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第三話:「弾種散弾!目標、敵騎士団!撃ち方始め!」

自衛隊の前に現れる、王国軍の騎士達。

その数、およそ二万。

対する自衛隊はわずか四百人。


敵騎士団に対し、遂にFH70榴弾砲が火を吹く。

はたして、絶望的な戦力差を前にして、勝利を収めることはできるのか?

【20分前:フソウ王国辺境地域】

「敵軍現れました!距離2000m!」

「まもなく接敵します!」


迎撃態勢を整えた第一大隊。

森の中から、無数の騎士たちが姿を現した。


あまりの敵兵の多さに、部下たちの表情が強張る。

その動揺を鎮めるべく、全隊員に通達する。


「我々の火力を持ってすれば、奴らを叩きのめすことは容易だ!」

「諸君らが動揺する気持ちはわかる。」

「だが、我々は先の戦いで、奴らを一度叩き潰した。」


息を吸い、続けて言葉を並べる。

「であれば、今回も我々が負けることなど万に一つもない!」

「訓練の日々を思い出せ!」

「奴らに我々の力を見せつけるのだ!」



隊員たちの様子を眺める。

どうやら、冷静さを取り戻したようだ。


(この様子なら、戦闘に支障は出なさそうだな。)

(うまくいってくれ......この賭けに負けたら......我々は全滅する。)


隊員たちへの鼓舞はうまくいった。

だが、私の胸のうちには不安が渦巻いていた。

部下を不安にさせないために、表面上は冷静さを保っていた。

しかし、最も動揺していたのは、私自身だったのかもしれない。


(大丈夫だ......作戦通りやれば必ず勝てる。)

自分自身にそう言い聞かせ、戦闘開始の時を待った。





【1時間30分前:破壊された街】

「現在地から彼らの拠点の間には、森林が広がっている。」

「だが、拠点周辺は、森林が途切れて空き地となっている。」

「そのため、反乱軍が根城としている洞窟近くに布陣する。」


「反乱軍拠点近くの空き地に布陣する。」

「敵が進路を変えなければ、森を抜けて来ることになる。」

「森を抜けて来て、ある程度疲弊したところを迎撃する。」

「また、この場所で、反乱軍との合流を図る。」


「これが、本作戦の概略だ。」


あまりにも非常識な作戦に、北見一等陸尉が疑問を呈する。

「正気ですか?大隊長!榴弾ではなく、散弾を使用するのですか?」

「散弾の有効射程は、500m前後です!そんな距離で交戦するのですか?」


「そのとおりだ。北見陸尉。」

「たしかに、榴弾を用いた長距離砲撃が、最も安全かつ最も有効な攻撃だろう。」

「だが、少なくとも今回に限っては、『最善手』ではない。」


「『最善手』ではない、とはどういう意味ですか?」

今度は、藤本一等陸尉が疑問を投げかける。



隊員たちの疑問に、この作戦の肝となる部分を話す。

「ただ倒すだけではダメだ。」

「『誰の手』によって、一方的に蹂躙されたのか。」

「それを、奴らに知らしめる必要がある。」


一呼吸置き、続ける。

「力を見せつけることにより、この国の内戦継続の意思自体を挫く。」

「これにより、可能な限りの早期講和を実現する。」

「この目的であれば、榴弾よりも散弾が適している。」

「そのため、これが最善手だ。」


藤本がまたしても質問する。

「しかし、散弾は数があまりありません。」

「使い切ることになると思われます。」


「最もな意見だ。藤本陸尉。」

「確かにここで使い切ると、自衛手段を一つ失うことになるだろう。」

「だが、仮に内戦が長引けば、どちらにせよすぐに在庫がなくなる。」


「そのため、賭けになってしまうが、ここで集中運用するのが効果的だ。」



藤本が答える。

「作戦の趣旨を理解しました。異論はありません。」


「北見陸尉。君も理解してくれたか?」

「問題ありません。大隊長。」


周りを見渡し、他に意見が出ないことを確認し、号令を出す。


「総員直ちに移動開始!後退し、敵軍の包囲を抜けるぞ!」

「反乱軍の近くに布陣し、迎撃体制を取れ!」




【30分前:フソウ王国辺境地域】

「なあ、ミーナちゃん。本当にあれで全員なのかい?」

目の前に布陣するヒノモトの軍隊を見て、呆れる私。


「その理解で間違いはありません。アンドリューさん。」

ミーナちゃんの代わりに、護衛役の女性兵士が答える。


(いくらなんでも、あの人数じゃ話にならんだろ。)

(それにヒノモトでは、女まで兵士になるのかよ。)


洞窟に潜んでいた私たち。

『どうやれば逃げ切れるか』を話し合っていた時、ミーナちゃんとこの人たちが現れた。

殺されたと思っていただけに、彼女と再開した時は嬉しかった。

それに、伝説の国からの援軍だと聞いた時は、全員で喜びあっていた。


期待を胸に、ここまでやってきた私たち。

だが、目の前の軍勢は、軍勢とはとても呼べないほどの人数しかいなかった。


「たったの400人くらい兵士と、デカい機械が10個......」

「それにあれは......馬のいない馬車か?それがいくつか。」


「こんな少人数で、二万人の国王軍に勝てると思うのかい?」

「どう考えても無理だろ!」



私の疑問に、黙り込むミーナちゃん。

彼女も、勝てないと思ったのだろうか?


