14 ヤキモチ
思わず銀髪の少年に見とれていたら、後ろから腕をつかまれた。
「そいつ誰」
オーディナルだ。お行儀をどこかに忘れている。
「オーディナル様、こちら留学生のアルベール・カステル様ですわ。9月から同じ学校に通うそうですの」
「フン、ボクはオーディナル。レジーナはボクの婚約者だ。アルベールはカステルだから‥王族、なのですね」
おお、オーディナル頑張って持ち直した!
ちゃんと隣国の王家の名字を覚えてるし! 帰ったらヨシヨシしてあげなくちゃ。
「知ってるぞ、あなた、の国は染料が特産品なんですよな」
語尾はおかしいけど、勉強が身についている。ヒナの巣立ちを見守る親鳥の気分だわ。
アルベールはほほ笑む。
「他にも、我が国では芸術に力を入れてイマス。ゼヒ、ベネット嬢を王家のギャラリーに案内したいデス」
「まあ、一度行ってみたいわ」
外国の美術館とか興味ありまくり。絶対行ってみたい。
「ボクだってボール投げに力を入れてるし」
オーディナルがつぶやいている。
「劇場も新しいデス。ベネット嬢は劇と音楽どちらがお好きデショウカ」
「ああ、ヴァルール王立劇場ですわね。すばらしい建築だと聞き及んでおりますわ」
うわ、観劇のシーンで出てくるやつ。実物あるなら見たい!
小説に出てくる部分だからつい夢中になっちゃう。
「レジーナは鬼ごっことかくれんぼ、どっちが好きなんだ」
あ、子供を無視してはいけない。
「いつか行ってみたいですね、殿下。私はかくれんぼが好きですよ」
「オーディナル殿は婚約者と仲が良いデスネ」
私が王子の服についたお菓子のカケラを見つけて落としていると、アルベールがからかってきた。
「まるで姉と弟みたいに」
的を射ている。私的には母と息子の気分なのだけど。
殿下は顔をしかめた。反抗期かな?
「お前さ、アルベールとばっかり話しすぎ」
公爵邸に戻ると、王子に怒られてしまった。
なるほど、これはやきもちだ。
まあ、彼の方が話を合わせやすいんで、ついね。つい。
「レジーナだってボクがフローとばっかり仲良くしてたら嫌だろ」
「もっと大きくなってからなら嫌かもしれませんね。婚約者の立場を取られちゃうかも」
ちょっとふざけてみた。
「子供はいいのかよ」
「小さい時にずっと一緒だった相手を好きになることはないらしいので。本で読みました。あ、仲が悪くなるわけじゃないですよ」
その話が本当なのかは知らないが、私たちの間には親愛しかない。このまま育てば自然に婚約解消の流れになるはずだ。
「そうなんだ」
私は少年の真剣な表情に気がつけなかった。
その日は気疲れしたので2人とも早く寝る。
「ボク、お城に帰る」
翌日、オーディナルが宣言した。
「どうしました?」
「いつまでもベネット家の世話になったら悪いだろ。勉強だって問題ないし」
それはそうかもしれないけど、いきなり?
「とにかく、帰る。もう決めた」
2年半一緒に暮らした婚約者は、王宮に戻って行った。
まさか彼がそのまま留学を決めてしまうとは。
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