「撃って撃って撃ちまくれ!」


大隊長の指示を受け、次々と火を吹く榴弾砲。

撃ち出された砲弾は、破壊の雨となって王城に降り注ぐ。





【王城本丸】

ドカーン!ズドーン!


爆発音とともに、全てが破壊されていく。

中央建築物はすでに穴だらけとなり、崩壊寸前。

その様子を観測し、他の建築物にも砲弾が撃ち込まれる。


兵舎に一発の砲弾が命中し、一瞬で瓦礫の山と化す。

石造りの武器庫は、一発目は耐えたものの、降り注ぐ砲弾により崩壊する。


「クソ、なにが起きてやがる。」

「な、なんなんだこれは!」


慌てて外に出てきた兵士達は、変わり果てた城内に言葉を失った。

そこに降り注ぐ、無慈悲な砲弾の雨。


「ひとまず、ここを離......グオー!」

「落ち着け!態勢をたて......ギャー!」


ある者は至近弾の爆風により、空高く吹き飛ばされる。

またある者は、砲弾の破片で身体を引き裂かれる。

既に城内は死屍累々となっていた。



木造建築物に引火し、あちこちで火災が発生する。

そして、数発の砲弾によりトドメを刺される中央建築物。


ドガガガガ


大きな音を立てながら、一気に崩落する。

崩壊した建物の残骸が、兵士と生き残った建物を破壊し尽くす。



あまりにも一方的な攻撃。

先の戦いで生き延びた兵士達。

反攻作戦のために王城まで退却した。

だが、それは叶わなかった。


「平民どもに......一矢報いることすらできないのか......」

「俺達は......もう終わりなのか......」


彼らは絶望の声を上げながら、次々と倒れていく。



先の戦いを生き延びた、一人の指揮官が活路を見出す。


「地下だ!地下ならば安全かもしれない!」

「俺達は決して降伏しない!最後の一人まで抵抗をやめるな!」


わずかな生き残りを連れて、地下牢に向かう指揮官。

地下牢までたどり着けない者は、爆発でできたクレーターの中に逃げ込む。

またある者は、堀の中に逃げ込む。


彼らは最後まで抵抗すべく、生き残りを図る......



~~~~

『籠城する』この選択自体は間違っていない。


だが、それは相手が火砲を所持していない場合の話だ。

曲射により、堀や土塁を飛び越えて破壊をもたらす火砲。

火砲相手では、全ての防衛設備が意味をなさなくなる。


本来であれば、敵の猛攻を防ぐはずの設備。

しかし、今は監獄の壁と化して、兵士達の逃げ道を塞いでいる。

