17 予期せぬ来客
私の誕生日がやって来た。
今日は王都のタウンハウスでパーティーだ。
「18歳おめでとう、レジーナ」
お母様が満面の笑みで祝ってくれる。
そう言えばこの人、原作では病気がちだったのにいつまでも元気である。
(いや元気なのは良いことよね。ご飯がおいしいのと運動を勧めたからか?)
貴族女性は不健康生活がスタンダードだから、母にはよく生活への口出しをしていた。たぶんそれが功を奏したのだろう。
「あの小さかったレジーナちゃんがこんなに美しくなるなんて。お父様は感激だよ」
領地に水路を作った成果か、父親も仕事に忙殺されていない。
私は私なりにこの物語をハッピーエンドにできそうだ。
(ううん、もうすぐ終わるのは物語のパートだけで、人生はこれからよね)
公爵家の人間として、領地と領民の責任を負うのだ。プレッシャーもすごい。
できたら卒業までにオーディナルとの婚約を解消して、入り婿を見つけたかった。
仕事を手伝ってくれるパートナーは必要だし、ちょっとは恋だってしたいわ!
(有望な人材がそれまで残っているかしら?)
はやく手紙の返事が欲しいのだが、王子も王家も何も連絡をくれない。
向こうの学校はこちらより早く始まり早く終わると聞いていたのに。
「はあ」
お祝いの日なのに私はため息をついていた。
「お嬢様、お客様がご到着ですよ」
友人が集まり次々と誕生日を祝ってくれる。
「レジーナ様、本日はお招きいただきありがとうございます」
「今日のレジーナ嬢、とてもきれいね」
「18歳おめでとう!」
私はふざけてショーンとサーベルト、両方にエスコートしてもらいながら広間に入った。
長いテーブルにはごちそうがすき間なく並べられている。
その中央には大きな誕生日ケーキが。
拍手の中、イケメン2人は私をケーキの前にいざなう。
「みなさま、本日はわたくしのためいらしてくれて嬉しく思います」
まだあいさつの途中だった。
しかし誰かがバタバタ屋敷に走りこんで来る。メンバーは全員そろっているのに、無粋だ。
(あれ? 無理に入ろうとしても知らない人は入れないよね)
フローラルに追いはらわれなかったのなら知人だろうか。
「待ってくれ!」
扉の側で息を切らしているのは、美しい青年だった。
金色の髪に空色の瞳。
(見覚えがあるけど‥誰だっけ)
彼はつかつかこちらに迫ってくる。
「レジーナをエスコートするのは僕の役目だ。誰にも渡さない」
聞こえたのは低くなめらかな声。だけどこんなことを言う人を、私は1人しか知らなかった。
「オーディナル様?」
彼の背は私をはるかに超えている。顔にも別れた時の面影はほとんどない。
それでも彼で間違いなかった。
予想外のゲストにみなざわめく。
「ああ第三王子の」
「小さい時以来ですわよね」
「確か留学で国外に行っていたのでは?」
「お早いお戻りですが、学校はもうよろしくて?」
テストはもう終わったはずだが、採点に卒業式、お別れのパーティーとか行事があるから帰るのは再来週以降と聞いていた。
「あんな手紙を受け取ったら、おちおち外国になどいられない。式もあいさつもすっとばして戻って来たんだ」
青年は額の汗をハンカチでふいている。
ずいぶん急いだらしい。
急遽席を増やし、殿下には私の正面に座ってもらう。
他の招待客には迷惑をかけたが、誰も王族への文句など言えない。
予想外のハプニングはあったけど、私の誕生パーティーは盛大にとり行われた。




