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2.4

 聞き込み調査が開始されて5日目。

 朝から通常業務に勤しんでいたユウは、終業のチャイムが鳴り響く工場内を一人とぼとぼと歩いていた。


「あー・・・明日かー・・・」


 フロイデ宅への訪問日を明日に控え、ユウの気持ちは沈み込んでいた。


 結局、整理してる時間はなかったな・・・

 とりあえず、本は今持ってるやつを持っていくとして、どんな顔して会えばいいんだ~・・・!?


 夕日の差し込む食堂を横切り、トイレを通り過ぎ、どんどんと人が増えていく。


 というか、手伝い終わって時間が余ったら通常業務って、普通にひどくね?

 ・・・メルツでもいれば、愚痴の1つでも吐けたのに。


 更衣室のドアを開けると、日勤と夜勤の交代時間ということもあり、人でごった返していた。

 ユウは人混みをかき分けながら自分のロッカーを目指し、角を曲がろうとした時だった。


「マジかよ、それ!」

「マジだよ。ウケるだろ」


 ユウは急いでロッカーに張り付き、奥を覗き込んだ。

 そこには、メルツと数人の男が仕事着に着替えながら、談笑に耽っていた。


 メルツ!?通知は来てない・・・あぁ、プラグイン切り忘れてた。

 ここのところ常時プラグインが起動していたから、うっかりしてた。


 ユウは苦笑いを浮かべながら、プラグインをオフにした。

 その瞬間、洪水の様な警告文が表示され、彼はもう一度小さく驚嘆の声を漏らした。


『メルツ達の会話には混ざらず、その場をすぐに離れなさい』


 ユウは急いで顔を引っ込め、通知履歴を遡った。

 下から上へとスワイプされていく警告文のどれもが、彼が更衣室へ行くことを止めようとしていた。


 なんでだ?

『メルツに愚痴を吐いて、笑い飛ばされなさい』じゃないのか?

 今まで散々、それで良しとしてたじゃないか。


 ユウはこっそりとロッカーの向こうを覗き込んだ。


 あれは他部署の友人か?

 いったい何を話してるんだろう?


 自分以外の他人と会話するメルツに興味をそそられたユウは、プラグインをオフにして聞き耳を立て始めた。


「変人が変人に絶対成功する見合いをぶち壊しにされたとか・・・どういう事だよ!変人同士惹かれ合ったってか!?」

「ありそ~!」

「しかもその見合い相手、超美人なんだよ。視界共有してやるよ」

「マジ!?見る見る!」


 暫くの沈黙の後、男達の大きな笑い声が更衣室内に響き渡った。


「勿体ね~!」

「いやつーか、なんであんな変人にこんなかわいい子あてがってるの?ウィール君は無能なん?俺に回せよ」

「そんで、そのいかれた女子高生。なんと休日にまで現れたらしくてさ~」

「マジかよ。やっぱりあの紙束、呪いのアイテムなんじゃね?だってあいつ、アレのせいで友達いなくなったんだろ?」

「ばっかちげーよ。あんな物体好き好んで持ち歩く時点で、そいつがおかしいんだよ。全部デバイスで完結するのに、わざわざあんな高級品を見せびらかして、優越感に浸ってるんだ。だから友達がいなくなったのは、あいつ自身のせいだよ」

