おまけ2 オーディナルの独白 後
「アルベール、ちょっといいか? 話を聞きたいんだが」
僕は彼の事情をしつこく聞いた。
アルベールと元婚約者はやはり子供時代からの付き合いらしい。
パーティーで出会った年上にさらわれたのだ。
「特に親しくもないのに、あまり詮索しないで欲しいのですが」
「う、悪い。でも僕の婚約者が心配なんだよ」
「そこは私と違いますね」
アルベールは婚約者に思い入れもなかったようだ。
「そこまで思っているのなら長期休暇に帰ればよろしい」
「でも、まだ背も伸びてないし。今帰ってもまた子ども扱いされる」
「うるさいですねえ。そんなに心配なら、手紙で聞けばいいでしょう」
「そんな直接は無理」
レジーナへの手紙は緊張しすぎて逆に書けないんだよ。
「はあ、では母国の友人に近況報告でもさせてみるのは」
「なるほど」
僕は同じ年の知り合いにかたっぱしから手紙を送った。
そちらの学園の様子が知りたい、との建前で。
レジーナに特定の相手はいなかった。
それが分かっただけでも、ものすごく安堵する。
(やっぱり僕は彼女が好きなんだ)
そこからは迷わなかった。
公爵家に婿入りするため学問に邁進する。
それなのに‥レジーナからあんな手紙が届くなんて。
『殿下にもどなたか意中の方ができましたでしょうか? いらしたらぜひ教えて下さいね。わたくしでしたらいつでも身を退きます』
僕はテストが終わるとすぐに帰国の準備を整えた。
採点結果を確認し、馬に飛び乗る。
3日はかかる日程だったが、途中で馬を替えながら走り通せば半分でたどり着けた。
王宮へ戻るより先に公爵邸に向かう。今日は婚約者の誕生日なのだ。一刻も無駄にできない。
久しぶりだったけれどレジーナのことは一目で分かった。だって一番美しく輝いているのが彼女なんだから。
パーティーに無事参加できた僕は、夕方2人きりにしてもらう。思いのたけをぶつけた。
受け入れてもらったのが嬉しすぎて力が抜けてしまう。情けない。
僕は公爵家に住みこむことにした。未来の義父から仕事を教わり、週末はレジーナと過ごす。
公爵の視線がうるさくて、彼女との触れ合いは登下校の時だけなのは残念だけど。
もうすぐ結婚するのだから、それまでは我慢だ。
レジーナとは卒業パーティーのためにダンスの練習ができるし、至近距離で恥ずかしがる彼女も見られる。
悪くない。
しかし、自分にとって1つだけつけたいけじめがあった。
アルベール・カステルである。
留学したせいで同学年になった彼は、どうしても勝てない相手だった。
勉強も剣技も優雅さも。
「いいかげんあきらめて下さい」
「うるさい、もう一回勝負だ!」
付きまとっている内に仲良くなれたけどさ。
「キャァ、アルベール様頑張って」
婚約者がいなくなったせいか、女生徒の人気は僕からアルベールに移る。
まあそこは別に気にしていないけれど。
昔、いつも誰にでも平等に接していたレジーナが、1人だけ目を輝かせたのがアルベールだった。
今考えたら、彼女の初恋だったのかもしれない。確証もないのに心が乱される。
パーティーに呼びつけたのは、レジーナの思いを知りたかったから。
今の僕であれば勝てるだろうか。
「ところでさ、レジーナはボクとアルなら、どっちが好き?」
僕は、勝利を収めた。
明日はフローラルの視点です。




