おまけ4 フローラルのお話 後
「ねえ君、ベネット嬢のメイドだよね」
お嬢様の友人とも顔見知りになった。
「ちょっと聞きたいんだけど‥ベネット嬢って、婚約者いたかな?」
「公爵家の令嬢にいないわけありません」
社交界デビューを果たしたお嬢様は男共から狙われ出す。
「第三王子が相手じゃ、俺たちに勝ち目はないよな」
「まったくです。留学中だからって手を出す気にはなりませんね」
サーベルト伯爵令息やショーン子爵令息は王子とも知り合いだから安心だけど。
お嬢様に声をかけるのなら顔も身分も性格も完璧であって欲しい。
年上の銀髪王子はそれなりに合格だったが、お嬢様を一度も口説かず国に帰った。
見る目はなかったんだな。
「ちょっといいかな、君は確か」
「お嬢様ならちゃんと婚約者がいますから」
あたしは商人の息子をにらみつける。
いくら金持ちだからってあんたなんかじゃお嬢様とつり合わないんだからね!
「いや、お嬢様じゃなくて君に話があったんだけど」
は?
「その、放課後一緒に出掛けたいんだ」
「無理です」
ナンパ男の誘いはバッサリ断った。
大体ね、授業が終わった後があたしの仕事時間なのよ。
遊んでいる暇なんかないの。
「じゃあいつならいいのかな?」
「そうですね、お昼休みの後なら空いていますよ」
「じゃ、その時に」
それなのにこいつ、授業をサボってまで誘って来やがった。
「フローラルは何が好き? 何でも頼んでいいから」
そこまで言うなら利用してやる。
あたしは喫茶店でアイスクリームとアップルパイを頼んだ。
「また来ようよ」
「‥おごってくれるなら」
お土産にキャンディーの袋まで持たされたら断れないじゃん。
「ジェームズって呼んでくれたら嬉しいんだけど‥」
奴につき合うのは月に1・2度くらいだが、誘いが途切れることはなかった。
「あたしのどこがいいんですか」
「え、かわいいじゃん。いつも元気だし」
金持ちが貧乏人をからかっているとしか見えない。
そう伝えたらいつものにやけ顔が引き締まった。
「本気なんだけど、オレ」
「はいはい」
その程度で信用するか。
しかし次のデートでこいつは指輪を出してきた。
「結婚して欲しい」
「ベネット家の許可が下りたら考えてあげる」
まあ公爵様が許すわけない。
あたしはレジーナ様の影なのだから。
「お願いします、僕にフローラルさんを下さい!」
それなのに、ジェームズはお嬢様に直訴しやがる。
「フローはいつから彼とつき合っているの? 結婚は考えているの?」
なんでお嬢様のり気なの。
「あたしは生涯あなたにお仕えしますよ」
「何言っているの。あなたにはあなたの人生があるんだから、好きに生きなさい」
まっすぐに見つめられれば、それも可能かもしれないって思ってしまった。
いけない。それは無理なんだ。
「あたしがあなたの側にいたいんです。その‥お父上が許しませんから」
「分かったわ。お父様を説得すればいいのね!」
レジーナ様のキラキラした瞳に反論はできない。
期待はしなかった。失望するのが嫌だから。
しかし私は知らなかった。公爵様のお嬢様への溺愛を。
「くっ、レジーナちゃんに頼まれたら断れないじゃないかぁ!」