「おいおい、まだメルツがいるだろ~?最も、話のネタになるから付き合ってるだけだけど。な?」

「ヤバい。ちょっと同情してきたわ・・・まぁ、嘘だけど」


 ユウは人の流れに逆行するように、来た道を引き返し始める。

 誰とも目を合わさない様に顔を伏せ、時折他人と肩をぶつけながら、強引に出入り口に体を滑り込ませると、廊下に出た。


 しかし、自分を嘲る笑い声は、なおも漏れ聞こえてくる。

 彼は軽く歯を食いしばると、足を更に速めて逃げるようにその場から立ち去ったのだった。



「いやいや、最初はそうだったけど、今では普通に友達だよ」


 ほどなくして、メルツはその笑い声を断ち切った。


「え~メルツ、趣味悪くね?つーか、通知と違うんだけど」

「それは悪い。でも、好き嫌いは人それぞれだろ?」


 メルツは明らかに語気の強い一人を目で牽制した。

 男はたじろぎ、目を泳がせ、周りもそれにつられて動揺し始めた。

 緊張した空気が周りを包み始めると、すぐに1つだけ警告文が届いた。


『威圧的な態度を改め、話を戻しなさい』


 全員が、その場で固まった。

 メルツは、小さく舌打ちを鳴らした。


「それに今じゃ、あいつの話が一番面白いんだよ。やっぱり変だからかな?」

「・・・やっぱり、話のネタにしてんじゃん」


 言われるがままに話を戻すと、また彼の周りは笑い始めた。

 緊張から解放され、安堵する自分を認識すると、彼はもう一度小さく舌打ちを鳴らした。


 これがあんだけ届いてんのに、なんであいつは・・・


 差し込んでいた夕日が沈み、室内灯が点灯し始めると、始業の予鈴が鳴り響いた。



 気持ちのいい昼下がり、駅前で落ち合った一行は高層マンションの立ち並ぶ別の居住区を無言で歩いていた。


 その区画はユウ達の住まう居住区と同じような見た目をしていた。

 低密度に管理された高層マンション群と、その合間を埋める背の低い商業施設と公共施設。

 ウィールによって最適化された街並みは、空は広く、緑は多く、充実したライフラインを備え、人が不自由なく快適に生活できる素晴らしい居住区画であった。

 文句のつけようのない幸福な都市の中で一人、ユウは不機嫌そうに眉を吊り上げていた。


「何かあったの?」

「・・・何が?」

「だって駅で会った時から、ずっと怖い顔してるじゃん」


 カフェに視線を向けると、井戸端会議に花を咲かせる夫人達がこちらを見ながら、ひそひそと話し始めた。

 次に公園に視線を向けると、走り回っていた子供達がこちらを指さし、口を開こうとした瞬間、すぐに母親に口を押さえられてどこかに連れて行かれた。


 ユウは眉間に寄った皺を伸ばしながら、意図的に声音を上げて返事した。


「何でもないよ」

『ところで、ちゃんと"本"は持ってきたか?』


