3 禁じられた遊び?
「なあ、お前んち、栗の木ある?」
前回貸した昆虫図鑑を返しながら、オーディナル殿下は聞いてきた。
私がうなずくとキラキラした目を向けてくれる。
「お前知ってる? 栗の木にはカブトムシとかクワガタムシが集まるんだ。樹液って言う、木から出る蜜を食べるんだぞ」
王子はしっかり勉強しているようだ。
「まあ本当ですの! さっそく確認に行きましょう」
子供が興味を持っていることには乗っかってあげよう。
特殊な才能が開花するかもしれないし、今の私は多忙でもない。
「見えないな」
季節的には問題ないはずだけど、昼間の栗の木には何もいない。
「上に登ってみるか」
「あぶのうございます」
さすがに側仕えが止めるが、王子は我関せずとばかり木に足をかける。
私はしばらく放っておいた。
下の太い枝から高い枝へ。
王子の割に器用に登るオーディナル。
ある程度の高さになってから私は声をかけた。
「殿下、こっち見て下さい」
「なんだー」
よし、下を向かせることに成功。
少年はやっと自分の状況が分かったようだ。顔を青ざめさせている。
「木から降りてお菓子を食べましょう」
「う、うん」
同意はしてくれたけど、降りるのは難しそう。
(ちょっとあおってみようかしら)
私はからかってみた。
「まさか自分で降りられないのに登っちゃったんですか? 殿下がそんなにおバカだったなんて」
「そ、そんなわけないだろう。見ていろ」
ようやく決意が決まったようだ。まずしゃがみこんで太い枝をつかみ、下半身をそろそろと降ろす。
もちろん真下に枝はない。
「足を揺らして、もうちょっと後ろを探って下さいね」
王子のくるぶしが下の枝を見つける。
両足で体重を支えた後、つかまっていた枝から勢いをつけて手を離す。
これでやっと一段降りることに成功だ。
私は引き続き声をかけながら殿下の木下りを手伝った。
ようやく側仕えに抱きかかえられた時は、もう半べそをかいている。
「木登りは降りる時が大変なのでやめましょう」
私の言葉に神妙な顔でうなずいた。
ポンコツは体験しないと解らない生き物なのだ。
(今日のことから殿下が少しでも賢くなればいいんだけど)
たぶん道は遠い。
お菓子を食べた後はおしゃべりする間もなく、茂みで虫探し。
クモの巣を壊したりアリの足や触角をもぎ取っていたり。
私は止めなかった。子供には残酷さがつきものだ。
経験から知識を得、生命を意識する。大切なのは誰かがつき合うこと。
壊れた巣を修復するクモを、2人共に観察した。
「また遊ぼうぜ」
良い笑顔で帰るオーディナルを見送って思った。
この子は別に生まれつきのおバカではないんじゃないかと。
周りにロクな大人や友人がいなかったから、ポンコツのまま育ってしまったのかもしれない。
公爵家が雇った家庭教師の質がアレなら、王家だって同じくらいだろう。
ちゃんと育てればまとも王子になるんじゃないのか?
中学の時昆虫の体の構造を学びました。足が六本とかすぐに理解できます。
だって小1の時、捕まえたり引きちぎったりしながら観察したものね。触角の役割も簡単。だって片方だけ取ったアリは‥
なかなか残酷な子供時代を過ごしました。 (-_-;)
今はそんなことしませんよ☆




