6 野菜も食べてね
ワンパク王子につき合った私は、夕食までにはもうぐったりしていた。
疲れた体に無理して食事をつめこむ。
食欲はないけど食べなければ体が持たない。
ふと隣に座る王子を見ると野菜ばかり残していた。
気持ちは分かる。
この世界の料理は野菜がマズイ。野菜をおいしく調理する意思がないのでは? と誤解するレベルなのだ。
ブロッコリーは固すぎるしホウレンソウはゆですぎでぐちゃぐちゃ。ニンジンの臭みは多いし豆のスープは塩味しかしない。
マズイからか量も付け合わせ程度だ。メニューも少ない。
これでは栄養が偏ってしまう。
それに気がついてから私は我が家の料理人を鍛えた。
ブロッコリーとホウレンソウはゆでる時間を変えること。ニンジンは薄切りにしてブロードで煮こむこと。キャベツの芯とかタマネギの皮は捨てる前に出汁を取ること。
レパートリーも増やした。
ロールキャベツやポトフ、肉野菜炒めに野菜たっぷりハンバーグ。
その成果で我がベネット家の野菜料理はそこそこマシになった。
まだ自分で作った方がおいしいけど。
(料理長も野菜メインの調理は慣れていないから、しょうがないんだよね)
とにかく、子供でも食べられる味になってはいるのだ。
「殿下、お野菜もお食べになりませんと」
私がせっついてもフォークでつつくだけ。
「しょうがありませんわね、ほら、あーん」
私は自分のフォークでブロッコリーを刺し、少年の口元に持って行った。
「な、子ども扱いするな」
知っている。この年代の子供は小さい子あつかいされるのをとても嫌がるのよ。
「野菜を食べられないなんてお子様ですよ」
あおったらしょうがなく食べた。食べさえすればマズくないことにも気がつくだろう。
「わ、悪くないな。もう1口よこせ」
そうでしょうと今度はニンジンを食べさせる。
野菜嫌いは克服できそうだ。
夜は早めにベッドに入ったのに、気がついた時はオーディナルに起こされていた。
「早く起きろよ、朝ご飯だぞ」
レディの部屋へ勝手に入らないで欲しいわー
そして昨日とほぼ同じ1日を過ごす。
楽しいんだけど、自分1人の時間が欲しい。痛切に。
子育て中の母親と同じ悩みを持ってしまった。
(明日は少し逃げるか。読書とか手芸だってしたいし)
幸いにも今の我が家には使用人がたくさんいる。
彼らにオーディナルの世話を頼もう。
次の日は護衛騎士に剣の稽古をしてもらった。
構う人間が常にいるせいか、オーディナルはだんだん落ち着いてきた。
栄養のバランスが良くなったことも一因だろうか。
雨の日は私と一緒に本を読んだりする。
二人で図書室のソファーに座っていると、隣の王子の頭がコクっと動いた。
(あ、あきちゃって眠いんだ)
私は体を端に寄せる。
「おヒザにどうぞ」
「うん‥」
殿下は私のヒザを枕にうたたねだ。
私はそのまま本を読み進める。静かな午後だった。




