おまけ3 フローラルのお話 前
子供の頃のあたしは、親以外何も持っていなかった。
そしてその親だって小さい時に1人減る。
お母ちゃんはいつもいそがしくて、あたしに構う時間も作れない。
そんなお母ちゃんが病気で倒れた。
あたしたちは一気に困窮して、薬どころか明日のパン代のあてまでなくなる。
あたしは近所で働き出したけど子供では稼げる金額には限りがあるんだ。
(何とかしなくちゃ)
あたしはわざと大通りの薬屋に向かい、窮状を訴えた。
同情してくれるお金持ちが現れて欲しかったから。
1回目は失敗したけど、2回目で成功した。
良い身なりのお坊ちゃんが薬を買ってくれたのだ。
(半分は売ってお金にしよう)
時々近所の人がパンを分けてくれるけどいつもじゃないのだから。
3日後、あたしの家にお客が来た。お坊ちゃんとお嬢様だ。お嬢様は食べ物だけじゃなくて毛布や薪までそろえてくれた。
あたしはあの人たちを利用しようとしただけなのに。
久しぶりの肉が入ったスープは体に染み渡った。
「この御恩はいつか返さないとね」
お母ちゃんがボソッとつぶやく。
「あたしがやる。お母ちゃんは休んでいて」
あんなに親切な子なら、あたしのことを雇ってくれるかもしれない。
働いて恩人の役に立てばお金も稼げるから、あたしは損しないし。
お嬢様のコートについていたのと同じ模様の馬車を見つけ、後をつける。
何回かくり返せば、お貴族様の屋敷が見つかった。
(こんな大きなお屋敷、あたしが働くのは無理じゃない?)
それでも売りこむだけはしてみたんだけど、お嬢様に本音がバレてしまった。
「あなたたち親子にすぐ同情して支援したわたくしなら、簡単にほだされると見下してはいない?」
この子、親切なだけじゃない。
お嬢様はあたしの嘘にも騙されなかった。
この方に本当に心酔し始めたのはこの時からだろう。
お坊ちゃんの正体は何と王子様だった。
最初はお嬢様の弟かと思っていたのに、同い年? 子供すぎる。
「誕生日はボクのほうが早いんだからな」
それ自慢できないって。
まあ王子様のお世話のため、遊ぶ時間がもらえたのだから文句も言えない。
「本当に何でもやるのなら、我が家で雇おう」
公爵様は少し怖い人だった。
あたしは家事の後、武器の使い方を学ぶ。
教えてくれるおじさんは、あたしと同じで昔貧乏だったらしい。
「影として一生使える覚悟がないんなら辞めちまえぇ!」
毎日怒鳴られたけど、辞めるわけないだろう。
あたしはお嬢様の役に立つんだ。
辛くてもお嬢様と一緒に勉強するのは楽しかった。
お給金で暮らしは楽になったし、時々ギュっと抱きしめてくれるのは心が温かくなる。
王子がすぐ張り合ってくるのはウザいけど。
レジーナ様があんたを優先するのは、王子で婚約者だからだってこと分かってないな。
そうじゃなかったらあたしの方が役に立つんだから。
奴が留学を決めたのは自分のふがいなさに気づいたからだろう。
あたしはお嬢様と一緒に学園で暮らす。同じ部屋で寝泊りできるなんて幸せだ。
「フローラル、今日はこんなことを教わったわ」
お嬢様があたしと一緒に復習するのはあたしのため。
教室で学んだ内容を分かりやすく教えてくれる。
おかげで魔法も使えるようになった。
これでお嬢様がケガをしてもあたしが治せる。
まあお嬢様の敵になりそうな奴は早めにつぶしているけれど。
「他人の欠点をあげつらう人間って自分に自信がないらしいですよ。まさか侯爵家の方が‥そんな訳はないですよねぇ」
「ふん、当たり前だろう」
劣等感の塊みたいな奴は黙らせた。
「お家の事情は存じておりますけれど、ハッキリお顔に出過ぎですよ。貴族令嬢としていかがなものでしょうか? まあそちらがそんな態度でしたらこちらも手を打たなければいけませんねぇ」
お嬢様をにらみつけた令嬢には脅しもかけておく。
あたしのレジーナ様に意地悪なんてさせないんだから!
ポイントにブクマありがとうございます(≧∇≦)ノ




