12 勉強方法
カウンセリングを続けながら勉強していれば、オーディナルの学力はメキメキ上がった。
かけ算はビー玉みたいのを用意して、数を目で認識できるようにする。
「3×4は3個の玉が4列並んでいたら何個になるかってことなんですよ」
「なるほど、そうか」
100を超える大きな数の問題では、おもちゃの紙幣を用意した。
「この紙は金貨100枚分で、こちらが1000枚分です。100枚の紙が5枚あったら、金貨は何枚分でしょう」
「500枚?」
「正解!」
この世界には紙幣の概念がなかったから不安だったが、素直な殿下は受け入れてくれた。
分数が分からない時はパンケーキを用意してもらい等分する。
「1つのケーキを2つに分けます。こちらの半分が2分の1です」
算数は同じ年の子の中でも優秀になってきた。
文を書くのが苦手なオーディナルには、物語を書かせてみよう。
「殿下がかっこよく敵を倒すお話などいかがでしょう」
「そんなのでいいのか?」
作文はいかに楽しく練習させられるかだ。
こちらは少しずつだがそれなりに上達する。
「そうだわ、フローラルも勉強に入れたらどうかしら?」
王子の側にいるのが私だけでは、いつまでも劣等感を持ってしまうだろうから。
自分より下の子を教えるのもいい。
父に許可を取り、1日おきにフローラルをサロンに加えた。
「ぐ、文字って読むのは簡単なのに、書くのはこんなに大変なんですね」
「ふふん、ボクがお手本を見せてやるよ」
やる気スイッチがしっかり入ったようだ。
オーディナルは1年間でずいぶん変わった。
彼の成績が低いのはこの世界の勉強法と相性が合わなかっただけなのだ。
頑張っている子がのびるのは本当にうれしい。
ゲーム形式の勉強も進んでいるし、ちゃんとした王族になれるかもしれない。
そしてフローラルの成長はそれ以上だった。
原作でも孤児から男爵家の養子に入り、王立魔法学園に入学していた。才能がなければできないことだ。
「やった、計算はアタシの勝ち!」
「くっそ、今度は作文で勝負だ」
「望むところよ」
なんか私すごい子をひろっちゃったのでは?
うむむ、フローラルには能力を良い方向に広げて欲しい。
「あの子どうかしら、他のメイドと問題はおこしていない?」
「はい、良く働いておりますよ
フローラルは人心掌握に長けているはずだから、侍女頭が笑ってくれても信用できない。
「お嬢様、解けました!」
まあこちらの心配をよそに、フローラルはどんどん私に懐いてくるのだが。
「正解、良く分かったわね。すごいわ」
「エヘヘ」
今はどう見ても無邪気な女の子。そして教えたことを吸収する生徒はみなかわいい。
「お嬢様、これ売れるんじゃないですか?」
そしてカードゲームを渡したフローラルは目をギラギラさせた。
「庶民相手にはこのままでいいし、素敵な絵をつけたら金持ちに高く売れますよ」
「あら、それなら領地振興にもなるわね」
アイデアを両親に伝えると、さっそく商会を呼びよせ量産体制を整えてくれた。
絵の部分は1枚1枚手描きだ。内職業が潤ったらしい。
「これはフローのお手柄ね。わたくしでは気がつかなかったわ」
「良かったーあたしお嬢様のお役に立った?」
「もちろん」
思ったより素直な子なのか?
私だって、この国の物価とか市場の変化とか農作物の出来具合とか市中の治安とかの情報を調べていた。
以前よりは成長しているはずだ。
そしてもうすぐ私は12歳になる。
今のところは嘘みたいに順調。
自然災害は時たまおこったが公爵家は安泰だし、王子とフローラルは順調に育っている。
王立魔法学園に入学するまであと1年を切っていた。