「僕とミーナちゃんは、彼らがどうなるかを見届ける。」

「君等は、一旦洞窟まで戻って、逃げる準備をしてくれ。」


生き残りに、指示を出す私。

一応、最後まで様子を見届けることを決める。





【現在:フソウ王国辺境地域】

「敵軍との距離500m!散弾の射程に入りました!」


「まだだ......まだ引きつけろ。距離300mまで待て。」

「偵察部隊は監視を継続。敵の別働隊がいないか警戒しろ。」


指示を出した直後、 岡田二等陸曹からの通信が入る。

「申し訳ありません、大隊長。反乱軍の説得に失敗しました。」

「半個大隊に満たない人数を見て、撤退してしまいました。」


「想定内だ。この戦闘結果を持って、再度交渉してくれ。」

「了解です。大隊長。」


反乱軍の戦力は、この戦闘では期待できない。

だが、それを嘆く暇は無かった。



「距離300!」

双眼鏡で監視していた隊員が叫ぶ。



「弾種散弾!目標、敵騎士団!撃ち方始め!!」

「奴らを薙ぎ払え!!」


ドオン!ドオン!ドオン!

号令とともに、十門の大砲が一斉に火を吹く。


巨大なショットガンと化した大砲。

放たれた無数の金属球が、突撃を続ける騎士達に襲いかかる。


「グオオオ!」

「ガハッ!」

「ウギャ!」


何が起きたのかすらわからないまま、次々となぎ倒される騎士達。

一斉射ごとに、数百人の騎士が消し飛んでいく。


わずか十門、されど十門。

現代火砲の圧倒的な火力により、またたく間に被害が拡大していく。



戦果を双眼鏡で確認し、賭けに勝ったことを確信する。

そして、さらに士気を上げるため、号令を下す。


「効いているぞ!このまま撃ち続けろ!」

「敵最前列への砲撃を継続!敵軍の突撃を打ち砕け!」




~~~~

それでも騎士達は、圧倒的な戦力を維持している。

戦友の死体を踏みつけながら、再度突撃を行う。


「怯むな!奴らは少数だ!突撃!」

「俺たちが負けることなどありえない!」


だが、それは無駄な努力だった。

倒れた死体に足を取られる、最前線の兵達。

千人隊長の威勢のよい号令を尻目に、突撃の勢いが収まってしまう。


ドン!ドン!ドン!ドン!


そこに幾度も襲いかかる、鋼鉄の雨。

各砲ごとの射撃に切り替え、射撃速度を上げた砲撃。

優勢だったはずの国王軍は、最前線の部隊が全滅している。


さらに襲い来る、熾烈な砲撃。

遂には陣形が崩壊してしまい、突撃の勢いが消されてしまう。

それどころか、一部の兵士は命令を放棄して、逃げ出し始めてしまう。


「お前ら!騎士としての誇りはどうした!」


前線で指示を続けていた千人隊長。

部下を鼓舞するも、全く効果がない。


「お前ら!なにをやって......ギャアー」


そして、彼の元へ届く鉄の嵐。

彼が最後に聞いたのは、至近距離からの砲撃音だった。



ドン!ドン!ドン!


それでも砲撃は止まない。

あちらこちらで、指揮官を失った騎士達。

恐怖から、逃亡を選択してしまう。


誇り高き騎士団は、惨めな敗残兵へと変貌してしまう。




