2 運命を変えるために
目の前にいるこの子はまだ、前世での小学生男子。
ポンコツでも許せてしまう。
「殿下、ご存じですか? カマキリを同じ箱に入れておきますと、他の虫が全部食べられてしまいますよ」
「な、なんだってぇ!」
うん、知らなかったんだよね。
殿下は芋虫が4分の1になっているのを涙目で見ている。
おバカわいい。
「バッタは草食で草を食べますが、カマキリは肉食ですので他の虫を食べますのよ」
「お前何で知ってるんだ?」
王子がさも不思議そうに聞いてくる。
勉強したからとしか答えられないよ。
「我が家には昆虫図鑑がありますのでお見せいたしますわ」
何とかそれっぽい言葉をつむぎ出し、使用人に図鑑を持ってこさせる。
昆虫の知識を教えただけでお見合いは終了した。
その後もちろん婚約は無事に成立。ここは原作通りだ。
「ようございましたね」
周りは口をそろえて祝ってくるが、それはこれから私が冷遇されるのを知らないから。
ポンコツ王子の観察は続けるけど、できたら冷遇対応は避けたい。
王子に見向きもされない婚約者って笑い者にされるかもしれないのだ。
女子のイジメって陰湿だから嫌い!
しかし私以外に未来の知識を持つ人間はいないからな~どうしよう?
「王子様の婚約者に選ばれたのですから、完璧な淑女を目指さなければ」
お母様それが無駄になるんですよ。
いや隣国の王弟の嫁になるんなら無駄じゃないけど、多分なれないし。
とにかく、自分からドアマットヒロインなど目指さぬわ。
勉強も礼儀作法もつめこまれたけど、そこそこで済ませてやる。
疲れ切るまでの努力など無駄!
後、前世の大人知識から言わせてもらうと、家庭教師の教え方が下手すぎた。
「なっておりません、やり直し」
言葉が厳しいだけじゃない。
「先生、どこがどう違ってどう直すのかもっと具体的に教えてください」
人間、違うって言われただけじゃどうするべきか分からないのだよ。
「ご自分でお考え遊ばせ」
「考える元にする知識が足りないから教えて欲しいんです。せめて所作はお手本を見せて下さい」
お辞儀だってヒザを何度で曲げるのが美しいのかは見ないと分からないじゃん。
「まずは相手に真心をこめることです」
「あ、そーゆーのいいんで。心をこめるのは筋肉と神経です」
所作の美とは、見せる相手にこちらの心象を良くするため生まれた。
相手を思いやっていることを仕草で表現するのだ。
しかし覚える時は相手よりも、『いかに自分をカッコ良く見せるか』を追求した方がてっとりばやく習得できたりする。
ただでさえ苦しい鍛錬の時、見せる相手のことまで考えたら余計に大変。
技術の習得が遅れては本末転倒だ。
まずは自分カッコイイを究め、相手の意識はそれからする。それで十分。
「レジーナ・ベネット遊びに来てやったぞ」
少年王子が訪問してきた。
「おいでいただきありがとうございます」
あいさつと同時にスカートをつまみお辞儀。
礼儀作法は今の自分が余裕でこなせる範囲にとどめる。
100%は目指さない。それより意識を王子に向けたいし。
王子に気に入られるってのが目的なら、目指すのは完璧令嬢より遊び相手じゃん。
両親も家庭教師も原作のレジーナも、そこが分かっていなかったんだね。




