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ハチオウジギア  作者: ティーマン
シーズン1 Part1
1/9

01 高取・ズ・リバイバル①

初投稿です。近未来のハチオウジを舞台にした連続超人アクション物になります。独特な名称ありますがそういう世界ということでご理解ください。

シーズン1開幕。高取コウジの覚醒。01~03まで続きます。

初回のみ01~03まで同日に投稿してますが、以降について基は週2~3話の投稿となります。

 




 二〇三八年。西急スクエアビル、五十一階レストラン「ヒロスエ」。


 窓側の席に正装の男女が向かい合っている。若い男は天然パーマの髪と太い眉が印象的だ。向かいには、ゆるやかな波を描く長い髪を肩に落とした、面差し涼やかな若い女。二人は静かに視線を交わし、かすかに微笑んだ。


 若い男、高取コウジは居ずまいを正すと向かいにいる妻、カヨコに向かってシャンパンの入ったグラスを掲げた。


「乾杯」


 そう言うと高取はカヨコとグラスをあわせ、一口飲んだ。


「お店とってくれてありがとう」


「カヨコとの思い出の店ですからね」


 カヨコが結婚指輪を懐かしげに見ている。この日は二人の結婚記念日であり、高取は二ヶ月前から予約を取っていた。


 店員が料理を運んできた。


「こちらオリーブ盛り合わせと小エビのアヒージョでございます」


 料理がテーブルに置かれた。高取はさっそくアヒージョにバケットをつけて食べる。


「変わってないですね。お酒に良く合います」


カヨコも同じようにしてバゲットを口にした。


「合コンで知り合った後、初めてコウジがデートで連れてきてくれたお店だったね」


「あの時は私もカヨコも飲みすぎて・・・・・・お互いフラフラになってました」


「そこからね・・・・・・二人共お酒好きだったからすぐに意気投合したんだよね」


「昨日のことのように思い出します・・・・・・」


 高取はそう言うと目を細め、窓からハチオウジ市の煌びやかな夜景を眺めた。巨大なハチオウジ駅があり、その背後に極彩色の高層ビル郡が屹立していた。  


 二十五歳になる高取はこのハチオウジ市で生まれ育った。幼い頃に母親が病死、父親も日本大災害の影響で勤め先が倒産し高取を残して自殺。一人になった高取は施設で育ちながら、いつしか母と同じ英語の教師になる夢を持つようになった。


 高取は施設を出るとコンビニのバイトで生活費を稼ぎながら奨学金を利用して大学に通い、教員免許を取得した。


 日本大災害以降、貧富の格差が進行し学校に通える生徒も減少、その結果、教員の枠も減っていたが、運良く英語で欠員が出ていた高尾木高校たかおぎこうこうの非常勤講師として採用された。


 非常勤講師の給料だけでは食べていけず高取はバイトを掛持ちし、合間に非常勤よりもさらに枠が狭い正規教諭を目指す為の勉強もするという忙しい日々を送っている。


 それでも高尾木高校での日々は高取にとって充実していた。生徒や同僚とも仲良くなり、同僚が開いた合コンでカヨコとも出会えた。


 カヨコは高取の夢を理解し共に歩みたいと言ってくれている。その言葉は幼い頃から厳しい現実の中でも夢に向かって努力していた高取の救いとなっていた。


「四名で予約している、かけひです」


 高取は視線を入口に移した。幼い男の子と女の子を連れた夫妻が入ってくると、カヨコの後ろの席に座った。


 カヨコが後ろを振り向くと女の子が手を振った。カヨコも手を振り返して高取に向き直るとシャンパンを一口飲んだ。


「美味しい。でもこの一杯だけ。当分、お酒を飲めなくなるから、記念日に飲めて良かった」


「飲めなくなる? どういうことです?」


「あのね・・・・・・最近体調悪かったでしょ。今日、病院に行ってわかったんだけど・・・・・・妊娠してたの」


「えっ!」


 高取は驚いて目を見開いた。


「本当ですか!!」


「こんなことで嘘なんか言わないよ」


「ごめん、ごめん、そうですか・・・・・・」


「嬉しい?」


「当たり前です! ただ、突然で頭がまわらなくて・・・・・・こんな日がくるなんて、思ってもみませんでした」


「私もこのタイミングでなんて、思わなくて」


「私は父親になるんですね・・・・・・なんだか実感がわかないですが・・・・・・」


「そうね・・・・・・私も同じ」


「カヨコ、私は・・・・・・本当に幸せです」


「私も」


 高取がカヨコを見つめた時、


ゴォォォォォォォォォォォォォォォン!