~~~~

「各砲!射撃継続!」

「撃って撃って、撃ちまくるのよ!」


北見中隊長の指示のもと、砲撃を続ける砲兵たち。

辺りには、砲弾が入っていた木箱の山ができていた。


「敵軍が距離500まで後退した!弾種を榴弾に変更し、追撃を継続しろ!」

「敵軍中央および後方への砲撃を行え!」


無線機は続ける。

「「圧政に苦しむ民衆を救うのだ!!」」

「「そして、生き残るのだ!!」」


「聞いたわね。最後の一押しを行う!」

「私達の手で、民衆を救うのよ!」


大隊長からの無線を聞き、部下に指示を出す北見。

第二中隊の五門の榴弾砲全てが、砲撃準備を整えたのを確認する。


「目標敵軍中央!撃ち方始め!」

「敵軍を粉砕し尽くすのよ!」


時を同じくして、第一中隊の五門の大砲も火を吹く。

合計十門の大砲が、トドメを刺すべく最後の攻撃を行う。





~~~~

「なぜ、たった数百人の敵に押し返されているんだ!この無能共め!」

「吾輩の手柄を台無しにするのか!」


あまりの事態に、怒鳴り散らすアシモフ将軍。

圧倒的な兵力差があった。

手柄は約束されていたはずだった。


だが、その見通しは予期せぬ敵により、軍勢ごと粉砕されていた。


「お前ら......お前らが腰抜けだったせいで......」


怒りに任せて、部下を怒鳴りつけようとしたときだった。


ドカアン!


安全だったはずの本陣に一発の榴弾が飛び込む。

爆風で吹き飛ばされる幕僚たち。

アシモフ将軍が起き上がると、幕僚たちの姿は何処にもなかった。


「い、一体何じゃ?何が起きたのじゃ??」

「これは......一体?」


奇跡的に無傷だったアシモフ。

だが、他の面々は全員息絶えていた。


(まずいまずいまずい。このままでは吾輩まで!)

「誰か!誰かおらぬか!直ちに馬車を用意しろ!」


部下を全員置き去りにして、将軍は王都に向けて逃亡していった。


指揮官を失い、統率が取れなくなった国王軍。

二万人の兵員のうち、離脱できた人数はわずか二百人ほどであったという......




~~~~

「これが......ヒノモトの軍隊の力なのか......」


『どうせすぐに殲滅されるだろう』そう考えていた私。

だが、その予想はすぐに覆された。


突撃する王国軍を、轟音とともになぎ倒す異世界の軍隊。

王国軍は突撃を諦め、退却を試みる。


だが、退却する敵軍の中心部で、大爆発が何度も起き、それすらも許されない。

完膚なきまでの打撃を受ける敵軍。


大規模魔法でも、ここまでの破壊をもたらすことは無いだろう。

そんな常識外れの火力を目にし、自分自身の正気すら疑ってしまう。


「ミーナちゃん。これは現実なんだよね?」

「アンドリューさん。正直私にも信じられません。」



「ヒノモトの軍人さん、疑ってしまって申し訳ありません。」

「撤退した生き残りの人たちにも、声をかけてきますので......力を貸してください!」

「そして、我々はあなたがたに......全面的に協力いたします!」




~~~~

「撃ち方止め!諸君、我らの勝利だ!」

「交渉に向かっていた、岡田たちからも連絡があった。反乱軍も共闘に応じた!」


部隊のあちらこちらから、歓喜の叫びが上がる。


『本当に勝てるのだろうか?』

不安に押しつぶされそうだった隊員たちは、ようやく安堵することができたのだ。

そして、自分たちが成し遂げた完全な勝利。


第一大隊の各員は、その勝利に沸いていた。

だが、勝利の立役者である私は、複雑な感情を抱いていた。


(これで、我々の力を示すことはできた。)

(敵だったとはいえ、相手は人間だ。)


後悔しながらも、自分の決意を思い出す。


(既に戦うことは決め、それに民衆を救わねばならん。)

(であれば、早期講和を実現し、犠牲を最小限にするべきだ。)

(それが、私にできる最大限のことなのだが......)





【王城:玉座の間】

「で、貴様はおめおめと逃げてきたと。」

「ヨシナガ様、奴らは我々の知らぬ魔法を使ってき----」

「アシモフ、貴様も騎士の端くれなら、言い訳を並べるでない!」


ヨシナガ王の前で、言い訳を並べるアシモフ将軍。

その様子を見ながら、我は物思いにふける。


(聞くところによると、相手はヒノモトの軍隊らしい。)

(正義は我らではなく、彼らの方にあるのであろう。)

(この国はおしまいかもしれない......)


(だが、この国の騎士として、最後まで使命を果たさねばならん......)

(王に囚われた、我の家族を守るためにも。)


そんな中、呼び出されていたマーティン将軍がやってくる。


「マーティン将軍。貴様に討伐を命じる。」

「切り札の魔導部隊も貸してやる。」

「奴らを殲滅してこい!」


「御心のままに、ヨシナガ王よ。」


王からの命令を受けて、すぐに出撃するために立ち去ろうとする。

その将軍に、我は話しかける。


「お待ちくだされ、将軍。」

「奴らには、我々の戦法は通じぬやもしれません。」

「我に秘策がございます。」


「ほう、秘策とな。言ってみろ。」

「ええ、まずは......」




~~~~

勝利に沸く第一大隊。

そこに送り込まれる、新たな刺客。


第一大隊はどうなってしまうのか?

早期講和は実現するのか?




第四話に続く。

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