18 告白
夕方になりお客様がみな帰っても、オーディナルだけは居続ける。
「2人きりで話がしたい」
両親にも断りを入れ、私たちは中庭の東屋へ向かった。
「レジーナ、僕は君との婚約を解消なんてしないよ。僕たちは結婚するのだから」
強い眼差しで訴えかけられて、私の心臓はドクンとはねる。
「で、でも別れてから6年です。あなたも他に好きな人くらいできたのでは?」
オーディナルの眉間により一層力が加わった。
怒っている、これはどう見ても怒っている。
「そうだね、仲の良い子はできたよ。レジーナは? 好きな男はいるのかな?」
これは返事を間違ってはいけない気がした。
「特定の方はいませんわ。わたくしも色々な方と交流したのですが‥」
「じゃあ問題ないよね。結婚式はいつにする? 来月では準備が間に合わないかな」
こいつとんでもない提案をしてきやがった。
「け、結婚式ですか⁉」
話が早すぎてオーディナルについていけない。
「嫌なの?」
「いくら何でも心の準備が整いません。わたくしたち、6年も会わなかったのですよ」
6年は長い。子供時代ならなおさらに。
この人は何をあせっているんだろう? 政治的な思惑でもあるのか?
「だって君が言ったんじゃないか」
オーディナルは先ほどの怒り顔から一転、今度は泣きそうになる。
「幼馴染を恋人として好きにはなることはないって」
子供の時の面影にほっこりしていた私は驚いた。
(たしかに言ったけどさ。まさか殿下は)
「君に男として見てもらいから僕は留学を決めたんだ。さびしくてもレジーナとの未来を夢見て頑張ったのに、別れたいような手紙を送ってくるだなんて!」
それは確かに私が悪い。
いや、まさか、オーディナルがここまで私に思いを寄せてくれていたなんて知らなかったんだよ!
「今までそんなそぶり見なかったのに‥」
「手紙で書いたって君が思い出すのは12歳の僕だろう? 成長した姿を見せて驚かせたかった」
そりゃ今の彼は骨格も筋肉も見違えている。
成長過程の色気までかもし出すとか反則じゃん。ハッキリ言って対象内。
私が育てた少年王子は、ポンコツから華麗に変身をとげていた。
うわ意識しちゃうと顔も体もまともに直視できねえ。
「もう弟のように見ないで欲しい」
彼のつぶやきが心をえぐる。
(ごめんなさい息子みたいに見ていました)
ああ‥すっかり生徒に手を出すクズ教師になった気分だ。
ってかこいつ、ある意味マザコンじゃん?
「わたくし、そこまで頼りにはなりませんのよ」
一生世話を続けるのは勘弁してくれ。
「分かっている、今度は僕に頼って欲しい。領地の経営も統治も、君に恥じないよう努めて見せるから」
それなら‥構わないのかな?
新しく縁談をまとめる必要はないし、この子の性格は分かっているし。
私のことを好きみたいだし。
「じゃあ、よろしくお願いします?」
私は恐る恐るうなずいた。
「良かった‥ああレジーナ、好きだぁ!」
情熱的な告白の後、オーディナルがぐったりと倒れこんできた。私はあわてて支える。成人男性は重いんだけど。
「ごめん、安心したら気がぬけちゃって」
やはりこいつは私の知っているポンコツ君らしい。
木陰でのぞいていたフローラルがすぐ他の使用人を呼んだので、王子は我が家の馬車に詰めこまれ王宮に戻される。
「まったく、帰ってすぐ求婚だなんて、油断できない奴」
メイドのつぶやきは小さすぎて、私の耳に届かなかった。
あずまや 東屋・四阿・ガゼボと表記は色々ありますが読み方として東屋が簡単かなと思い使っています。