 ユウは肩にかけていたバッグから、ディスに勧められた本を取り出して見せた。


『それが"本"か。実物で見ると、分厚いな』

「あれ?その本まだ読んでるの?」

「・・・最近、読む時間が取れなくてな」

「そうなの?大人って大変だね。返却期日・・・ってあるのか知らないけど、ちゃんと読み終えられると良いね」


 無邪気に微笑むディスに、ユウは怒りを含んだ苦笑で答えた。


 いったい誰のせいだと・・・


 本をしまうと、目的地が見えてきた。

 何の変哲もない、先程から目に入っていた建物の中の一棟。

 その側面に書かれた文字だけが唯一の違いだった。


『ここだ。それでは私はいつもの様に黙るから、後は頼んだぞ』

「は~い」


 正面玄関のドアが自動で開き、エレベーターのドアが独りでに開いた。

 招かれるまま、一行は何の迷いもなくそれに乗り込んだ。


「あ、あのマリオンさん・・・」

『・・・手短に』

「この前から気になってたんですが、なんで黙るんですか?」

『ボディーガードも兼任しているからだ』

「・・・それで?」

『考えれば分かるだろ。ただの養育用ドローンだと思われてた方が意表を突ける。わかったなら、私は黙るぞ』


 ユウは納得した様に何度か頷いていると、ディスは苦笑いを浮かべた。


「とか言ってるけど、単純に他人と会話するのが苦手なだけだよ」

『・・・』

「え?この前の先輩と話す前に、結構俺と話してたぞ?」

「あれは説明でしょ。それは会話じゃなくて、質疑応答って言うの」

『・・・・・・・・・』


 ユウは黙り込むマリオンを横目でさりげなく見るが、ディスの話に彼は何の反応も見せない。

 反応に困ったユウは、所々に棘のある物言いをする彼を思い出しながら、ゆっくりと階数表示器に目を移したのだった。



 何の変哲もない、自宅のドアと全く同じ真っ白で無機質な玄関ドア。

 その前で、ユウは固まっていた。


 ついちゃったなぁ・・・

 ついちゃったよぉ・・・


 インターホンのボタンが目に入ったが、ユウは視線を逸らしてエレベーターの方を見ようとした。

 すると、マリオンがこちらを見ながら、ゆっくりと視界に入ってきたので、慌てて視線を宙に彷徨わせてみた。


 無理だよなぁ・・・


 ユウは更にソワソワとし始める。

 一刻、また一刻とドアの前で時間が過ぎていく。


 奥の方でドアが開く音が聞こえ、振り向くと、家族連れがじっとりとした視線をこちらに向けていた。

 通知に無い人物が、ご近所さんのドアの前で挙動不審な行動を取っている。最早、通報待ったなしである。


 ピンポーン。


 ユウは突然鳴った音に体を跳ねさせた。

 振り向くと、しびれを切らしたディスがすました顔でボタンを押していた。

 脂汗が噴き出始め、心臓が早鐘を打つ。


 心の準備ぐらいさせろよ・・・!


