19 卒業パーティー
誕生会のあの日、オーディナルは隣国から馬を飛ばし我が家に突撃したらしい。
馬車で3日はかかる日程をたった1日半で。
荷物は後から運ばせたようだ。
「レジーナと飲むお茶が一番おいしい」
そしてその後、王子は我が家に住みこんだ。
公爵家の仕事を覚えるため必要だと父と陛下を説得したのだ。
私はまだ寮暮らしなのに、週末はわざわざ馬車で迎えに来る。
「愛しい僕のレジーナ、一緒に帰ろう」
手をつないで学園の玄関までエスコートし、周囲の男子生徒を一瞥する。
絶対マウントっしょ。
(男性に人気があるなんて自慢しなけりゃ良かった)
まあベタベタされるのは送迎の時だけだからある意味気が楽。
私、溺愛苦手だからね。
オーディナルも家では大人しいし、精神年齢が上がったことで昔より話もはずんだ。
ある意味理想の恋人では?
物語の主人公より、おいしい立場じゃね?
そして私は卒業パーティーをむかえる。
「レジーナ・ベネット嬢、お話があります!」
私は耳を疑った。
卒業パーティーの場で、豪華な衣装をまとった令息が声を荒げている。
まるで原作の冒頭だ。
まあオーディナルは私の隣で腕を組んでいて、声を上げたのは別人だけど
彼は裕福な商人の息子、ジェームズ・リッチー。
こちらに向かってつかつか歩み寄る。
「お願いします、フローラルさんを僕に下さい!」
私は驚きのあまり声が出なかった。
(え、え、ジェームズとフローラルってそんな仲だったの?)
後ろをふり返り、後ろにひかえるメイドを凝視する。
フローラルは赤くなりながら目をつり上げている。
「お嬢様、少々お側を離れます」
フローラルはジェームズの腕をひっぱり、物陰に移動した。
「こんなタイミングで言わないでよバカ」
「ごめん、どうしても許可が欲しくて」
どうやら2人は恋仲らしい。
(嘘! そんな気配あったっけ? 原作では落とすだけ落として後は放置していたのに?)
しかしまあ、お似合いではある。身分的に何も問題ない。
「後でくわしく聞かなくちゃ」
ウキウキしている私をオーディナルが引き寄せた。
「ほら曲が始まるよ、踊らないのかい」
そうだった。彼の腕を取りポーズを決める。
この日のために練習したからリラックスして曲にのれた。
クルクル回るのは楽しい。
オーディナルのホールドはしっかりしているから安心して体重を預けられる。
曲が終わると、他の学友に取り囲まれた。
「とても素晴らしいダンスでしたわ」
「殿下、次はわたくしと」
「レジーナ嬢、学園の思い出に、ぜひ一曲」
王子と目を合わせ、私たちはパートナーを変える。
へとへとになるまで踊った。
「わたくし、もう踊れませんわ」
途切れないダンスの申し出を断り、会場の壁際に用意されたテーブルへ向かう。
スモークサーモンとキュウリのサンドイッチをつまんでいると、目の前にイチゴのタルトが差し出された。
「こちらもいかがですか」
親切な彼は‥褐色の肌に銀髪が光る、アルベールだった。
明日でラストです。




