15 学園に入学です
オーディナルが私に理由も告げず、いなくなるなんて思わなかった。
翌年、私は1人で魔法学園に入学する。
「レジーナ様、荷物はこちらにそろえました」
「ありがとうフローラル」
フローラルは寮で私の専属メイドになった。
部屋も一緒だ。
「お嬢様と2人部屋なんて夢みたいです。これから6年間、お嬢様にお仕えしますね」
私も彼女が敵になるとは、さすがにもう思っていない。
「あいつもいないしお嬢様を1人占め‥うふふふ」
時々邪気がもれるけど。
授業はそこまで難しくなかった。予習は思っていたより完璧だったのだ。
一番心配していた魔法もそこまで高度な技術は要求されない。
炎魔法は火花を出しただけで合格した。
難しいことは研究者の領分らしい。
女友達は簡単にできた。園遊会と違って時間をかけ1人1人を見極めたし、内気な子とは気長に接する。
絵画に観劇や文学が本当に好きな子を見つけて仲良くなったのよ。
男子の友達もそれなりに増える。
「ベネット令嬢は博識でいらっしゃいますね」
「ベネット嬢、一緒に魔法の訓練を」
「ベネット様の隣座っていいですか?」
ショーンとサーベルトはすぐ仲良くなれた。裕福な商人の息子ジェームズは陽キャだし、初対面から楽に言葉を交わせている。
デューカスだけはあきらめたけど。
「公爵家の令嬢が身分を問わず声をかけるのはいかがなものかと」
四角四面で応用がきかないんだよ、こいつ。
「そもそも第三王子の婚約者なのですから、友人を作りすぎても弱みになります。あなたはご自分の立場を自覚なさいませんと」
「まあまあ、デューカス・ロング侯爵令息、お話はあたしとしましょう。向こうで」
フローラルがすかさず私たちの間に入り、デューカスの腕をつかんで連行した。
突っかかってくるのは面倒だな~と悩んでいたから助かるわ。
結構役に立っているじゃん、フローラル。
その後奴がちょっかいをかけてくることはなくなった。別にこちらから話しかけることもしない。
まあ馬が合わない人間は一定数いるものだからね。
敵対派閥の令嬢と会うのは緊張したけれど、特に何もされなくてホッとした。
(最初にバチっとにらまれたのは怖かったのに)
思い出せばその後フローがしばらく私の側から消えていた。
彼女が戻った後あたりで、令嬢の態度は劇的に柔らかくなったような‥
(まさかね?)
廊下では時々アルベールとすれ違った。彼は短期留学生らしい。3つ上の学年だからほとんど会話はしないけれど。
物語では私にベタぼれだったのだが、特に向こうから接触してくる気配はない。
(これは‥中身が違ったらねぇ、やっぱり好かれないかぁ)
中身は別人格だし、男女や身分を問わない友人に囲まれているから、どう見ても今の状態は原作のレジーナとは別物だろう。
オーディナルとは手紙をやり取りしている。外国の学校は1から学ぶことが多く、大変らしい。
彼の、のんきな顔が見られない。
(あの子は自分の力で世界を切り開いているんだ。応援しなきゃ)
たびたび届いた手紙も段々減って行った。
親離れが順調な証拠だろう。
一抹のさみしさを感じる。
子育てを終えた母親はこんな気分だったのか。
オーディナルに会えないまま時が過ぎる。




