7 街歩き
たまに思う、町に行きたいと。
いつもと同じ日々だけでは私もあきちゃう。
(殿下にだって庶民の生活を知らない王族に育って欲しくないし)
心で言い訳をしながら親を説得することにした。
「ねえお父様、いいでしょう」
行くのはメインストリートだけにすること、護衛を複数つけること、店と店の間は馬車で移動することを条件に許可が下りた。
「うわあ楽しみだな!」
殿下は椅子の上でピョンピョンはねていらっしゃる。
普段はおきて支度を整えるのに時間をかける彼だが、今日は私より先に朝食の席に着いていた。
朝ご飯もすぐに平らげ私を急かす。
「行ってまいる」
馬車に乗る時はちゃんとエスコートしてくれた。
「さすがオーディナル様ですわ」
できた時はすかさずほめなくては。
「それでどこに行くんだ?」
侍女から情報は仕入れてある。まずは屋敷から一番近い小間物屋だ。
扉を開けるとカラン、と音がする。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは」
店員とあいさつをかわす。
店内には手芸用品や文房具が並んでいた。
「欲しいものがあったら、カウンターまで持って行ってお金をはらうのですよ」
使用人に任せても良いけど、今回は殿下の社会見学的な意味がある。
自分で買い物をさせる計画だ。
他は私自身が買い物したいからだけど。
かわいい文房具やリボンを手に、私は注文をやって見せる。
「ボクもやる」
さっそく殿下も手におもちゃを持ちやって来た。
「銅貨3枚でございます」
「うむ、自分ではらうぞ」
私から財布を受け取って銅貨を数えた。
「初めてなのにうまくできましたね」
買い物が終わったらすぐほめる。
ほめられれば誰だって気持ちがいい。
これで成功体験が1つ増えただろう。
その後はカフェに行ってお茶した。
ここでも殿下は自分で料金をはらいたがる。
もちろん財布はレジーナのだけど。
「レジーナ知ってたか、銀貨ではらうと銅貨のおつりがもらえるんだぞ」
「まあそうですのね」
おバカな発言は笑い出さないように気をつけなくちゃ。
この1日でオーディナル王子は色々学べたようだ。
最後に本屋へ行って物語を色々見せてもらう。
前世で大人になっている身としては、親が用意してくれる子供向けの本では物足りない。
ぶ厚い本を購入すると、王子はまじまじと聞いてきた。
「それ全部読むのか? 字ばっかりだぞ」
子供なりの意見にクスッとする。
買い物を全部済ませ帰ろうとしたその時。
「お願いします、母を助けて下さい」
「うるさい、薬が欲しかったら金を持って来るんだね」
向かいの薬屋から女の子が追い出されていた。
あきらかに貧民の身なりだ。
気の毒だが見すごそうとしていた私の側からオーディナル殿下が離れた。
「どうしたんだ?」
うちの王子はまっすぐな良い子だった。世間知らずではあるし、かわいい女の子に弱いだけかもしれないけど。
「お母さんが病気で、薬師のおばさんがこれ以上はちゃんとした薬じゃないと効かないって。でもあたしお金がないの」
貧民が病気の時に頼るのは魔女や薬師だ。
高価な魔法薬を取り扱う店もあるが、大抵は薬効成分をふくむハーブが安価に売られている。
「そうか、じゃあボクが買ってあげよう」
(殿下、それ自分でもっと買い物したいからですよね)
私はしぶしぶ店について行く。
「おい、この子の母親の薬を渡せ」
お店の人は目をパチパチさせた。
そりゃ、いきなり身分の高そうな子女が入店したらそうなるよね。
「金はボクがはらう」
「それでしたら構いませんが‥どのような症状でしょう」
王子がみすぼらしい少女を振りかえった。
「えっと‥咳と熱がすごくて。パンも食べられなくて」
「じゃあ咳止めと熱冷ましだね。あとは栄養。チキンのスープでも作ってやりな」
「ははい、さようなら」
だとうな処方だろう。




