10 情けは人の為ならず 全部自分の為である
毎日が忙しくなった。
令嬢としての勉強に情報収集にカードゲーム。
王子にも手伝ってもらい新しいゲームを製作よ。
疲れはしたけれど充実している。
刺激が十分あるからか、最近のオーディナルは大人しかった。
「フローラルってあれからどうしているかな」
平民のカードを場に出した拍子に思い出したのだろう。
「何回か差し入れをさせました。母親はほとんど回復したようですわ」
2回目以降、私は行かずメイドに頼んでいる。
とりあえず母親の仕事復帰までは面倒を見る予定だ。
それ以上はどうしよう。
年に1回は顔を出しに行ってフローラルの様子を見るか。
思案にふけっていたら、メイドがあわてた様子でやって来た。
「お嬢様がお世話をしている貧民が来ています。お会いになりますか?」
「え?」
私は立ち上がる。王子はもちろんついて来る。
フローラルはちゃんと使用人用の裏口から入っていた。
必死に執事へ訴えている。
「あたしを雇って欲しいの。もう10歳だし、下働きくらいできるんだから」
私が出て行くと「お嬢様だ!」とにっこりした。
「あなたどうやってここに来たの?」
「歩いてですよ」
「ううん、そうじゃなくて、どうやってわたくしの屋敷を探し当てたの?」
フローラルには家名を教えていないはずだ。
「えっと、お嬢様のコートについていた模様と、同じ模様の馬車をつけました」
え、この子私と2回会っただけでベネット家の家紋を覚えたの?
「何回か見失いましたけど、だいたい来る方角は分かったから頑張ったの」
なんてバイタリティー。
こりゃ原作のレジーナが太刀打ちできないはずだよ。
「すごいなお前、ボクでもまだ覚えてないのに」
王子、あなたは覚えなさいって。
「あたし働くならお嬢様のところがいい。恩返しがしたいの」
私はフローラルをまっすぐ見据えた。
「それは本当なのかしら? あなたたち親子にすぐ同情して支援したわたくしなら、簡単にほだされると見下してはいない?」
う、と彼女は詰まる。図星だろ。
「えっとですね、ないわけじゃないです。でもお嬢様の役に立ちたいのは本当で」
ほう、思ったより素直にゲロッたな。
まだ幼いだけ嘘が下手なのか、母親が生きているから精神が歪まなかったのか。
「ではわたくしからお父様に口を聞いてあげますから、今日はもう帰りなさい。馬車を貸してあげるわ」
フローラルにはいったん引き取らせた。
「お嬢様、本当に旦那様へ口を利くのですか」
執事は心配そうだ。
「そうね‥」
これはすぐに結論を出していいものか。
フローラルは原作で私の敵。
ホイホイと我が家に入れて良い物か。
これからだって一応、恋敵になるかもしれない。
オーディナル殿下へ取り入って魅了し、私に冤罪をかける。
現在の私は婚約解消ノリノリだから被害は少ないはずだけど。
(オーディナルがヤバい女子に引っかかるのはやだなあ)
うちの子に変な虫をつけたくないのだ。
(あれ? でもそれなら逆に会わせるのもアリなんじゃ)
近親婚を避けるための本能エピソードを思い出す。脳は幼馴染も家族認定してしまうってやつ。
いくら今仲良しでも私とオーディナルが恋仲になることはないだろう。
(それってフローラルにも当てはまる話だよね)
今から親しくさせておけば、王子が彼女にほれることを防げるはずだ。
それに、身近に置けばフローラルの本性もあばけるんじゃないかな。ヤバくなった時にすぐ気がつきたいし。
「わたくしがお世話した子がわざわざ売りこみに来ましたの。雇っても構いませんか?」
父は眉をひそめた。娘を愛してはいるけど甘やかすだけじゃないのよ。
「レジーナちゃんの望みはかなえてあげたいけれどね、我が家で働くのは大変なんじゃないかな」
母親も反対する。
「その子は貧民なのでしょう? わたくしたちとは考え方が違うのよ」
私は食い下がった。
「本人は下働きでも何でもすると言っていたわ。それに、ただの平民とは思えなくて‥きちんとしつければモノになりそうなの」
原作ではそれなりにマナーや勉強ができたはず。
お父様は最後にはうなずいてくれた。
「ふむ、では今度呼んで来なさい。本当に何でもするのなら許可しよう」
食事の後、お父様は執事長と話し合っていた。
数日後、フローラルは我が家に迎え入れられる。
「良かったな」
オーディナルはかわいい子が来たからニコニコだ。
「一緒に遊ぼう!」
王子は少女と手をつないで走り出す。
使用人であるフローラルに遊ぶ時間はないはずだが、私がお父様を説得した。
昼食後から2~3時間は遊ぶ時間を確保させるようにって。
目的は王子の幼馴染になってもらい、恋愛対象から遠ざけること。
そしてそれプラス私の休憩時間を増やすためである!
やったぁ! 自分の時間が増えたぜ。