~~~~



地獄絵図と化す本丸。

だが、追撃の手は緩むことがない。

破壊の雨は二の丸や三の丸、そして外周の土塁付近にも降り注ぐ。

もはや、生き残ることすら困難であった。



「神の怒りだ......傲慢な俺達に......女神の鉄槌が下ったんだ......」


一人の兵士がつぶやく。

彼の目には、砲撃が神の怒りの雷に映ったようだ……





【王都付近の草原】

砲撃により、崩壊していく王城。

その光景を見ながら、私は最後の命令を下す。


「砲兵隊!外周の土塁へ攻撃!」

「反乱軍は作戦通り、兵力の半数を突入部隊として編成!」

「砲撃によって土塁が崩壊すると同時に、城内へ突入!」

「残りの反乱軍は、引き続き砲兵隊の護衛を行え!敵の奇襲に備えろ!」


「民衆の手によって、王政にトドメを刺すのだ!」


そして、最後に付け加える。


「私も、反乱軍とともに城内へ突入する!」

「もしも、国王もしくは敵指揮官が生きていた場合は、全軍への降伏命令を出させる。」

「そのための交渉役として、私が直接行く。」


「可能であれば......皆殺しは避けたい。」

「だが、国王が戦死している。もしくは、降伏に応じない時は......」

「その時は......全ての敵を掃討する!」


決意を表明した後に、部下達に告げる。


「不在の間の指揮は、北見一等陸尉に一任する......」

「私が戻らない場合は......大隊長として隊員たちを導け。」





~~~~

ドオン!ドオン!


轟音とともに撃ち出される榴弾。

直撃し、そびえ立っていた土塁は、またたく間に崩壊する。


「突入部隊!土塁の開口部から城内へ侵入しろ!」

「ここから先は、同士討ちを避けるために砲撃は行わない。」


「諸君、自衛隊の仕事はここまでだ!」

「最後は、君たち民衆の手で、王政にトドメを刺すのだ!」



全ての準備を終わらせ、私は叫ぶ。


「総攻撃開始!この内戦を終わらせるぞ!」





【王城:本丸地上部分】

全てが破壊し尽くされた本丸。

そこを駆けていく、多数の反乱軍兵士。

わずかな抵抗を受けつつも、ほぼ無傷のまま前進を続ける。


「来たぞ!今こそ雪辱を果たせ!」

「突撃!せめて......せめて一矢報いて、名誉の死を遂げるのだ!」

「殺せ!一人でも多く道連れにしろ!」


反乱軍の前に立ちふさがる、王国軍の残党。

砲撃によってできた穴から、百人ほどが攻撃を仕掛ける。

本丸外周を囲む堀からも、同数の敵兵が出現する。


正面と背後から攻撃を受ける反乱軍。

王国軍による、最後の組織的抵抗が始まる。



「反撃しろ!奴らを押し潰せ!」


アンドリューの号令により反撃を開始する反乱軍。

だが、敵も決死の覚悟で攻撃を続ける。


「これが......誇り高き我らの剣だ!」


「グオ」

「グハッ」

「グオ」


繰り出される斬撃。

一人の騎士の斬撃により、次々と反乱軍兵士が倒れていく。


「怯んだぞ!押せ!」


叫びとともに、突撃を仕掛ける残党。

だが、その刃は届かなかった。


「槍兵隊!突撃を食い止めろ!」

「弓兵隊!後ろの敵に攻撃を行え!」



槍衾と、降り注ぐ矢の雨。

残党達は、またたく間に狩られていく。


「グッ......無......」

「降伏などもってのほか......名誉は......守れた......」


全ての敵兵を殲滅した反乱軍。

彼らは中心部へ向けて進軍する。





【王城:地下牢】

(なぜ......朕がこのような目に......)


ヨセフの機転により、地下牢に避難したヨシナガ王。

砲撃から逃げ延びた兵士達とも合流した。

だが、この場にいるのはたった四十人の残党だけ。

混乱の中逃げ延びたためか、武器すら所持していない者も多数いた。


「ヨセフ!今すぐ朕をここから脱出させろ!」

「この生き残りどもを囮に使うのだ!」



誇り高き国王の惨めな叫び。

それを聞いたヨセフは、静かに命令する。


「地上の爆発音が消えましたな。」

「おそらく敵軍が城内に突入してくるようですな」

「おぬしら、敵を迎撃して時間を稼ぐのじゃ。」


「ヨセフ様、承知しました。」


命令を受けて、外へ飛び出していく兵士達。

彼らが出ていったのを確認し、吾輩は王に告げる。



「王よ、もはや逃げ場などございませぬ。」

「反乱軍に捕まったら、惨めな最後を迎える事になりましょう。」

「であれば、今のうちにご自害なされませ。」


「ヨセフよ......冗談はやめろ。」


青ざめる王に対し、吾輩は続ける。

「冗談ではありませぬ......ご自害なさらぬおつもりなら、吾輩の手で......」


吾輩の言葉を遮るヨシナガ王。

「待て、やめろ......お前ら、こやつをひっ捕らえろ!」


しかし、吾輩以外の者は、全員迎撃のために出払っていた。

助ける者がいなくなったヨシナガ王、彼に向けて吾輩は剣を振るう。


「お覚悟を!」

「グオ......やめろ、死にたくな......」



ヨシナガ王の死亡を確認した吾輩。

そして、つかの間の物思いにふける。


(これで、王政は打ち砕かれた......)

(この国の象徴だった王族は、一人を残していなくなった......)