 百面相を繰り返す彼の脈拍がピークを迎えた時、静かにドアが開かれた。

 出迎えたのはフロイデではなく、落ち着いた雰囲気の老婆だった。


「あら?」


 小首を傾げた老婆は、2人の顔を覗き込んだ。

 目の前の顔と、何かを交互に見比べるように青い瞳を左右に揺らしていると、後ろから息を切らしたフロイデが現れた。


「よく来たな!さぁ上がってくれ!」

「あら、あなたのお知り合い?でも、通知は来てないのだけど・・・」

「この前、言っただろ。通知に無い客人がくるって」

「あら、そうだったかしら?」


 おっとりと頬に手を当て、小首を傾げるシャーデーの姿に、フロイデは溜息をついた。


「初めまして、ディスと言います!本日はよろしくお願いします!」

「あらあら、元気ね~」


 ディスが綺麗なお辞儀を見せ、その隣でユウは余裕のない挙動でバッグから菓子折りを取り出していた。


「・・・し、職場の後輩のユウと言います。これ、つまらない物ですが」


 ディスと同じようにお辞儀して見せたユウだったが、些か角度が深々とし過ぎていた。

 まるで卒業証書でも渡されたかの様に、頭を下げるユウを見ながらシャーデ―は何かに気づいたように声を上げる。


「あなたがユウさんね~!主人がいつもご迷惑をおかけして申し訳ないわ~」

「いえ・・・迷惑なのは自分の方で・・・」

「シャーデ―!立ち話はそこまでにして、早く上がってもらおう!」

「あら、そうね~。狭い部屋だけどゆっくりしていってね~」

「お邪魔しま~す!」

「お、お邪魔します・・・」

『・・・』


 一行は招かれるまま玄関ドアを潜り、内履きに履き替え、和気あいあいと廊下を進む。

 そんな彼らの姿を、室内カメラは静かに捕え、見守っていた。



 リビングに通された一行は、中央に配置されたソファに腰かけていた。

 白を基調にした室内には、多くの観葉植物が飾られており、ゆっくりと回るシーリングファンと一緒に落ち着いた空間を演出していた。


「あら?あの人はどこに行ったのかしら?」


 奥のキッチンから、紅茶を入れてきたシャーデ―が首を傾げている。


「手を洗いに行かれましたよ」

「あら、いやだ。お待たせして、ごめんなさいね?」


 お礼を言ってカップを受け取ると、廊下ドアの方からフロイデが入ってきた。


「いやぁ待たせてしまって、すまんすま・・・ん」

「あら・・・」


 2人がその場で固まった。理由は明白だった。


「警告文ですね?」

「ああ。まぁ通知にない事してっから、しょうがないわな・・・」

「でも、どうしましょう。警告文なんて・・・初めて見たわ・・・」

「それなんですが、良い物があるんですよ」


 そう言って、ディスはプラグインの説明を始め、2人は促されるままに、それをインストールした。


「暫くつけておいてもらえれば、次第にウィールも()()()、徐々に警告文が来る事も減ると思います」

「へぇ・・・今の若いもんはハイテクだな!」

「そうねぇ・・・」


 フロイデは快活に喜んでいたが、シャーデ―の方は通知が見えない不安感が拭えていない様子だった。

 そして何故かユウは、少し首を傾げていた。


 そういえば本を借りる時は徐々に減ったのに、なんでディスと話すときは減らないんだ・・・?


「それにしても緑がいっぱいですね!」


 ディスが手を広げて、辺りを見渡した。

 シャーデ―が心配そうな顔をしながら、フロイデの方に視線を向けた。

 フロイデが優しい顔つきで頷くと、彼女は意を決した様に話始めた。


「私の趣味なのよ。植物が好きでねぇ」

「こんなにいっぱい、お世話大変じゃないですか?水やりもしなきゃいけないし、外にも出さないと枯れちゃいますよね?」

「あぁそれは大丈夫よ。室内には、日陰でも強く育つ品種。ベランダには、日光が必要な品種を中心に植えてあるから。それに、水も数日に一回程度でいいの。品種改良のおかげで、昔に比べて随分世話しやすくなったのよ」

「そうなんですか!?全然知りませんでした・・・それなら、私も飾ろうかなぁ・・・」


 絶妙なトーンと声量で呟かれたその言葉は、小声とは思えないほどはっきりと耳に響き渡った。


「あら、あなたも植物に興味があるの?」

「実は昔、観葉植物飾りたいなって思った事がありまして、その時はお世話できるか不安で手が出なかったんですよ・・・もしよろしければ、ベランダの方も見学させてもらっても良いですか?」

「あら、主人は良いのかしら?何か用事があって来たんでしょう?」

「フロイデさん!ちょっとだけ!ちょっとだけいいですか!?」


 ディスはフロイデに両手を合わせて懇願した。

 その突然の行動に、ユウはディスとマリオンを交互に見ながら焦り始めた。


 ちょ、ちょっと待て!

 1人にしないでくれ!