 衝撃音が鳴り響いた。高取はとっさに音の方に振り向いた。入口の扉が吹き飛ばされて炎と煙があがっていた。店内もざわついている。


「!?」


 黒煙をあげて破壊された入口からぬっと影が入ってきた。黒いフードを被った男だ。


「それではですね。申し訳ないですが・・・・・・皆さんには死んでもらいます」


 そう言うと黒いフードの男は人差し指を掲げた。すると指先が輝き、丸い玉のような光ができた。その光が拡大し高取達のいる方に放たれた。


「あっ!?」


 カヨコの恐怖の表情が見えた。高取はカヨコを守ろうと席を立とうとしたが光の玉は恐ろしい早さでカヨコの後方、筧と名乗った親子へと向かった。


「あなた!?」


「ねぇママ、何あれ?」


「お前は!? ・・・・・・やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


 筧と名乗った男が叫びながら顔を手で覆った。対面に座る婦人は必死に幼い子ども達を庇うようにして抱きついた。光の玉が四人に直撃した。


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン! 轟音が谺して店内を激しい衝撃が襲った。


「ギャァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・」


 筧たち四人は絶叫をあげながら光に飲み込まれていき、その姿は黒い影となり、やがて消失した。


 店員や周囲の客もその衝撃波で吹き飛ばされる。高取は猛烈な力で背後に吹き飛ばされていった。カヨコも前に身体が浮き上がり、高取の方に引き寄せられるように舞った。


 目の前を火花、コンクリートの破片、ガラス片が舞って、衝撃波が押し寄せていく。人が紙切れのように舞い飛び、壁は破壊されて鉄筋を剥き出す。


 高取の目には全てがスローモーションで展開されていた。轟音と悲鳴の中、どこからともなく哄笑が響き渡った。高取の意識が消えかける。


「コウジ!」


 カヨコの絶叫により高取の消えかけた意識が繋ぎ止められた。高取の目の前に吹き飛ばされたカヨコが近づいてくる。


 高取は何とか手を伸ばしカヨコの手を取ろうとした。カヨコも手を伸ばす。高取の差し出した右手とカヨコの伸ばした左手がじょじょに近づく。


「カヨコォォォォォォォォォォォォォォォ!」


 高取は声の限り叫びながら手を伸ばした。ガシッ、カヨコの左手を握った。高取とカヨコはお互いに見つめ合った。高取は右手に力を込めてカヨコを引き寄せようとした。


「コウジ」 


「カヨコ」


 呟くと同時に全身に強い衝撃が走り、あたりは光に包まれた。同時に高取の意識は途切れた。



 高取は激痛で目を覚ました。周囲は煙が溢れていて巨大なコンクリートの塊が今にも落ちてきそうなバランスで目の前にあった。


 どうやら自分は倒れているようだ。一体何が起きたのか? 頭を動かすとコンクリートの瓦礫と煙と炎につつまれた光景が目に入る。どれだけの時間こうして倒れていたのか? 激しい頭痛が思考を妨げる。


 その時、右手に何かを握っている感覚が戻ってきた。指が絡んでいる。握っているのは手のようだ。頭を動かすと握っている指に結婚指輪が見える。カヨコの左手だ。


「カヨコ・・・・・・」


 高取は呟きながらカヨコの手の先に目をこらす。だが、カヨコの二の腕から先が瓦礫と煙で見えない。


「カ・・・・・・ヨコ、大丈夫です・・・・・・か?」


 力を入れてぐっとカヨコの手を引き寄せた。ズルズル、音がすると共にあまりの感触の軽さに疑問を覚えた。


「!? あ・・・・・・あ・・・・・・」


 引き寄せたカヨコの手の先を見て高取は大きく目を見開いた。鼓動が早くなり、視界がかすれてきた。


 高取が引き寄せたのはカヨコの二の腕までだった。そこから先は切断されており、高取が引き寄せた際に引き摺った血の跡が残されていた。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 絶叫がこだまし、再び意識を失った。



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