(忘れ去られた『ミナモト』の名を受け継ぐ、『ミーナ様』)

(もうすぐ反乱軍が来るじゃろう......最後に、ミーナ様の正体を彼らに伝えまする。)

(願わくば、彼らが信じてくれればよいのじゃが......)



ドガアン!


激しい音とともに、地下牢のドアが吹き飛ぶ。


「伏兵を警戒しつつ進め!」

「残党からの反撃を受けた以上、ここでも抵抗が予測される。」

「総員突入!」


田中二佐の指示のもと、反乱軍がなだれ込んでくる。

近づいてくる彼らに、吾輩は武器を捨てて両手を上げる。


「降伏しますぞ......」

「騎士としてあるまじき行為じゃ......だが、吾輩にはやるべきことがあるからの。」


(吾輩が国王の崩御を知らせることができれば......王国軍の生き残りも、考えを改めるやもしれぬ......)



吾輩の言葉を聞いた、指揮官。

彼は銃を突きつけて、吾輩に指示する。


「ゆっくりとこちらに来い!」

「そこに両手を上げたまま座れ!」

「怪しい動きをしたら撃ち殺す!」


指示に従い、座り込む吾輩。

すぐに両手に手錠が掛けられる。


「警戒しつつ付近を掃討!私はこいつから王の居場所を聞き出す!」


兵士達がなだれ込む中、指揮官が吾輩に話しかける。

「国王はどこだ!後ろに倒れている人物がそうか?」


「その通りじゃ......ヨシナガ王は崩御なされた。」

「最後に......二つほどよいじゃろか?」


吾輩はミーナ様の正体と、王の崩御を用いた計画を話した。


「『王の死を用いて、残党の抵抗の意志を挫く』という計画は問題ない。」

「私も、王国軍残党の抵抗を終わらせる方法を、考えていたところだ。」


指揮官は怪訝な顔で続ける。

「だが、ミーナの話は別だ。」


「ミーナの父は、獣人との間に子をもうけたことで、王族の傍流でありながら追放された。 」

「そして、王族にのみ許された『ヨシツネ』に似た名前を名乗れなかった。」

「だが、『ミナモト』は忘れ去られていたから、今の名前になったと…...」

「この話は信憑性がない。なにか証拠はあるのか?」


指揮官の疑問に吾輩は答える。


「王都の中央図書館に、王家の家系図がありまする。」

「そこに、ミーナ様のお父上の名前と、追放先が書かれておりまする。」


「わかった、後で部下に調べさせよう。」



その時、反乱軍兵士達が戻ってくる。


「敵残党見つかりませんでした!」

「こいつを殺せば、ここの掃討も完了します!」


(死ぬのは怖くないが......せめて、最後に家族に会いたかったのじゃ......)


死を覚悟した吾輩。

指揮官は、反乱軍兵士に予想外の言葉をかけた。



「ここで殺すのはダメだ!まだ利用価値がある。」

「王国軍の残党は我々の話を聞かないだろう......」

「ここでの勝利を聞いたところで、降伏することはないだろう。」


「だが、こいつは最後まで王のそばにいた、身分の高い人間だ。」

「こいつの命令なら、ある程度は言うことを聞くはずだ!」

「今は生かしておいて、国を安定させるために利用する。」


一呼吸おいて続ける。


「君達が彼を憎む気持ちはわかる。」

「だが、我々が今やるべきことは、ただ殺すだけではない!」


「民衆の手によって、この国を統治する!」

「そのための行動を行う!違うか?」



指揮官の言葉に、反乱軍兵士達は納得する。

彼らに連れて行かれる直前に、指揮官は私に小声で話しかける。


「本当は、私は王国軍兵士達を殺したくなかった。」

「せめてもの償いとして、あなたを助けた。」

「本当は『都合よく利用させる』という提案もしたくなかった。」

「だが、こうでも言わないと彼らは従わない。」

「生き残るためだ、すまないが彼らに従ってくれ。」


その言葉に、吾輩は思わず目を見開く。

指揮官の背中を見ながら、悲しみではない涙を流した。





【5年後:王都】

民衆の手によって内戦は終結した。

五年の歳月が流れ、「王政」から「共和制」へと政治体制も変化した。

王政が倒れて二年ほどは、国中の混乱が収まらなかった。


そこで、第一大隊から組織運営に関する知識が伝えられた。

そして反乱軍指導者達により、国の立て直しに成功した。

まだ復興半ばではあるものの、政治体制等は盤石となった。


共和国樹立に協力したものの、支援に徹した第一大隊。

他国である共和国に、必要以上に干渉しないように気を配っていた。

それが、『自衛隊』としてできる最大限のことなのだから。


だが、これ以上の自衛隊による支援は不要だろう。

民衆の手による統治が実現したのだから......




ミーナは図書館に残された記録から、王家の血を引くことが証明された。

また、砲兵隊の危機を救った功績も評価された。

それにより、国の象徴としての役割を任された。


『卑しい』とされていた獣人が、国の象徴となったことで、この国は過去と決別したのだ。



ヨセフの方は、利用される形であったが、共和国樹立に多大な貢献を残した。

その功績により、処刑を免れ、家族とも再会した。

騎士の立場は奪われ、政治的な力もなくなった。

しかし、今は家族とともに幸せな老後を過ごしていた。