「ああ、構わんよ。シャーデーも満更じゃなさそうだしな」

「ありがとうございます!」

「それじゃあ初心者でも育てやすいものから見ていきましょうか」


 シャーデ―とディス、そしてマリオンの3人が連れ立ってベランダの方へと歩いていく。

 ユウはその背中を、助けを乞うような目で追いかけていた。

 すると、ディスからチャットが届いた。


『ちょっと調査してくるから、次の訪問に繋がるきっかけ作っておいて』


「な!?」

「どうした?」

「いえ、ちょっと知人から連絡が来まして・・・すみません、もう大丈夫です」

「そうか?それじゃあ、"本"を見せてくれないか?」



 本を手渡してからちょうど1時間。

 紅茶やクッキーに手を付ける事もなく、フロイデの執心は続いていた。

 時折、ブツブツと何かを呟きながら、表紙を撫でたり、ページを捲ったりしており、ユウは完璧に手持ち無沙汰になっていた。


 ユウはフロイデの顔をチラチラ見ながら、紅茶をすすり、おずおずとクッキーに手を伸ばす。

 鼻に抜ける合成香料の独特な香りとクッキーのマリアージュを味わいながら、窓の外に視線を逸らした。

 外では、暖かな日差しに包まれてシャーデ―達が談笑しており、ディスがユウを指しながら何かを説明している。


 俺との関係性とか、ここに来た理由とか話してるだろうか。


 目が合ったユウは会釈をして、天井を見上げた。

 シーリングファンがくるくると回る様子を見るのに飽きると、次に室内の観葉植物を観察した。

 全く知識のない植物はどれも同じに見え、続いてクッキーの種類を数え、紅茶の銘柄とかブレンドに思いを馳せた。


 ちょっとだけって言ってただろ・・・


 ユウがソファに座りなおし、フロイデの方を見ると、視線がぶつかった。


「すまん。夢中になって読んじまった」

「あ、いえ・・・」


 暫くの沈黙が流れた。

 フロイデは手に持っている本を頑なに離そうとせず、また、ユウも返してもらおうと手を伸ばそうとしなかった。

 紅茶から立ち上り、ゆらゆらと揺れていた湯気は、徐々にその高さを失い始めていた。


「ユウはどうやって図書館まで行ってるんだ?」


 先に口を開いたのはフロイデの方だった。


「そ・・・れはですね・・・もちろん、電車とバスを乗り継いで行ってますよ?」


 ユウは彼の声に心臓が縮み上がり、詮索するための思考力も失って、ただ聞かれたことを素直に返し始めた。


「途中で電車が止まったり、バスの運行が突然中止になったりしないか?」

「い、いえ。それは今のところないです」

「図書館についてもシステムメンテナンスとかで、入館できなかったりは?」

「ない、です」

「そもそも1日のスケジュールに入っていない日に行ったことはあるか?」


 繰り返される質問に、徐々に思考力が復活の兆しを見せ、フロイデの質問に違和感を覚え始めた。


「それもないです」

「やっぱりそうか・・・」


 フロイデはひどく残念そうに視線を落とした。


「一体、どうしたんですか?」

「・・・実は俺も何度か行こうとしたんだ」


 フロイデのその言葉に、ユウは両眉を上げた。


「通知が一向に来ないから、自分で調べて無理矢理向かってみるんだが、その度に何某かの不運に見舞われて、辿り着けないんだ。だから、ユウに借りる他なかったんだ・・・」


 初耳だった。

 会うたびに、本をせびられる。

 それ自体に疑問を持ったことなんてなかった。

 通知に無いから。ただそれだけの事と考えていた。

 毎度のあのやりとりの裏にこんな事情があったなんて思いもしなかった。


「今日は無理を言ってすまなかったな」


 そう言って、フロイデは大事に抱えていた本をユウに差し出した。


「なになに?何の話?」


 背後から声を掛けられたユウは驚き、振り返った。

 そこには、いつの間にか窓から入って来ていたディスがいた。


「シャ、シャーデ―さんは?」

「お手洗い。あ、この本。私が選んであげたんですよ!」

「ほう!嬢ちゃん、なかなか読むの早いんだな」

「今は"灰煙る街"っていうのを読んでてですね」

「俺もこの前読んだよ」

「え、本当ですか!?」


 2人が談笑を始めると、ドローンがひっそりと動き始めた。

 マリオンはフロイデの視線から外れたことを確認すると、壁面や床に向かって赤や青紫のレーザー光を照射し、証拠を集め始めた。

 それをぼんやりとした目で追いながら、ユウは考えに耽っていた。


 次に繋がる・・・


 追いかけていた視線の端にディスが映ると、廊下のドアが開き、シャーデ―が戻ってきた。


「あなた。そろそろ時間だわ」

「え?まだ通知は来てないぞ?」

「フロイデさんプラグイン!プラグイン!」


 フロイデは慌てて立ち上がった。


「不味い!結構ギリギリだ!」

「この後は・・・確か、病院でしたっけ?すみません。私達の方から申し出るべきでした」

「俺も話に夢中だったから、おあいこさ」


 ディスとフロイデは示し合わせたかのように紅茶を一気飲みした。


「あの!」


 ユウの若干上ずった声が、静かな室内に響き渡る。

 隣でディスがむせ、フロイデは目を丸くしている。


 ユウは、耳が熱くなり、室内に充満していた草木の香りが強くなるのを感じながら、一度咳払いをした。

 そして彼は、ディスの息が整ったのを確認し終えると、意を決した様に、フロイデに提案した。


「フロイデさんの分も借りてきましょうか!?」


 またもや上ずった声に締まりの悪さを感じたが、彼の気分はスッキリとしていた。

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