~~~~

砲兵隊の活躍はいつしか『女神達の鉄槌』と呼ばれるようになる。

そして、第一大隊自体も『戦場の女神』と呼ばれ始めた。


圧倒的な火力で、勝ち目のないはずの戦況を打開していった。

その活躍は、悪虐非道な王政への怒りの鉄槌にみえたためだという。


奇しくも現実世界と同じく、砲兵が『戦場の女神』と呼ばれることになった。

新たな伝説が生まれた瞬間であった。


そんな彼らにも帰るときがやってきた。

~~~~


ある日、記念式典のために、第一大隊の全員が集合していた。

彼らの後ろには、大隊の旗と共和国の旗が掲げられていた。


「隊長さん、どうぞ。」

一人の少女が、私に花束を渡す。


「ありが......これは、まさか!」


感謝の言葉を言い終わる前に、私の視界が白い霧に覆われる。

気がついた時には、目の前に見覚えのある光景が広がっていた。





【東富士演習場】

「を......返事をお願いします!田中二佐!」


床に落ちた受話器から、声が聞こえてくる。

見慣れたテントの中に、私は立っていた。


(夢だったのか?)


そう思う私だった。

だが、手には先ほど渡された花束が握られていた。

机の上には、大隊の旗と共和国の旗が置かれていた。


「夢......じゃないのか?」


つぶやく私に、首を縦に振る隊員たち。

近くに停まっていた、砲弾運搬用のトラックに目線を移す。

トラックの荷台には、砲弾の箱が山積みになっていたはずだ。

しかし、今はほとんど空になっていた。



「おい!聞こえているのか!二佐!」


受話器から怒りの声が響く。

状況を確認した私は、それに応える。



「申し訳ない、異常事態が発生した。」

「師団長に連絡してくれ、報告すべきことがある。」

「我々は......異世界にて大規模戦闘を行った!」


受話器を置き、私は司令部へと走っていく。

花束と、共和国の旗を携えて......



完

このシリーズは、ここで一旦完結です。



今作は、人生初のオリジナル作品です。

そのため、荒削りな部分も多々あるかと思いますが、最後まで読んでいただきありがとうがざいます。


反響が良ければ、30話前後の続編を書こうかと思います。

続編では、戦車や攻撃ヘリなども出すことを予定しています。

ですが、砲兵主体の話にする予定です。

続編希望の声が少なかったら、別作品に構想の一部を移植予定です。



楽しんでいただけた方は、高評価していただけると助かります。

また、二週間後を目安に同ジャンルの別作品を投稿予定です。

よろしければ、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

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